Act1-48 急募の依頼
PV27000突破です。
いつもありがとうございます!
今日は依頼ですね。ちょっと流し気味ですが。
二周目は、一週目のような襲撃イベントはなにもなかった。
ただ一周目で用意した依頼以上の、倍の依頼の依頼を抱え込む羽目になった。
それも「討伐」や退治だけではなく、採取や護衛の依頼までもが目白押しだった。
まぁ、護衛と言ってもせいぜい近くの村までや近くの森で採取するので、その護衛だとか、近場での護衛依頼が多かった。
護衛依頼はその性質上、基本的にかかる時間は一日単位になってしまう。
簡単な採取の依頼であれば、半日程度で終わるのに対して、護衛は一日単位だ。
それも簡単なもので一日だった。
大変なものであれば、数日どころか一か月もかかる依頼だってある。
その分、報酬金は破格だった。さすがに金貨十枚になる依頼はそうそうないけれど。
というか、もし金貨十枚にもなるような依頼であれば、「エンヴィー」滞在時の俺が受けて終わらしていた。
ただ金貨十枚もの大金が報酬となる場合は、基本的に相当に大変な依頼になる。
よほど道程が困難なのか、もしくは道中に危険性の高い魔物が棲んでいるとか。
どちらにしろ、一か月以内で済むような依頼ではない。
それに当時の俺は低ランクの冒険者であり、そんな冒険者を雇おうとする依頼主なんているわけもなかった。
つまり、当時の俺ではどうあっても、そんな高額な護衛依頼を受けることはできなかった。
そしてそういう護衛依頼自体はめったなことではなかった。通常の護衛依頼は多いけれど。
近隣の村や森までの護衛をしてほしいという依頼が多いのは、「エンヴィー」でも「ラース」でも変わらない。
近隣の森や村に行くのにも、危険はあるのだから、護衛を雇おうとするのは当然のことだ。依頼内容もとくにおかしなものではなかったので、問題なく依頼として請け負った。
ただその護衛依頼の数がいささか多かった。
護衛依頼という形式上、複数日拘束されるが、入ってきた護衛依頼は近場だけのものだった。それでも一日は確実に拘束されることになる。つまりは複数のクランが一日ひとつの依頼しか受けられなくなるということ。むろん、それらの依頼はまっとうなものだったが、数が多いため、必然的にほかの依頼達成が滞ることにる。
加えて滞る依頼の中には、急募の依頼も多かった。
急募の依頼というのは、急きょ必要な魔物の素材が必要になったりりとか、薬を作るのに必要な薬草がわずかに足りなかったり、などで請け負う緊急の依頼のことだ。
冒険者ギルドとしては、緊急の依頼というのは、ギルド側にとっても、冒険者側にとっても、それなりにいい収入になる。
要は特急料金を支払ってでの依頼なのだから、当然内容によっては、特急料金の値段も上下するし、仲介手数料もその分だけ多くなる。
ギルドも冒険者も依頼人も全員が満足できるになるので、急募の依頼は優先的に請け負うことにしていた。
しかし請け負ったところで、依頼を受ける冒険者がいないのであれば、受注することはできない。
特急料金を請け負い時に支払ってもらっているため、優先的にこなさなければならないが、こなすだけの人材がいなかった。
いま思えば、護衛依頼も急募の依頼も、どちらも嫌がらせだったのだろう。
とはいえ、そんなことを考えていられる余裕などはなかった。
本来は二周目から動こうとは思っていなかったけれど、緊急事態だったので、俺も冒険者として久しぶりに活動することにした。
最初の依頼は、軟膏の傷薬を作るのに必要な薬草採取だった。三日以内に薬草を百個用意してほしいという、無茶苦茶な内容だった。
「魔大陸」の植生は特殊ではあるが、それでも薬草を百個採集するのは、並大抵なことではなかった。
けれどやるしかなかった。シリウスにも手伝ってもらって、百個の薬草をどうにか三日以内に集めることができた。
同時並行で、同じく急募で三日以内にホーンドラビットの角を五十個用意してほしいという依頼もこなした。
薬草とは違い、ホーンドラビットの角を五十個の納品はかなり難しかった。
そもそもホーンドラビットがそんなにいない。それでもやるしかなかったので、近隣の森や少し遠くの森にまで向かって、五十匹のホーンドラビットと副産物として、百匹ほどのホーンラビットを「討伐」することになった。
そしての副産物だったホーンラビットの素材が、ほかの急募の依頼、しかも複数の依頼達成の条件にちょうど当てはまってくれた。
ホーンラビットの角を四十個、ホーンラビットの毛皮を三十枚、ホーンラビットの肉を格部位五十個ずつ。ホーンドラビットの素材もそれぞれ毛皮と肉で二、三十個納品するなどの依頼があった。
ホーンラビットも名前にホーンがつくように、当然角が生えている。
ホーンドラビットの角の場合は、装飾品や薬の材料にもなるそうだけど、ホーンラビットはホーンドラビットの幼体であるから、角がかなり短い。
装飾品にするには、少し長さが足りないため、用途は専ら、親同様に薬の材料になる。
しかも親の角よりも子供であるホーンラビットの角の方が薬効成分は強いらしく、親の角よりも高額に取引されることもあるそうだ。
加えて、ホーンラビットは一般人でも狩れる程度の弱い魔物だった。つまり乱獲される運命の魔物だ。
だからこそホーンラビットはそこまで数の多い魔物ではない。
幼体の時点で乱獲されてしまうからか、成体であるホーンラビットは輪を掛けて少ない。
あくまでも地域によっては差があるけれど、少なくとも、「ラース」周辺の地域では、数はあまり多くない。
だが需要はそれなりにあるため、普段ホーンラビットとホーンドラビットの角ウサギ一家の素材は、遠くから取り寄せという形になるため、角ウサギ一家の素材を使う商売の場合、在庫をそれなりに用意しておくというのが通常らしい。
が、その常備しておいたはずの角ウサギ一家の素材が、「なぜか」底をついてしまった、ないし、数が少なくなってしまった。
その結果が、ホーンラビットとホーンドラビットの素材を納品する急募の依頼となってしまったそうだ。
あきらかに怪しい内容ではあったが、精査した結果、依頼内容自体にはおかしなことはなにもなかった。
依頼先は複数の料理店や薬屋、服飾店などで、すべてまっとうな商売をしており、これと言って怪しいものはなにもなかったそうだ。
うちのギルドの評判を落とすためだけの、嫌がらせのような依頼ではなかった。少なくとも表面上では。
もっともそれら厄介な依頼も、一度の納品ですべて達成できたのだから、問題はなかった。
むしろかえって、依頼者からは感謝されてしまった。
依頼者側も相当に無茶な依頼だとわかっていたそうだけど、それでもきっちりと期限を守ってくれたことに感謝していた。
ただ依頼をこなした冒険者がギルドマスターである俺だったことには驚かれてしまった。
だが、すぐに好意的な目を向けられた。自分たちのために、冒険者ギルドのギルドマスターがわざわざ依頼をこなしてくれたのだうえに、素材の状態も良好であることも依頼人たちを喜ばせられた。
結果報酬金を善意で上乗せしてくれた。
そして今後は素材に関してはうちを通してほかの商店という形ではなく、うちから直接卸してほしいと頼まれてしまった。
さすがにギルドマスターとはいえ、流通はミーリンさんの領域だったので、俺の一存だけでは決められないので、後日ミーリンさんと一緒にそれぞれの依頼先で話をまとめた。
行く先々で歓迎を受けたので、ちょっと時間はかかってしまったけれど。そしてそのたびに、一緒に来ていたアルトリアは胸を張っていた。
アルトリアが胸を張るのも当然だ。
なにせ俺が複数の依頼を同時にこなすことができたのは、偶然の産物というわけではない。すべてアルトリアのアドバイスのおかげだったのだから。
「薬草百個の依頼とホーンドラビットの角の依頼を、同時進行するのがよろしいかと思います。ホーンドラビットを「討伐」するということは、その幼体であるホーンラビットも「討伐」することになりますから。「討伐」した個体数にもよりますが、うまくいけば、十件の急募の依頼を終わらせることができると思います」
アルトリアは急募の依頼で同時進行できるものをまとめたレポートを渡してくれた。
そのレポートはホーンドラビットとホーンラビットの素材に関するもので、ちょうど十件の依頼が載せられていた。
本来冒険者が請け負える依頼は、一度につき一件だけだ。
しかし急募の依頼に関しては、複数同時に請け負うことができる。あくまでもできるだけであり、実際にやろうとする冒険者はいない。
なにせ急募の依頼は基本的に、期限が短い。
納品は特に短いものが多い。
その分、目的の素材は簡単な魔物や一般的な薬草などになるけれど、その分大量に要求される。
俺が受注することになった薬草や、ホーンラビットの素材の納品も、その例に漏れなかったが、どうにか依頼はすべてこなすことができた。
本当にアルトリアは俺にはもったいないくらいの子だ。俺にとって最高のパートナーだった。
ありがとうとお礼を言うと、アルトリアは顔を染めて笑ってくれた。
その笑顔を見たら、依頼の大変さが苦でもなくなってしまうのが、不思議だった。
そうして久々の冒険者としての活動は最高評価で終わらせることができた。




