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Act9-422 賞金首カレン・ズッキー

昨日は更新できず&今日は更新が遅くなり申し訳ありません。

明日もたぶん遅くなりそうです←汗

「──むぅぅぅ!」


「唸るな、痴女が」


「痴女じゃありません!」


「誰がどう考えても痴女だろうが」


「だ、だから忘れていただけですぅ!」


「……普通は忘れねぇよ」


やれやれとレンさんがため息を吐かれています。


でもため息を吐かれてしまうようなことを私はしてしまったわけなので、ため息を吐かれても仕方がありません。


なにせ、私ったらお風呂に入ったら後、髪が濡れたままなうえ、満足に服さえも着ていない状態で、インナーどころか下着さえも露にした状態でレンさんたちのいるリビングに戻ってきてしまったのですから。


ちなみにそのときレンさんは、イリアさんに後ろから抱きつかれていましたが、私が部屋に入るのと同時にイリアさんはレンさんから体を離しました。


そのときのイリアさんはどことなく残念そうにも見えました。


(やはりこのふたりはそういう関係なんですかね?)


私にはおふたりは恋人同士という風にしか見えません。しかしレンさんどころかイリアさんも恋人ではないと言うのです。


どこをどう見ても付き合っているようにしか見えないというのにも関わらず。


なにせおふたりったら、距離が近すぎる気かするんですよね。本当になんの関係もないというにしては、おふたりの距離は近すぎる。


(でも恋人ではないとはっきりと否定するんですよね、おふたりとも。ならばどういう関係なんですかね?)


レンさんの素性も気になりますが、イリアさんとの関係も気になってしまう。もちろんルリさんとの関係もですけどね。


というか、この冒険者チーム「シエロ」自体が私には気になって仕方がない。


なんで辺境であるこの村に、凄腕の三人が訪れたのか。なんでいまだにこの村に逗留しているのか。そしてなんでレンさんは私に対するあたりが強いのか。わからないことだらけです。


でもそのわからないことだらけな中でもわかることはあります。


「ばぅ~。うるさいの」


レンさんの腕の中でご就寝だったベティちゃんが、レンさんがさっさと認めないせいで起きてしまいました。


目元を擦りながら、不満げに頬を膨らましています。その姿はヤバいくらいにかわいいです。


(ベティちゃんはやっぱりかわいいですねぇ)


レンさんたち「シエロ」でわかっていること。それはベティちゃんがとびっきりかわいいということです!


舌っ足らずなのも最高にかわいいですし、レンさんの服の裾をぎゅっと握りしめているのもやっぱりかわいいです!


いや、もうベティちゃんがベティちゃんであるからこそ、かわいいとも言えますね、はい。いわばベティちゃんは対私への特効兵器!ゆえにベティちゃんがかわいくないなどありえません!


「……おい、穢れた目でうちの娘を見るな。教育に悪影響だ」


「なにをバカなことを!ただ見るだけで教育に悪影響があるなどと!」


「ねぇねぇ、ルリおねえちゃん、イリアおねえちゃん」


私とレンさんの舌戦が繰り広げられている横で、ベティちゃんがかわいらしくルリさんとイリアさんに話しかけています。まったくかわいいったらありゃしない。ベティちゃんの様子を眺めているだけで、いくらでもお酒が飲めるというものです。いわば、ベティちゃんは私にとって最上の肴であり、極上の美酒とも言える存在で──。


「うん?」


「どうしました、ベティちゃん?」


「アンジュおねえちゃんは、なんでお鼻からちをだして、お口からはよだれをたらしているの?」


こてんと首を傾げながら、ベティちゃんは私に指を指していました。ただ指された意味がよくわかりませんね、はい。


「鼻血とよだれ?なにを言っているのです、ベティちゃん?」


「ばぅ?だってアンジュおねえちゃん、本当にでているもの」


理解できないとありありと顔に書いているベティちゃん。ですが、理解できないのは私も同じですよ。なぜに鼻血とよだれなんてありえないことを言っているのか。いまいちわかりません。まぁ、ベティちゃんなりの愛情表現ということに──。


「……ベティ。本当のことであっても、あえて言わないというのも優しさなのだ」


「……ベティちゃんにはまだ難しいかもですが、いつかはわかりますよ」


──愛情表現のはずなのに、ルリさんとイリアさんからの言葉が妙に胸に突き刺さります。この言い方ではまるで私がダメな人のように聞こえますね。


私は決してダメな人ではありません。


私がダメなのではなく、私をダメな人にしてしまうベティちゃんという小憎い天使がですね──。


「うちの愛娘に文句でも?」


レンさんのお目々がギラギラと輝き始めました。これはいけません。死んでしまいますね!


「文句なんてあるわけがありません!」


はっきりと言い切りますが、レンさんはとても胡散臭そうに、いえ、小汚ないものを見るような目を向けてくれます。そしてそれはレンさんだけではなく、ルリさんやイリアさんも同じです。例外なのはよく意味がわかっていないベティちゃんだけでした。


「ふふふ、やはりここでの心のオアシスは、ベティちゃんだけのようで」


「ふざけたことを抜かすな」


レンさんがズバッと切り捨ててくれました。ついでに足蹴りが飛んできましたよ。手加減はしてくれているし、蹴られたのはすね辺りですが、地味に痛いです。


「すねは地味に痛いですよ!?」


「うるせぇ、知ったことか!」


「この拗らせ紅目女!」


「黙れ、変態生娘が!」


顔を近づけあってにらみ合う私とレンさん。そんな私たちのやり取りを眺めつつ、苦笑いするルリさんとイリアさん。そして「ばぅ?」と首を傾げるベティちゃん。ここに来るたびに同じ光景が繰り広げられていました。


でもそれが決して嫌ではありませんでした。複雑ではありますが、私はこれはこれで楽しんでいました。……その知らせが訪れるまでは。


「アンジュ先ぱーい!」


不意に小屋の外から声が聞こえてきました。すぐに小屋の扉を叩く音もまた。


なんだろうと思っていると、扉が勢いよく開き、そこには後輩のディーネが息を切らせていました。


「ディーネ?いったいどうしたの?」


レンさんのそばからディーネの元へと向かうと、ディーネは顔を真っ青にして叫びました。


「た、大変なんです!お尋ね者が、この間回ってきた手配書の賞金首が、カレン・ズッキーが現れたんです!」


ディーネの叫びに私は「なんですって!?」と叫びました。その叫びにレンさんたちの表情が変わりました。ベティちゃんだけは「ばぅ?」とわかっていない顔をしていますけど、とんでもない一大事でした。


「いま、村に来ているんです!ほかの先輩たちが対処していますけど、話が通じないんです!先輩も早く来てください!」


「わ、わかった!いまから行くよ!」


そう言って私はレンさんたちを見やる。レンさんは頭の後ろを掻きつつも、最終的には頷いてくれました。これで憂いはありません。


「よし、では出発です!」


私の号令のもと、私たちはコサージュ村へと向かっていくのでした。

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