Act9-378 背中を押されて
すみません、遅れました←汗
アルトリアがプーレに襲いかかった。
俺がいる位置では、ゴンさんの背中の上でなにが起こっているのかはわからない。
わかるのは、いまのままじゃプーレまでをも喪うということだけ。
みんなを守りきれなかった。
でもせめて、そう、せめてプーレだけは守りたかった。
プーレを助けたい。
ただその一心だけでゴンさんの背中に向かおうとした。
「どこ行くのかしら、カレン?」
背中から声がかかった。スカイディアがにやにやといやらしい笑みを浮かべていた。
(どこまで俺を邪魔するつもりだ、この女は!)
プーレのピンチなのに、駆けつけられないなんて嫌だ。
プーレまでをも喪うなんて嫌だ。
(せめてプーレだけでも助けたい!)
誰も彼も喪うのはごめんだ。だからせめて、せめてまだ生き残ってくれている彼女だけでも助けたかった。
「邪魔を」
「うん?」
「邪魔をするな、邪神!」
とっさに「黒天狼」を投げつけた。スカイディアはあっさりと「黒天狼」を避けた。
でもおかげで隙ができた。その隙を突いてタマちゃんを抱き抱えたまま、カティの背中を経由してゴンさんの背中にとたどり着いた。
ゴンさんの背中の上では、アルトリアがアイリスの胸を貫いていた。アイリスはプーレを庇ってアルトリアに刺されていた。
アイリスの呼吸は荒かった。でも荒いけど、まだ生きてくれている。生きてくれているならまだ助けられるかもしれない。
「アイ──」
「っ!」
アイリスに声を掛けようとした。
でもアイリスは首を振った。首を振りながら、プーレにと視線を向けている。
(自分のことよりもプーレを優先しろと?)
アイリス自身いつ呼吸が止まってもおかしくないほどの重傷だった。
その重傷を負ったアイリスよりも、プーレを優先する。普段の俺ならできないけど、当のアイリス自身がそう言っていた。
ならプーレを優先するしかない。プーレにと声を掛けようとしたけど、今度はシリウスと背中を足場にさせてもらったカティがアルトリアにと攻撃を仕掛け始めた。
アルトリアはアイリスから離れて、シリウスとカティと戦い始めた。
愛娘と称したふたりを相手に、アルトリアは鬼気迫る表情で、いや、鬼そのものな表情でふたりに攻撃を仕掛けていく。
「主、様。いまのうちに」
アイリスが言う。たしかにいましかない。いまだけがプーレを助けられるチャンスだった。
(でもそうするとタマちゃんが)
俺の腕の中にはタマちゃんがいた。もう言葉を発することはおろか体を動かすこともない友達がいる。
そのタマちゃんを放っておくことはできない。
そう思う一方でタマちゃんなら「ボクのことよりもレンさんは、レンさんのするべきことを優先するしてください」とか言いそうだなとも思った。
実際にタマちゃんが言ったわけじゃない。
でもタマちゃんなら言いそうだと思えた。
だからというわけじゃない。
だけど、タマちゃんなら言うかもしれない。
いや、きっと言うだろうと思った。
だから俺は──。
「……ごめん、すぐ戻るから」
──タマちゃんをそっとゴンさんの背中に寝かせ、プーレの元へと向かった。
「……まったく、レンさんは世話が焼けるのですよ。ボクなんかよりも優先することがあるんですから、ボクなんか放っておいていいというのに」
タマちゃんの声が聞こえた気がした。振り返るけど、タマちゃんは横たわったままだった。動き出しそうな雰囲気はない。
けどたしかにタマちゃんの声が聞こえた。
「……ごめん。でもありがとう。行ってくる」
もう声を聞くこともできないと思っていた友達の言葉に背を押されて俺はプーレの元へと向かい、その体をそっと抱き抱えた。
「ごめん。遅くなった」
腕の中のプーレに向かって俺は謝った。謝りながら生きてくれてありがとうと心の底から感謝しなから、そっとプーレを抱き締めた。
今夜12時から更新祭り始めます。
今回もたぶん、3話となる予定です。まだ話数は未定ですので←汗




