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Act9-366 宣言

すいません。ちょっと時間がないので、あとで整えます←汗


追記10/19 12:13 整え+少し加筆しました。ご迷惑をおかけしました

地面を蹴りながら思ったのは、背後から聞こえる剣戟に対する正直な感想だった。


(どうなっているんだよ)


ちらりと振り返るとそこではありえない光景が広がっていた。


タマモとかいう女の子が、姪であるシリウスちゃんとさほど変わらない背丈の女の子が、ベルセリオス様と撃ち合っていた。


ただ撃ち合うだけなら俺にもできた。でもありえないのは、その子の得物だ。なんでかは知らないけど、おたまとフライパンだった。誰が見てもただの調理器具であの人と互角にやり合っていた。


そう、互角だ。英雄であるベルセリオス様と彼女は互角にやり合っている。


ベルセリオス様が剛の剣、一撃で粉砕しようとするのであれば、彼女はおた

まとフライパンでの多彩な攻撃で対抗していた。


おたまで突くこともあれば、フライパンで叩きつけたり、フライパンで薙ぎ払うと見せかけておたまで切り上げたり、おたまとフライパンを同時に震い、直撃の瞬間に交錯させるなど。そのすべてが超高速だった。


相対すると気づいたときには、おたまとフライパンのどちらかが牙を剥いて迫っている。


あまりにも速い。速すぎるほどに速い連撃。しかもそれらと同時に9本ある尻尾がそれぞれ意思を持っているかのように怒涛の攻撃を仕掛けてくる。その尻尾の一撃はベルセリオス様の剣を弾き返すほどに重く速い。そして思いもよらない位置から放たれてくる。


力と速さと技術に加えて奇をてらう攻撃。しかもそれが1発限りではなく、延々と繰り出される。ベルセリオス様だから対抗しているけど、俺だったらとっくに呑み込まれている。


(まるで自然災害みたいな子だ)


一言で言えば、自然の猛威を体現したかのような子だった。いくら獣人でもありえない戦闘能力だと思う。


もはや悪夢と言ってもいいくらいには。


そんな悪夢と拮抗した状態で撃ち合うなんて俺にはできないし、したくない。


そのできないことをベルセリオス様はしていて、そしてあの子は俺が一方的に競り負けていたベルセリオス様と互角に立ち回っていた。


(これが、英雄同士の戦いなのか?)


勇者から「英雄」にと至ったベルセリオス様と姉ちゃんと同じ世界で、俺が産まれた世界で英雄となったというあの子。


英雄と対抗できるのは同じ英雄だけ。


背後で繰り広げられる戦いを見ていると、そんな感想しか出てこなかった。


同時に思うのはうちの姉ちゃんの交遊関係はどうなっているんだという畏怖。


どうすれば、あんな悪夢のような存在と知り合えるのかと問いたい気分だった。


(……俺がしないといけなかったのに)


でも、なによりもベルセリオス様、いや、あの人と戦うのは俺の役目だった。


でも俺は渾身の力を、常に全力を出していたけど、あの人は決して本気じゃなかった。それでも俺は競り負けていた。本気を出していない、いや、本気を出すつもりもないあの人に完全に負けていた。


「おまえなんてこんなものだ」


剣を撃ち合わせるたびに、言葉にならざぬ声が聞こえていた。


その声が聞こえるたびに「嘗めるな!」と思った。奮起してより鋭く振るっていたつもりだった。


けれど、あの人に遊ばれていたような展開にしかならなかった。


でもあの子はあの人とまともに戦えている。いや、まともどころか一進一退の攻防を繰り広げている。俺じゃ互角には戦えない。俺じゃあの人に勝つことはできない。


でもあの子であれば、あの人と戦える。


あの人と戦うのは俺ではなく、あの子の役目だ。


でもあの子は言った。黒幕と戦うのが勇者の仕事だと。


そしてその黒幕は──。


「ようやく会えたな、スカイディア」


──いま目の前にいた。


スカイディアは巨大な狼となった姪のカティちゃんから離れていた。俺があの人のそばから離れるのと同時に、カティちゃんの背中から飛び降りていた。カティちゃんの背中の上がどうなっているのかはわからない。


だが、血の臭いはあまりしないので、おそらくはなにもしていないんだろう。


もしかしたらこれからするつもりだったのだろうけど、やろうとしていたことを放り出したのは、すべて俺と対峙するためなんだろう。


その証拠にスカイディアは楽しそうに笑っていた。


俺が知る姿のまま、俺の知る笑顔のままニコニコと笑っていた。


「ふふふ、ようやく来たのね、アルク。いや、こう言うべきかしら?久しぶりね、()()()()()()()()()()()()


スカイディアは笑った。その声に、その言葉に、その顔に、苛立ちが募った。その苛立ちを抑え込みながら俺は──。


「母さんを、()()()()()()()()


「ふふふ、返せと言われて返すわけがないでしょう?()()()()()()()()()()()()


「……なら、無理やり追い出すだけだ!」


「やれるものならやってみなさい」


「上等だ!」


──スカイディアから母さんの体を取り返すと宣言した。


スカイディアは笑う。笑いながら手招きをする。そんなスカイディアにと俺は剣をまっすぐに構えた。

続きはちょっと遅れますが、2話更新はします

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