Act9-352 嘆きの声
めさくさ遅くなりました←汗
もう今日終わりやん←汗
ちょっと短めですが、カレン視点です。
またひとりいなくなってしまった。
カルディア、モーレの次はガルムだった。また俺は守れなかった。いや、守れなかったんじゃない。また守ってもらってしまった。
守りたいと思っているのに。目に映る人たちだけでも守りたいのに、俺は守れない。それどころか逆に守ってもらっているのだから、本末転倒もいいところだ。
でもどんなに嘆き悲しんだところで事実は変わらない。俺が誰も守れないという事実は変わらない。守りたいのに、誰も守れない。守ってもらってばかりだ。
どうして俺はいつもこうなんだろうか?
どうして俺はいつも守ることができないんだろうか?
どうして俺はいつもただ見ていることしかできないんだろうか?
いくつのも「どうして」と「なぜ」が頭の交錯していく。目頭が熱くて堪らない。今日だけで何度泣かされてしまったのか、もうわからなかった。
「……どうして俺は」
ガルムを喪った。「獅子の王国」に発つ前からずっと一緒にあった、いや、ギルドを構えた頃からずっと一緒だったガルム。そのガルムがいなくなってしまった。
まだ「黒天狼」がある。けれど、ガルムははっきりと「さらば」と言っていた。あれはきっと「黒天狼」ではガルムを具現化することができないからなんだろう。
ガルム自身は「黒狼望」と「黒天狼」に宿る意思ではある。けれどその割合は「黒狼望」に大きく傾いていたんだろう。
その「黒狼望」を失った。俺の主な武器を破壊されてしまった。「黒天狼」があったところで、「黒狼望」のようには震えない。もともと二刀流はそこまで得意というわけじゃなかった。あくまでも俺が得意とするのは一刀での剣であって、二刀の剣を振るう術をもともと鍛えていたわけじゃない。
そして一刀の剣であっても、俺が基本的に使えるのは刃渡りが60センチほどの剣がメインであり、「黒天狼」のような小刀はそこまで得意ではなかった。一応の遣い方は弘明兄ちゃんに教わってはいる。でもメインではなかった。だから付け焼き刃のようなものでしかない。
その付け焼き刃の剣が通用する相手じゃなかった。
かと言って逃げられる相手でもない。
「……パパ、どうしよう?」
カティが目を向けながら聞いてくる。でも「どうしよう」は俺のセリフだった。いや、俺自身が言いたい言葉ではある。
でもどんなに言いたくてもいまは言えない。いま弱気になるわけにはいかない。これ以上弱みを見せてたまるものか。これ以上奪われてたまるものか。
「……逃げられるかい?」
「……わふぅ」
試しに逃げられるかどうかを尋ねた。けれどカティは首を振った。いまのカティはずいぶんと強くなった。その強くなったカティを以てしてもいまのスカイディアから逃げられるイメージがわかないようだった。
「あの意味わかんない移動をどうにかしないと無理だと思うの」
「……だよな」
逃げるための一番のネックはあの謎の高速移動だ。あれさえどうにかできれば、逃げることはできる。だが、どうすればいいのかはいまのところわかっていない。それどころか、どうやっているのかさえもわかっていないんだ。正直どうしようもない状況だった。
だからと言ってこのまま遮二無二に戦っても意味はない。仇を討ちたいとは思う。
でも、いまの俺では無理だった。復讐はする。でもそれはいまじゃない。いまじゃないんだ。そう言い聞かせながら怒りと悲しみをどうにか抑えこんでいく。
けれど怒りと悲しみを抑え込んだところで現状を変えることはできそうにはない。
どうしたらいいのか。どうすればいいのか。そればかりを俺は考えていた。
「あらあら逃げ腰かしら、カレン?」
くすくすと笑うスカイディア。言い返したいところだが、言い返すことはできない。ただ唸ることしかできずにいた。
「……黙りなさい、邪神め」
サラさんの声が聞こえた。同時にスカイディアの頭上に大きな影が差し込んだ。そこには──。
「我が友たちの仇です。覚悟なさい!」
ゴンさんに支えられる形でスカイディアの頭上を取ったサラさんがいたんだ。




