表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1317/2054

Act9-336 嫁を怒らせるものではない←

 恒例の土曜日更新です。

 まずは一話目は香恋視点で、エレーンとの新手のイチャコラですね。

 ええ、殺伐としているけれど←

「主様。お加減は?」


「……どうにか、かな?」


 氷と炎。相反するブレス同士が渦巻いていた。そのブレスから少し離れた場所で俺はエレーンに抱きかかえられていた。


 表向きは従者として心配してくれているエレーンだけど、念話ではひどいったらありゃしない。


『本当に、カレンちゃんはどうして無茶ばかりしちゃうかなぁ!? 心配するこっちの身にもなってくれませんかね、本当にさ!?』


 念話という他人には聞こえない会話だからこそのお説教を現在進行形で受けている俺。その余波だろうか、俺を抱きかかえるエレーンの腕にはそれなりの力が込められていた。よく見るとこめかみにうっすらと青筋が浮かんでいた。めちゃくちゃ怒っているみたいです。


『いや、あの、ですね。こればかりはどうしようもなかったと言いますかね』


『言い訳無用!』


『はい、ごめんなさい!』


 くわっと目を見開くようにして叫ぶエレーン。いや、この場合はモーレと言った方がいいか。見た目はエレーンだけど、中身はモーレだった。いや、モーレが天使として転生した姿がエレーンなんだ。……当初はあまりにもモーレとは違いすぎる姿に、モーレとエレーンが同一人物だとは思うことができなかった。


 でもエレーンの仮面の下の素顔はモーレのものだった。正確にはモーレを少し大人びさせた顏だったけれど、それでもモーレであることには変わらなかった。そのモーレに現在進行形で怒られてしまっていた。


 理由は無茶しすぎということだ。まぁ、右目を失っている状態で無茶をしてしまっていることには変わりないのだから、怒られてしまうのも当然だろう。俺が逆の立場であれば、怒っていただろうから、エレーンのお説教についてなにかを言える立場ではなかった。


 となれば静かにお説教を受ける以外にほかないわけですね、はい。


『いまのカレンちゃんは、右目がないの! そんな状態で無茶なことをするんじゃありません!』


『いや、でも、その、チャンスかなぁと』


『チャンスだからってカレンちゃんが攻撃しないといけないわけじゃないでしょう!?』


『それはそうなんですけどね』


『お黙りなさい!』


『はい、ごめんなさい!』


 モーレに抱きかかえられながらもつい敬礼をしそうになる俺。まぁ、いま敬礼をしたらあからさまにおかしいと思われるだけなんだけど、でもモーレのあまりの迫力の前に体が勝手に動きそうになってしまった。やっぱり嫁は怒らせるべきではない。そしてその嫁には一切勝ち目がないのが俺です。むしろ嫁に勝つ方法ってあるのかなと思うわけでありますよ。


 でも下手なことを言うと余計に怒られそうなので、あえてなにも言わないことにしよう。……たぶん、そういうところがますます嫁の怒りに火を点けるところなんだろうけれど、俺だって好きで嫁を激おこさせたいわけじゃないんです。ただ気づいたときには激おこにさせているだけなんだ。決してわざとじゃない。なぜかそうなってしまうだけなのだけど、それを言っても聞いてはくれない。むしろ言い訳だと取られてしまうだけだった。


『……ねぇ、聞いている、カレンちゃん?』


 現にいまもモーレの怒りは沸騰し続けているわけです。俺を抱き締める腕の力が徐々に増していた。このまま鯖折りではなく、ジャーマンスープレックスされそうで怖い。ジャーマンスープレックスって本来ならノーハンドでのブリッジが双方ともにできないと行ってはいけない技なのだけど、いまのエレーンはそんなことはおかまいなしに使ってきそうで怖い。


 まぁ、この世界出身のモーレがプロレス技を知っているわけがないのだけど、モーレが誰の手ほどきを受けていたのかを考えるととたんに妖しくなってくる。


(じいちゃんのことだから、余計な技とか絶対に教えているよね)


 じいちゃんは剣術や空手だけではなく、柔道もまた嗜んでいた。いや、じいちゃんの場合はどちらかと言えば、柔術の方かな? 投げ技系の格闘家が道場破りに来て、返り討ちに遭っているのを何度か見たことがあった。その際じいちゃんは普通に殴ったり、蹴ったりしていたし。柔道には殴りと蹴りの技はないから、間違いなく柔術だとは思う。


 そしてその道場破りさんたちに対して、じいちゃんは散々殴り蹴りをした後にとどめとばかりにジャーマンスープレックスやらブレーンバスターやらで投げ飛ばしたり、サソリ固めやらキャメルクラッチやらで絞め落したりしていたもんだ。


 じいちゃん曰く、どう見てもプロレス技であっても投げ飛ばされたり、絞め落されたりすれば柔道だろうと柔術だろうと負けであることには変りないとか言っていた。


 その理論で言えば、武器を使えない状況での徒手空拳のひとつとしてプロレス技をエレーンに手ほどきしていてもおかしくない。むしろあの爺様なら確実にやる! 自信を持って言えるね!


『……ふぅん? そうやって無視するんだ。いいよ、カレンちゃんがそういうことをするのであれば、私にも考えがあるから』


『え、ちょ、ちょっと待って? ちょっと待って、モーレ!?』


『問答無用!』


 モーレがなぜか仰げ反った。同時になぜか体が加速していく。その後俺の頭が地面に激突したのは言うまでもない。右目がないから無茶をするなと言う人がする行動ではないと思ったけれど、これもまた愛情表現だと思えば怒るに怒れなかった。


 むしろ恨むべきはモーレではなく、モーレに余計なことをてほどきしたうちの爺様に対してだろうと頭を激突したことで浮かびあがった星を眺めつつ俺が思ったのは言うまでもない。

 こういう愛もあるよねとだけ←

 続きは十六時です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ