Act9-335 だから信じられる
まさかのシルバーウィークになりました、こんばんは←
……いや、まさかシルバーウィークになるとは思っていなかったと言いますかですし、おすし←汗
……うん、まぁ、そのサーセンした←大汗
さて、今回は香恋視点です。
スカイディアがついにってところですかね。
エレーンが放ったのは嵐のような一撃だった。
「神技」──。
その名が示す通り、切り札に値する一撃なのだと思う。
人が成せるとは思えない一撃。
空中で高速回転からの突撃。
言葉にすれば、一言ですんでしまうもの。
だけど、それは人には、空を羽ばたけない者では放てそうにはないものだった。有翼の民でなければ使えそうにはなかった。
もっともその有翼の民であっても、渦を思わせるような高速回転が素でできるとは思えない。
仮にできたとしてもほんの一瞬だろう。でもエレーンはその高速回転を維持したまま、スカイディアにと突撃していた。
人が人のままでは成せないような一撃。ゆえに神技。
その神技を受けてスカイディアは大きく後退していた。
右手を向けてエレーンのジールヘイズを押さえ込もうとしているスカイディア。だけど、その思惑に反してその身は後退していく。
「見習い天使が!」
スカイディアは忌々しそうにエレーンを睨み付けていた。
その顔からは普段の薄ら笑いは消えて、歯を噛み締めるようにしてエレーンの神技に耐えていた。
「ずいぶんな有り様ですね、破壊神様」
スカイディアとは対照的にエレーンは淡々としていた。淡々とスカイディアを追い詰めていく。
エレーンは高速回転を最初していたけど、いま高速回転しているのはジールヘイズだけだ。
いや、もともと高速回転していたのはジールヘイズだけだったのかもしれない。
エレーンが行ったのはバレルロールだけ。でもそれが神技を発動するのに必要な所作だったんだろう。
最初に回転してからはエレーンの動きは止まっていた。
高速回転するジールヘイズを握りしめ、スカイディアにと突貫していく。
その点だけを見れば、攻撃を受けやすそうには思えるけど、ジールヘイズからは緑色の光の奔流が放たれていた。
光の奔流はジールヘイズだけではなく、使い手であるエレーンの体をも包み込んで守っているようだった。攻撃だけではなく、防御においても光は壁となってスカイディアとエレーンとを分け隔てていた。
いわば攻防一体の光の壁だ。
その壁の中にいるエレーンは壁の外のスカイディアを押し込んでいた。
さすがのスカイディアも光の壁の前ではなす術がないようだ。
歯を噛み締めて耐え続けていた。
その光景はどこか「あの武闘大会」を想わせてくれる。
(……ローズさんとタマちゃんの試合みたいだな)
俺のせいでひとりっきりで戦うことになったタマちゃんとそのタマちゃんに全力で勝ちに行ったローズさん。あのときのふたりの戦いを思わせる光景だった。
違うのはあのときのふたりとは違って、エレーンとスカイディアは命を掛けたやり取りをしているということ。そして俺はあのときとは違って指を咥えて見ているわけじゃないということだ。
そう、これは試合じゃない。
命を掛けたやり取りだ。試合のようにフェアプレイ精神なんてものは必要ない。
であれば、俺がするべきことはひとつだけだ。
「スカイディア!」
力を振り絞ってスカイディアの背中に斬りかかる。属性を付与するほどの余裕はなくて、ただ「黒狼望」を振り下ろすので精一杯だった。
それでもためらうことなく剣を振るった。
スカイディアが驚愕とした顔を浮かべながら左手を俺に向けてくる。その左手と俺の剣がぶつかった。いや、正確にはスカイディアの左手と俺の剣の間にわずかな距離が空いていた。そのわずかな距離をスカイディアは必死な表情で維持しようとしていた。
「このっ! 私はあなたの伯母なのよ!?」
「はっ! 都合のいいときばかり伯母さん面しているんじゃねえよ!」
「口が減らない子ね!」
スカイディアから余裕が消えていた。なにせ俺の攻撃はスカイディアに通じる。俺が異世界で生まれ育ったからこそ、この世界の「民」ではないからこそ俺の攻撃が通じてしまう。他の人の攻撃であればスカイディアは意に介することはない。
だけどそれにも疑問はある。本当にこの世界の「民」の攻撃は完全に通じないのだろうか? ゴンさんのオーバーキルじみた全方向からの弾幕を受けきったことは、俺も見ていたから知っている。あれほどの攻撃を受けきった。それだけを見れば、この世界の「民」の攻撃はなにひとつ通じないと考えてもいい。
でも、ならなぜエレーンの攻撃をスカイディアは必死に受け止めているのだろうか? エレーンはもとからこの世界の「民」だ。この世界の「民」であれば、その攻撃は通じないはず。なのになぜスカイディアはいま必死に受け止めようとしているのか。その理由は仮定であれば、ひとつ思いついた。であれば、それを試さずにはいられない。
(これで両手! なら次だ!)
「サラぁぁぁぁぁ!」
痛みを無視して叫んだ。それはあのときと、「禁足地」の地下でカティを助け出したときと同じだ。あのときの合図と同じ。その合図をサラさんは理解してくれるのか。一種の賭けだった。でも自信のある賭けだった。だって──。
「名誉挽回のチャンスをありがとうございます、旦那様!」
──サラさんもまた俺の嫁のひとりなのだから。だからわかってくれる。そう信じることができた。そしてその信頼に応えるようにサラさんはお得意の大技である氷炎のブレスを使ってくれた。
「っ!?」
スカイディアの目が見開いた。見開いたままスカイディアの体はサラさんの氷炎のブレスに呑み込まれた。そこに俺の剣とエレーンの神技が交錯した。強かな手ごたえとともに俺たち三人による同時攻撃はスカイディアに直撃した。
ある意味トリニティアタックですね。
次回はできたら二話更新したいです←




