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Act9-305 ボクの邪魔をするな

 地面が震えた。


 いや、世界全体が震えているようだった。世界が崩壊しようとしているわけじゃない。ただ震えているだけ。でも普通は世界が震えるようなことなんてない。


 だけど、現に世界は震えていた。その理由をボクはなんとなく理解できていた。


(レンさん)


 理由はどう考えてもレンさんだろう。正確にはスカイディアが余計なことをしたに違いない。カティちゃんを助けること。それがレンさんの目的だった。


 でもその目的を達成したのか、できなかったのはわからないけれど、スカイディアがレンさんの中のもう一人のレンさんを起こしてしまったというのは明らかだった。


(余計なことをする女ですねぇ)


 もうひとりのレンさんは、本当にレンさんなのかと思うほどにとても残酷な存在のようだった。それこそレンさんが大切にしている人たちを皆殺しにしかねないほどに。それも笑いながら皆殺しにしたとしても不思議ではないほどに、だ。


 でももうひとりのレンさんは、レンさんの中で眠りについているはずだった。レンさんのお母さんであるスカイストの手で厳重に封印されているはずだった。


 でもその封印がほころびてしまったのかもしれない。その証拠に少し前までは感じられていたレンさんの気配が消えてしまっていた。それまでは弱々しくはあったけれど、レンさんを感じ取れていたのに。いまはもうレンさんを感じることができなくなってしまっていた。


 明らかにレンさんの身になにかがあったことは間違いない。そのなにかがもうひとりのレンさんが現れたということもまた。


(レンさん)


 レンさんのことを思うと胸が痛い。その痛みからの衝動のままに動きたいところなのだけど──。


「あははは、強い。強い。強いねぇ! もっと、もっとやろうよぉ!」


 ──ボクはボクで聞かん坊の相手で精いっぱいになっていた。この聞かん坊はずいぶんと頑丈だった。


 さっきから「尻尾操作」で得た「武術アーツ」を何度も放っているのに、いまだにピンピンとしている。「三段突き」以上の「武術」じゃないとたぶん通用はしないでしょうね。


 でも「破砕突き」は受け止められてしまっていた。「破砕突き」以上の技でかつ、単発以外となると限られてくる。たとえば「尻尾無双三段」とか。


(だけど、無双三段でもこれは倒せないのです)


「尻尾無双三段」はボクの切り札のひとつ。その切り札でもこれを倒しきることはできなかった。


 完璧なタイミングで「尻尾無双三段」を放てば、受け流すこともさせずにその衝撃をすべて叩き込めれば、可能性はあるんでしょうけど、博打の要素が強くなってしまう。


(だけど「尻尾無双三段」を超えるとなると)


 博打をせずに、確実にアリアを倒すには、正真正銘の、切り札中の切り札しかなかった。


 それを放つには()()()()()()()()()()()。手数がまだ必要だった。


 それもとびっきりの速さと攻撃力を秘めた一撃が、だった。であれば、貸してもらうだけだった。


「……ローズさん、バルドさん。()()()()()()


「? 誰のことを」


「「「決まっているでしょう? おまえの知らない人たち──ボクのライバルさんたちのことですよ」」」


「はっ!?」


 アリアが愕然としている。でもそれも無理もない。()()()()()()()()()()()()()()3()()()()()()()()()のですから。


 そんなアリアを無視して3人のボクはそれぞれにローズさんとバルドさんの切り札である特別スキルを使った。


「「流華双螺旋!」」


「天・雷・断!」


 左右にいたふたりのボクがローズさんの切り札である「流華双螺旋」を、ふたりの間にいたボクがバルドさんの「天雷断」を。それぞれに放った。


 おたまとフライパンの切っ先を向けながら全身を使った高速回転の「流華双螺旋」と渾身の力を込めた大上段からの全力の振り下しである「天雷断」によってアリアの逃げ道は一瞬で塞がれた。でもさしもの「流華双螺旋」と「天雷断」であってもアリアであれば、受け流せるかもしれない。


 だけど受け流すということは、ボクに背中を向けるということでもある。それはアリアとてわかっている。でもローズさんとバルドさんの切り札相手になにもしないという選択肢は存在しなかった。


「く、くっそ! そんな技なんてすぐに!」


「ボクのことを忘れていますよ?」


 ほんの少しだけアリアから距離を取った。アリアは3人のボクに体を向けたまま、ボクにも視線を向けた。


 けれどボクは止まらない。9本の尻尾すべてに金色の光を、同時におたまとフライパンにそれぞれ白と黒の光を。ボクの切り札中の切り札。ボクが放てる最高の一撃。


「ボクの邪魔をするな。「冥」のアリア」


「お、おまえぇぇぇ!」


 アリアが叫ぶ。同時に「流華双螺旋」と「天雷断」が着弾した。アリアは必死の顏をして3つの衝撃を受け流そうとしている。そこにボクは最高の切り札を切った。


「これぞ、真なる無双。そして光と闇の極致。受けよ、我が一撃!」


 英魔十字斬と尻尾無双三段。そのふたつを同時使用するボクの最大の一撃。その名は──。


「絶・英魔九連!」


「絶・英魔九連」──。ボクの最高の一撃にして、真の切り札。その一撃はアリアを一瞬で呑み込んでいった。

 タマちゃんが事前に使ったふたつはある意味ホットな技となります。

 詳しくはタマちゃんが主人公の「おたまの英雄」で←番宣

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