Act9-287 一瞬の惨劇
すいません、遅れました←汗
やはり仕事先で更新は無理ですね←汗
あとスマホで更新しているので、体裁が狂っています。具体的には一字下げができていません。帰ったら手直しします。
あと今回はサブタイの通り、閲覧注意でお願いします
スカイディアがサラさんのブレスに呑み込まれた。
でもそれは同時にスカイディアが抱き抱えていたカティをも呑み込むということだった。
止めようにもすでにブレスは放たれて、ふたりを呑み込んでいた。スカイディアはどうでもいいけど、カティが大火傷を負うかもしれない。
でもサラさんを責めることはできない。サラさんは俺のためにスカイディアを攻撃したんだ。
というよりもスカイディアはサラさんを最初から挑発していたのかもしれない。
なんでそんなことをするのかはわからないけど、いまさら俺に挑発するとは思えなかった。
そもそも俺には挑発されても、乗る余力さえないんだ。そんなことは俺を隻眼にしてくれたスカイディアが一番わかっているはずだ。
なのにも関わらず、あの女は挑発めいたことを言っていた。それはどう考えてもサラさんを怒らせるためのもの。
ただどうしてそんなことをするのかはわからない。
そもそもする意味がないし、したところでなんのメリットもないはずなんだ。……普通の人であれば。
けれど相手は性格が最悪というか、狂いに狂った女だ。
人の苦しみや嘆きを見て、愉悦するよう女だ。
その女がわざわざ挑発するということは、サラさんを苦しめたいのだろう。
いや、この場にいる全員を苦しめるためにわざとサラさんを怒らせた。
怒れる竜がすることがなんなのかを理解しているからこそ、炎のブレスを吐くであろうことを予測していたからこそ、サラさんを挑発した。
そうしてまんまとブレスを吐かされたサラさんは──。
「ぁ、ぁぁ」
──頭に上っていた血が下がったようで、呆然としていた。呆然としながら体を震わせていた。
「ち、違う。違うんです。私は、私は」
サラさんは俺の方を見ながら必死に首を振った。
そんなつもりはなかったと。
カティを燃やそうとしていたわけではなかった、と言うように首を振っていた。
首を振りながら、サラさんは涙を流していた。
けれどどんなに涙を流しても、すでに終わったことだ。
もうすでにしてしまっている以上、取り繕うことなんてできない。
けど、それでもなおサラさんは「違う」と言っていた。
本来の竜の姿のまま、いまにも狂ってしまいそうなほどに、その目に涙を溜めながら、必死に「違う」と言い続けていた。
「……わかっている。悪いのはあの女だから」
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」
サラさんは狂ったように何度も謝り始めた。
俺の声が届いていないのか、大粒の涙を流しながら、何度も何度も謝り続けていた。
「サラさん、落ち着いて!」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」
サラさんは泣き叫んでいく。泣き叫ぶ理由が自身のブレスの威力がどれ程のものなのかを理解しているからであるのは明らかだ。
鍛治師でもあるからこそ、火の扱いは誰よりも得意としているはず。
そのサラさんだからこそ、いま放ったブレスがどれ程の威力であるのかはわかるんだろう。
それこそ直撃した相手がどうなるのかを想像できるくらいには。
相手が普通の人間であれば、俺も慌てるし、もしかしたらサラさんを責めたかもしれない。
けど運がいいのか、それとも悪いのかは判断しづらいけど、相手は普通じゃなかった。
「ふふふ、肌寒かったからちょうどいいわねぇ」
炎の中からはのほほんとしたスカイディアの声が聞こえてきた。
同時に炎の中をゆっくりと歩いてくる人影も見えた。
その人影はゆっくりと炎の中を進んでくる。やがて人影は炎の中から姿を現した。
「バカ、な」
サラさんが言葉を失っていた。
なにせ炎の中から現れたのは、火傷どころか着ている服にさえも焦げがない、炎に呑み込まれる前のスカイディアそのものだった。
サラさんのブレスは通用しないどころか、なんの意味もなかったと言われたようなものだった。
「やはりあなたたち、ヒトカゲの炎は心地いいわね。ふふふ、肩凝りが少し楽になったわ」
ふふふ、と楽しげに笑うスカイディアに誰もが息を呑んでいた。
圧倒的な実力差、いや、圧倒的な存在の差があった。
「さて、肩凝りを治してくれたお礼をしようかしら」
ふふふ、と笑うスカイディア。でもその笑顔はとても残酷なもののように俺には見えたんだ。
そしてその残酷さはあっさりと顔を覗かせた。
「があぁっ!」
サラさんの叫び声。そして赤いなにかが宙を待った。
頭上から降り注ぐなにか。顔を上げると目の前に大きななにかが落ちてきた。
緑色の枝のようなもの。けれど、枝の根本からは赤い液体がこぼれていた。
いや、根本からじゃない。
赤い液体をこぼしているのは、もっと上からだった。
より顔を上げるとそこには左腕で右腕を、あったはずの右腕を、肩から下がなくなった腕を押さえつけているサラさんがいた。
「あらあら、優しく撫でただけだったのだけど、脆い腕ねぇ」
スカイディアが笑う。その一言がより目の前の光景を現実だと語っていた。
「さ、サラさん!」
「サラぁっ!」
俺は堪らず叫んだ。でもその声はゴンさんの叫びに、悲鳴じみた叫び声によって掻き消されてしまった。
そのゴンさんの声でも掻き消すことができない血のこぼれ落ちる音を俺はただ聞いていることしかできなかった。




