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Act9-198 短命

 平成最後の更新となります。

 なのに最後に爆弾投下ですね←

「──姉様が入り口を開けられるまで耐える。そして姉様の隙を衝いて外に脱出する。それ以外にここから出られる方法はないと私は思う」


 アイリスの言った方法は画期的とは言えないけれど、考えればそれしかない方法だった。  


 出口がないのであれば、出口が開くのを待つ。それも相手の油断を衝いて脱出する。


 単純な内容ではあるけれど、異空間のここに閉じ込められている現状でここから脱出する方法はそれしかなかった。むしろそれ以外にあるわけがなかった。


 でもアイリスの策には致命的な欠陥もまた存在している。それがどうやってアルトリアの隙を衝くかってことだった。


 アルトリアは隙を衝いたとはいえ、レアに奇襲ができるほどの実力者だった。そのアルトリアの隙を衝く。どう考えても無茶だし、分の悪い賭けになる。


 でもそこにひとつの要素が組み合わされば、成功する確率は跳ね上がる。そう、それはアイリスが犠牲になるということだった。 


 もっと言えばアイリスがその命を懸けてアルトリアを止めている間に、アルトリアが作った入り口から俺が脱出する。


 この方法であれば、致命的な欠陥のあったアイリスの策もうまくいくかもしれない。けれどそれは同時にアイリスが死ぬということになる。


 いや死ななかったとしても反逆者という扱いになることは間違いない。そして反逆者となれば、アルトリアがアイリスを殺す理由ができてしまう。


 いや、もともとアルトリアはアイリスを殺すつもりなのかもしれない。殺す理由が彼女にはできたはずだ。俺がアルトリアの監視から逃れるために吐いた嘘──「アイリスを抱く」という嘘がアイリスを殺す理由となってしまった。


 いまのアルトリアであれば、たぶんアイリスを殺そうとするはずだ。


 実際に俺がアイリスを抱くわけじゃなかったとしても、俺がそう口にしてしまったことでアルトリアの殺意はいまアイリスに向いてしまっている。


 アイリスを助けるために、アイリスの怪我を治療するために吐いたはずの嘘がかえってアイリスの首を絞めることになってしまった。ひどい皮肉だと思う。


 でもあの場ではああするしかアイリスを助ける方法がなかった。どこからか監視されているかわからない状態でアイリスを助ける方法は、ああ言うしかなかった。……なんて言ってもアイリスは納得してくれないかもしれないな。


(……やっぱり俺は誰も守れないのかな?)


 最初はモ―レ、次にカルディア、そしてレアに続いて、アイリス。


 守ろうとした相手を、助けようとした相手を俺はいつも守ることもできない。


 助けてあげることもできない。できるのは守ろうとした相手から、助けようとした相手から逆に守って、助けてもらうことだけ。


(情けなさすぎて涙が出るよ)


 泣きたくなるくらいに俺は自分が情けない。どんなに大口を叩いても、俺にできることはないんだから。泣きたくなるのも無理もない。


 でもどんなに泣きたくなっても現状は変わらない。変わるわけがない。それが俺にはなによりも情けない。


「……気にしなくていい。どうせ近いうちに尽きる命だ。別に気にしなくていいよ」


「そんなに怪我ひどいのか?」


 アイリスが自嘲するように笑った。でもその言葉の意味がいまいちわからなかった。そんな俺にアイリスは言った。


「……ああ、知らないのか。ホムンクルスという生き物は長生きできないんだよ。もともと短命なのだけど、私たち姉妹はより短命でね。私たちの髪はもともと白くはなかったんだ。でもいまは真っ白になった。それは命が尽きようとしているからなんだよ」


 アイリスはまた笑った。でもその笑顔は胸が切なくなるほどに悲しそうなものだった。

 続きは明日──令和元年の五月一日となります。

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