Act9-196 虎口と蠱毒
平成最後の更新祭りは、二日続けての複数更新となります。
具体的に言えば、平成最後の日と令和の最初の日で6話更新、となる予定です←汗
できなかったら笑ってください←笑
では、まずは一話目です。
「──私たちは他の姉妹と、最後の一組になるまで殺し合いをさせられたんだよ」
アイリスが口にした内容は「蠱毒」となんら変わらなかった。本来の「蠱毒」は壺の中に毒虫や毒蛇を入れて最後まで生き残っていたものを使うという呪術となんら変わらない。
いくらホムンクルスとはいえ、自分の娘たちを生贄にするなんて俺には考えられないことだった。
でもそれを実際に為したのがアルトリアとアイリスの父親であるルシフェニアの王様なのか。
正直話が合いそうにない人だ。そもそも話をしたいと思えない人だった。
どんな理由や目的があったとしても自分の娘を生贄に使うなんて許されることじゃない。
少なくとも俺はそんなことをするルシフェニアの王様とは会いたくもない。
けれど現状を踏まえるかぎり、アルトリアが俺をここに閉じ込めた理由は、アルトリア自身が暴走していることもあるだろうけれど、一番の理由はルシフェニア王に、みずからの父親に俺を会わせようとしているんだろう。
これがまだ婚姻のためという理由であれば、笑えることではあるけれど、アイリスの話を聞くかぎり、ルシフェニア王は娘のためにそこまでするという子煩悩な人には思えない。
となれば、だ。なにかしらの理由や目的があるに違いない。この世界に来た当初であれば、てんで予想できなかったけれど、いまならなんとなくわかる。
ルシフェニア王の目的は俺の後ろにいる母さんだろうな、と。
母さんを引っ張り出すのが目的なんだろう。
もしかしたら母さんが、ルシフェニアには気を付けろ、と散々言っていたのは、ルシフェニア王がよからぬことをしようとしていたからじゃないのか。
それも世界征服なんてレベルではなく、もっと歪でかつ危険なことだったとしたら? たとえばこの世界を滅ぼそうとしているとか。
もっともこの世界を滅ぼすとしても、この世界には「七王」陛下や「神獣」様たちがいる。
人という括りで最強と謳われる人たちと本当の意味で最強と謳われる方々が守護しているんだ。
その世界を滅ぼすことなんてできないはず。
でも、そこに俺というキーパーソンがいたら話は変わるか。俺は母さんの娘だ。
母神である母さんの娘である俺を人質にでも使えば、母さんはルシフェニア王の言うことを呑むしかなくなる。
もしそうなれば、この世界を滅ぼすことだって可能になる。
いくら「七王」陛下や「神獣」様たちだって母神である母さんの言うことを無碍にはできない。
たとえその言葉がこの世界を破滅においやるものだったとしても、母神である母さんの言葉を無碍にすることはできない。
そして母さんに言うことを聞かせるためのキーパーソンとして俺を手中に収めたのであれば、あとはいかようにもこの世界を好きにできる。
「……そんなことをする人に俺は捕まったのか」
うかつだったとは思う。でも愛する人を、レアを刺されたんだ。それも相手がかつて愛した人だったアルトリアにだった。
冷静でいられるわけがなかった。いていいわけがなかった。
でもその結果がどうやって脱出すればいいのかもわからない、この状況に追い詰められてしまっていた。
どう考えても俺の落ち度だった。ここからの逆転が可能かどうかさえもわからない。どうすればいいのか。どうしたらいいのか。それさえもわからなかった。
「どうしたらいいんだろう」
このまま黙ってここにいても意味はない。むしろ状況が悪化するだけだった。けれどすでに虎口に飛び込んでしまっている以上、ここから巻き返しができないこともまた事実だった。
「どうしたらいいんだ?」
同じ言葉を繰り返しながらも、必死に現状の打破についてを考えていた、そのときだった。
「……現状の打破であれば、どうにかなると思う」
ぽつりとアイリスが呟いた。その目はとても真剣なものだった。俺を騙そうとしているようには見えなかった。現状を打破するなにかを見つけてくれたようだった。
「どうするんだ?」
「……それは」
アイリスはその方法を躊躇いがちにだけど、はっきりと答えてくれたんだ。
続きはたぶん八時ごろになると思います。




