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Act9-192 生じたとき

 えー、大変遅くなりました←汗

 うとうとしていたら、こんな時間に←汗

 気をつけないとなぁ←汗

 言う必要はなかったはずだった。


 でも気付いたら、いや、気づいたときには私は、私と姉様の生まれについての話をしていた。アリアについてはよくわからない。


 同じ姉妹とはいえ、私たち三人は全員が別々の母様に産み落とされているけれど、私と姉様の母様は双子の姉妹だったから、その繋がりで物心がついたころから知っているけれど、アリアに至っては姉妹だとお父様に紹介されるまで存在そのものを知らなかった。


 だから姉妹という感じはそこまでしない。それでも一応は妹だとは思っている。あくまでも私は。


 でも姉様にとってアリアはただの駒だろう。体よく使えるけれど、少しだけ使い勝手の悪い駒。姉様にとってのアリアという妹はその程度の存在でしかない。


 いや、違うか。姉様にとって体よく使える駒は私も同じなんだろう。アリアとは違って、使い勝手がいい駒。それが私だった。


 わかっていたことだった。わかっていたことだったけれど、姉様にいたぶられたときにそれをはっきり再確認できた。姉様にとって私は、私もその程度の価値しかなかったのだと。そう言われてしまったのだから。


 だからなんだろう。昔のことをつい口にしてしまったのは。そういうことなんだと思う。そして一度語ってしまえば、あとは自動的に昔のことを口にし続けてしまった。


「……あんたの世界ではホムンクルスがどういう風に産まれるかは知らない。でもこの世界では、いえ、少なくとも私と姉様は別々の母様に産み落とされたの。私という存在が生じたのは、薄い透明な試験管の中だった。そのとき、隣にいたのが姉様だった」


 まぶたを閉じれば、うっすらとだけ思い出せる、私という存在が生じたときのことを。そしてその隣に姉様がいたことを。


 そのときから姉様は姉様だった。


 私よりも少し早く生じた存在だけど、私と同じ日にそれぞれの母様の胎内に宿った。そして同じ日に産み落とされたんだ。


 母様の胎内に宿る前は話さえもできなかった。ただ姉様がじっと私を見つめていたことを知っている。


 私が生じたことを喜んでいたのか、それともただ私を見ていただけなのかはいまはもうわからない。少し前までであれば、喜んでいたのだと信じていられた。


 でもいまはもうそんなことは信じられない。私の勝手な思い込みだったのだといまなら思える。


 いや、そう思ってしまう。でなければ、そうでなければ、こんなにも姉様の手で傷つけられることはなかったのだと思う。


 こんな仕打ちをする程度の存在でしかない私が生じたことを姉様が喜ぶわけがないのだから。


「母様の胎内に宿ったときは、不安だったよ。ほんの数日だったけれど、すぐそばにいた姉様と離ればなれになったのだから。だから不安で仕方がなかった。姉様は果たして無事に産まれてくださるだろうかと。私も一緒に産まれることができるだろうかと。そんなことばかりを考えていた」


 ずっとそばにいた姉様と離れ離れになったときはとても不安だった。たとえ宿った体が双子の姉妹のものだったとしても、それでも姉様と離れてしまったことが私には不安で不安で仕方がなかった。


 だから無事に産み落とされて、まともに言葉も話せないときでも私は姉様を探し、そして私の隣のベッドで寝かされた姉様を見つけたときはとても嬉しかった。


「なんでアルトリアだとわかったんだ?」


「……私をじっと見つめておられていたから」


「おまえを?」


「ええ。試験管にいたときと同じで、じっと私を見つめていた。だからわかったの。「ああ、この人が姉様だ」ってね」


 実際姉様は試験管にいたときのことを語っていた。私を見つめていたことも教えてくれた。だからこの人が姉様だってことがわかったのだから。


「……それからは姉様と一緒に母様たちに育てられた。お父様は時折私たちが住む家に来ては、母様たちと会っていた。その際いろいろと話をしていたようだったけれど、よく憶えていない。ただ母様たちはお父様に会えて嬉しそうに笑っていたことは憶えているの」


 母様たちはとても幸せそうだった。そんな母様たちを見るのが私は好きだった。姉様も同じだったはず。でもそんな母様たちと過ごす日々は、長続きはしなかった。


「あれは私たちが三つになる頃くらいだったかな」


 母様たちと過ごす日々の終わりを私は口にしていった。

 明日はもしかしたら一話更新になるかもです←汗

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