Act9-145 違和感の答え
カティとシリウスの追いかけっこはかなり白熱したものになった。
ふたりともそろって「刻」属性を使えるし、それぞれにAランク個体とBランク個体になったことで身体能力自体がかなり向上していた。
その結果が追いかけっこの白熱化に繋がった。まぁ、最終的に俺と同様にシリウスもカティに追い詰められてしまっているわけなんだけども。やはりこれも親子ゆえなのかな? シリウスを追い詰めるカティの姿はプーレやレアたちの姿に不思議と重なってしまう。シリウスに至っては言うまでもない。身に覚えがある姿だった。
「まぁ、パパを待たせるのは悪いからここまでにしておいてあげるね?」
ニコニコと笑いつつ、シリウスが背持たれていた木を拳ひとつで叩き折ってしまうカティ。そんなカティの一撃に涙目になって怯えるシリウス。親子とはいえ、ここまで同じにならなくてもいいんじゃないかなと思ったけれど、そんなことを言っても無駄なことはわかっていたので、あえてなにも言わなかった。
『本当に似た者親子だな』
フェンリルがしみじみと呟いた。その似た者親子は誰と誰に対して言っているのかはわからない。わからないけれど情況から踏まえるかぎり、両方の意味合いで言っていることは間違いなかった。でもそれをあえて確認することはしない俺だった。
『さて。継嗣への折檻も終ったことですし、話を戻しましょうか。いや、正確には我らの目的をお話しすることから始めましょう』
ロードがこほんと咳ばらいをしつつ言った。シリウスは若干ロードに対して言いたいことがありそうな顔をしているけれど、ロードは特に気にすることなく話を進めていく。このふたりの力関係がなんとなくわかった気がする。シリウスもなんだかんだで大変な目に遭っていたんだなぁとしみじみと思った。
「その目的とやらは、シリウスがえっと」
「ロード・クロノスだよ」
「そう、そのロード・クロノスになったことと関係あるんですよね?」
『そうですな。継嗣がロード化したのは我らの目的の一環です。我が君も薄々と違和感に気付いておられたとは思いますが』
「そう、ですね。たしかに違和感は憶えていましたよ。特にシリウスがシルバーウルフに進化したときとか、ね」
そう。違和感はあのときからだ。シリウスは特にこれと言って戦闘の経験値を貯めていたわけではなかったのにもかかわらず、グレーウルフからシルバーウルフへと進化した。別に進化してはいけないというわけじゃない。ただどうして進化できたのかがわからなかった。
あのときはセイクリッドウルフの説明で一応納得はした。けれど完全に納得しきれていたわけじゃない。むしろあのときのセイクリッドウルフが言った内容はいくらか無理があるように思っていた。精神的な戦いであったとしても成長できる。そういうのはたしかにあるのかもしれないけれど、いくらなんでも無理があると思った。
成長はできるかもしれない。けれどたった一回のやり取りで、マモンさんとスパイダスさんとのやりとりだけで進化はさすがにありえなかった。けれどありえないことであっても実際に進化で来ている以上は納得するしかなかった。
でももしあの時点ですでにシルバーウルフに進化していたとしたら? いやそれどころかその先のクロノスウルフになっていたとしたら納得できるんだ。……なぜそんなことをしたのかという疑問はあるけれど、なぜ進化できたのかと言う疑問については納得できるようになる。そして新しく生じた疑問の答えをこれからロードは教えてくれるんだろう。いったいどういう内容なんだろう。
『すべては神代がきっかけとなるのです』
「神代が?」
『ええ。すべては神代に、神代に起きた「あること」が原因なのです』
ロードはゆっくりとだが、真剣な声色で事情についてを語り始めたんだ。




