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Act9-113 天岩戸にならなくてよかった←

 サブタイからしてわかる通り、香恋視点です←

 プーレに促される間、カルディアの部屋へと向かうと、ちょうど部屋からカルディアが出てくるところだった。


「カレン様、なにかご用ですか?」


 にっこりと笑いながらもはっきりとした拒絶を露にするカルディア。あからさまに邪険にされているのがよくわかる。


 だからと言って引き下がるわけにはいかない。


「……えっと話があるんだけど」


 ちらりと部屋を見るもカルディアが俺を見る目はとても冷たい。


(……やっぱり怒っている)


 どう考えてもカルディアは怒っていた。そこまで怒らなくてもとは思うけど、いまそれを言うと逆効果にしかならないことは明らかだ。


(誠心誠意に謝るしかないか)


 下手ないいわけも逆効果にしかならない。かと言って下手なことを言うわけにはいかない。


 となれば、やはり謝るしかない。それこそ土下座をするつもりで。いや、土下座をして謝ろう。


「すみませんでした!」


 俺はノータイムで床に頭を擦り付けるようにして土下座をした。その際「ゴツッ」というとてもいい音がした。おかげで額がとても痛い。けれどこの程度で止まるわけにはいかないんだ。


「え、ちょ、ちょっと!?」


 カルディアが慌てている。カティアの声ではなく、素の声を出している辺り、相当に焦っていることがわかる。しかしそれでも俺は土下座をやめない。


「ごめん。無遠慮すぎた。今後はできるだけしないようにするから許して──」


「……あぁ、もう。こっち来てください!」


 そう言ってカルディアは俺の襟首を掴んで部屋へと戻った。


 ……若干力が強かったからか首が締まって「ぐぇ」という声が洩れてしまったけども、結果的にカルディアの部屋の中に入ることができたのだからよしとするべきだ。


 ………天岩戸みたいにならなくてよかった。ちょうどタイミングよくカルディアが部屋から出て来てくれて本当によかったと思う。


 天岩戸のような状況になっていたら、カルディアにどんな要求をされたことやら。


 カルディアのことだから、「城中に聞こえるくらいの大声で愛を叫んで」とか言いそうだ。


 ……昨日の今日で、プーレと結婚式を挙げたばかりで、それはさすがに憚れたので本当に出てきてくれて助かった。そう、助かったよ。あくまでも部屋から出てきてくれたことに対しては、だけど。


 なにせ俺の苦行はここから始まるのだから。


「……で? なにしに来たの? 「カレン」様?」


 ジト目で俺を睨むカルディア。とても目が怖いし、いつもとは違って、「旦那様」ではなく、カレン様と呼んでいることから相当に怒りが深いことがわかる。


 すでに部屋の中でふたりっきりなんだから、いつも通りに呼べばいいのに、カティアとして振る舞っていることがカルディアの怒りを現していた。


「え、えっと、そのさっきのことで話が」


「さっきのこととは?」


 にこやかに笑いながら首を傾げるカルディア。ただ声のトーンが1オクターブくらい低かった。……ぶっちゃけ怖いです。


 でもいくら怖がったところでカルディアの怒りが収まるわけじゃなかった。


「いや、だからさっきのことはさっきのことでして──」


「……それではわかりませんねぇ。いったいなにをどうして謝りたいのかはっきりと仰ってくださいますか?」


 目の色が、きれいな紅い瞳がいまはいくらか血走っていた。


(ヤバい。本気で怒っている)


 カルディアの血走った目を見ていると、背筋が寒くなる。


 やはり嫁を怒らすべきではないようだ。


 しかしどう謝ればいいのやら。俺のあれは治しようのない悪癖であり、いくらカルディアが言おうともやめることはできない。


 でもやめない限りはカルディアの怒りは収まりそうにない。


(どうすればいいんだろう、この状況)


 冷たい汗を掻きながらどうすればいいのかを俺は必死に考えることになったんだ。

 実際カルディアは、確実に城中に聞こえるくらいの大声で愛を叫ばせるでしょうね←しみじみ 

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