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Act9-91 胴上げと最終準備

 本日六話目です。

 が、少々遅れました。申し訳ありません←汗

 教会にはそれほどせずに辿り着いた。


 街はずれと言っても、街の正門である大門からはそこまで離れていない。


 さすがに「エンヴィー」の城ほどに近くはないけれど、レアの隠れ家である倉庫ほどは離れていない。


 せいぜい屋台街よりもちょっと離れているくらいだろうか。


 だからかな、屋台街を通ると──。


「お? おぉぉ! プーレちゃんじゃないかぁ!」


 ──とある屋台から大声が聞こえてきた。見れば互助会の副会長さんが、もともとはお義父さんが会長をされていた互助会の現代表である会長代理さんが屋台を放り出して俺たちの方へと向かってくる。


 その表情は満面の笑みであり、ちょっと怖い。


 でもプーレは特に気にもしていないようで、会長代理さんの笑顔を見ても退くことなく、穏やかに笑いかけていた。


「お久しぶりなのです、副会長さん。あ、いまは会長代理さんでしたね。ごめんなさいなのです」


「いやいやいや、気にしなくてもいいさ。いやぁ、久しぶりだねぇ。半年ぶりくらいかな? 少し見ない間になんかこう、ぐっと大人っぽくなったというか、きれいになったねぇ」


「そ、そうですか?」


「ああ、そうさ。まさかあんなに小さかったプーレちゃんが、こんな別嬪さんに。……時の流れというのは早いものだねぇ」


 会長代理さんは涙ぐんでいた。言葉通りプーレの小さい頃を思い出しているのかもしれない。


 たった半年だけだったのだけど、会長代理さんからしてみたら大人っぽくなったのだろうか。


 まぁ、もともとプーレは美少女だったけれど、俺にはそこまで大きく変わったようには見えないのだけど。


「そこまでプーレは変わりましたか?」


 思わず会長代理さんに尋ねていた。そう尋ねたのだけど、その瞬間会長代理さんの笑顔が変わった。


 とても迫力のある笑顔になったというか。ぶっちゃけ怖いです。


「カレンさんだったよね? あんたなにを言っているのかな?」


「え? あ、その、なにと言われましても」


「プーレちゃんはこんなにも大人っぽくきれいになっただろう? 違うかな?」


「え、えっと、その」


「……なにかな? もしかしてプーレちゃんがきれいになったことを一番近くにいたはずなのに、気付かなかったとか言うんじゃないよねぇ?」


 にっこりと会長代理さんが笑う。その笑顔につい悲鳴を上げてしまいそうになった。


 なんだって屋台関連の人たちはみんな笑顔が怖いんだろうか?


「も、もちろん気づいていましたよ? プーレは日に日にきれいになってくれますし、それに」


「それに?」


「夜はちょっと奔放ですが、その分かわいいと言いますか」


「だ、旦那様! なにを言っているのですか!?」


「え? ぁ」


 しまった。会長代理さんの笑顔に気圧されてしまい、言わなくてもいいことを言ってしまったよ。


 プーレが顏を真っ赤にして俯いているし。うん、かわいいね。かわいいのだけど──。


「……ほう、夜。夜ねぇ? 今日十四歳になったばかりのプーレちゃんになにをしてくれていたのかなぁ?」


 会長代理さんの笑顔は怖かった。いや代理さんだけじゃない。見れば他の屋台の店主さん方も恐ろしい形相を浮かべていた。


(これはアカン奴やん)


 周りの光景を見て、俺は悟った。


 下手したら死ぬ、と。しかし誰もが殺気立ちすぎていて、俺の話を聞いてくれそうな雰囲気はない。


「まぁまぁ、みなさん。プーレはカレンさんにあげちゃったのだから、そこまで殺気立たなくてもいいじゃないですか」


 でもどこにも救う神はいる。俺の場合はプラムさんがそうだった。


 さすがに実の母親であるプラムさんのひと言には代理さんたちもなにも言えないようだ。


 いくらプーレをかわいがっていたとしても、実の娘同然にかわいがっていたとしても、実の親のひと言には従うほかなかった。


「だ、だが、プラムさん」


「だが、なんでしょう? 皆さんがプーレを大切に思ってくださっていることはわかっていますが、それでもプーレが愛した人であるカレンさんと、夜愛し合うことのなにが悪いのでしょうか?」


「だが、プーレちゃんはまだ」


「ええ、今日十四歳になったばかり。しかし現在の初産の平均を思えば、決しておかしなことではないですよ?」


「それは、そうだが」


「それにです。今日はちゃんと責任を取ってくださるそうですから」


「責任と言うと?」


「ええ。実は今日プーレとカレンさんは結婚式を挙げるんですよ。プーレの純潔を貰った責任をちゃんと果たすために。ね、カレンさん?」


 有無を言わさぬプラムさんの笑顔。その笑顔に俺は頷いていた。


 同時に代理さんたちがなぜか俺を囲んだ。なんだろうと思ったときには、俺の体は宙を舞っていた。


「よくやったぁぁぁ!」


 代理さんの心の底から咆哮が轟いた。


 代理さんたちはみな涙ぐみながら俺を胴上げしてくれた。


 胴上げしてくれるのは嬉しいのだけど、唐突すぎてなにも言えなくなってしまったよ。


 でも代理さんたちは笑っている。笑ったまま、俺をいつまでも胴上げしてくれたんだ。


 その後代理さんたちも式に参加することになり、それまでの以上の人数で教会へと向かい、そして──。


「それでは、プーレちゃんの準備を致しましょうかぁ」


「はい。旦那様、また後程」


「あ、ああ」


 教会に着くと左右に分かれて俺とプーレは結婚式の最終準備を始めたんだ。

 次回から結婚式です。めいびー←

 そして一月の更新祭りもこれにて終了となります。

 続きは明日の十六時です。

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