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Act9-88 やらかす竜族姉妹

 本日三話目です。

 プーレと一緒にシリウスたちを見送っていると、騒ぐような声が聞こえてきた。


 なんだろうと思い、顔を向けると街の正門の方に人だかりができているようだった。


 ……なぜか無性に嫌な予感がしていた。


「……嫌な予感がするのですよ」


「……奇遇だね、同感だよ」


 さすがにないとは思う。なにせ昨日の今日だ。


 いくらなんでもありえないとは思う。


 ありえないとは思うけれど、竜族ってわりとのんびり屋さんな人というか、マイペースな人が多い種族だった。


 となれば、だ。やらかしていたとしてもおかしくはなかった。


 俺とプーレは顏を見合わせると、城の正門を出て、街の正門こと大門へと向かった。


 その際プーレには俺がいつも身に着けている外套を着せてあげた。


 風邪を引いているわけではないけれど、体を冷やすのはよくないんじゃないかなと思い、少し強引に着せたのだけど、プーレはありがとうございます、と頬を染めて喜んでくれた。


 その笑顔に胸がどくんと高鳴ったけれど、あえて気にしないことにして、俺はプーレと手を繋いで大門の方へと向かい、そこで──。


「ん~? なんか見られていますねぇ~?」


 なぜか竜の姿で大通りに着地してくれているゴンさんを見つけてしまった。


 いやゴンさんだけじゃない。昨日コアルスさんに怒られたばかりのサラさんも一緒だった。


 ただゴンさんとは違い、サラさんはなんとも言えない顔をしている。


 ……さすがのサラさんも昨日怒られたばかりなのに、翌日さっそくやらかすのは憚れたのかもしれない。


 ……そう思うのであれば、少しはお姉さんをとめなさいよ、と言いたいのだけど、意外と押しの強いゴンさんには負けてしまったのだろうね。


 となれば、ここから先の展開は目に見えている。


「このぉ、アホトカゲぇぇぇ! 街の中に入るのであれば、門から人の姿になって入ってこいと何度言えばわかるんですかぁぁぁ!」


 コアルスさんの叫び声。顔を上げれば、いまにも雷とかのブレスを吐きそうなほどにコアルスさんの目は血走っていた。


「そして、その妹ぉぉぉ! 昨日言ったばかりですよね? なんで姉を止めない!?」


 コアルスさんの怒りの矛先は黙っていたサラさんにも及ぶ。


 サラさんはあからさまに体をびくりと震わせたけれど、コアルスさんの怒りは収まらない。


「いやぁ、わざわざ街の外で降りて人型になるのは面倒だったので、ついぃ」


「ついじゃねぇぇぇ! そのたびに住人たちが怯えるって何度も言っているでしょうが! 「ラース」の住人みたく肝っ玉が据わった住人ばかりじゃないんですよ、この国は!」


 コアルスさんの言葉遣いが崩れ始めてしまった。とはいえ、無理もない。


 実際コアルスさんの言う通り、「エンヴィー」の住人と「ラース」の住人とでは印象はかなり異なる。


「ラース」の住人はなんというか肝っ玉が据わっているというか、わりと動じない人が多いのだけど、「エンヴィー」の住人さんたちは逆に非日常的なことには動じやすい。


 それは種族の違いも関係していることもあるだろうけれど、国の位置が大きく関係している。


「ラース」がある「竜の王国」は「魔大陸」のちょうど中央に位置する国であり、その位置関係上、「魔大陸」の外からの侵略者にはあまり攻め込まれない場所にある。


 仮に「竜の王国」にまで攻め込まれたとしても、その時にはすでに「竜の王国」自体は戦の準備が整っているからだ。ほかの国々だってただで通すわけがない。相当に激しい抵抗をすることになる。


 その間に戦支度を「竜の王国」は整え、そして出陣する。


「魔大陸」の国々の中で国土面積自体はたぶん一番小さいし、住人の数もそう多くはない。


 けれどその武力はたぶん七国の中でも最強と言ってもいい。


 国名の通り、竜族や竜系の種族が住まう国だ。


 肝っ玉が据わり、動じづらいのはその力ゆえにだ。


 まさに眠れる竜のように「ラース」の住人は動じることはほとんどない。


 対して「エンヴィー」は「「魔大陸」の玄関口」とも言われる国であるからいろんなものが入ってくる。


 いままで見てきた七国の中で一番風光明媚なのはここ「エンヴィー」だった。「魔大陸」の流行はこの国から発祥することが多い。つまりは非日常に敏感と言ってもいい。


 決して「蛇の王国」の国力が低いわけじゃないけれど、「蛇の王国」の住人は人魚などの水中に適した種族が多い。


 それが地上に上がって生活している。つまりはアウェーで生活していれば、敏感な反応を示すのも無理もないことだった。


 そんなそれぞれの国の違いにゴンさんはなかなか慣れないんだろう。もしくは慣れる気がないのかもしれないけど。


 どちらにしろ、ゴンさんの振る舞いはこの国の住人にとっては非常識にもほどがあることだった。


 コアルスさんが怒るのも無理もないよね。


「でもぉ~、レア様が「構わない」と言うのでぇ~」


「は?」


 コアルスさんの声が少し低くなった。「説明しろ」という視線がゴンさんの背中にいるレアへと向かった。


 でもレアはそんなコアルスさんの怒りを受けてもただ笑っているだけだった。

 セリフがないのに存在感をか持ち出すレアさんでした。

 続きは十二時になります。

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