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Act9-60 長所と欠点

 新年最初の土曜日更新です。

 まずは一話目です。

「動かないでくださいねぇ~、プーレちゃん」


「はい」


「少しくすぐったいでしょうが、ドレスを作るためには必要なことですので、我慢してくださいね」


「はい」


 旦那様からプロポーズをされました。


 まさか私なんかにあんなプロポーズをしてくださるなんて思ってもいなかったのです。それもお師匠やカティアさんたちの前でです。


 すごく恥ずかしかったのです。でもそれ以上にすごく嬉しかった。私なんかと結婚するって言ってくれてすごく嬉しかったのです。


「あ、ほら、動いちゃダメですよぉ~?」


 サラさんの声が聞こえてきました。でも考えるのはすべて旦那様のことばかり。旦那様のプロポーズがずっと頭の中で反芻していました。


『絶対に幸せにする。泣き顔よりも笑顔の方が多くなれるようにする。だから結婚しよう?』


 旦那様が笑ってくれていた。


 言われたことというか、されたことはとても気障なことでしたけど、でもすごく嬉しかったのです。でも私なんかと結婚式なんて挙げていいのでしょうか?


 だって私はもう死んでしまうのに。旦那様の初めての結婚が私なんかでいいのでしょうか? 


 もっとも別な人がいるはずなのです。たとえばレア様とか、ノゾミさんとか。


 私じゃなくて、もっと別の人と旦那様は結婚されるべきだと思うのです。


 なのになんで私なんかと結婚されようとしているのか。私にはわからないのです。


「あー、プーレちゃん。動いちゃだめですよぉ~?」


「あ、ごめんなさい」


 サラさんが唇を尖らせていました。ドレスを作るために私の体のサイズをサラさんとティアリカさんが測ってくださっているのです。


 正確なサイズを測るためには動かないようにと言われていたのに、私は何度か動いてしまっていたのです。


 一度や二度であればともかく、もう何度も動いているので、サラさんも少しだけ呆れてしまっているみたいでした。でも怒ってはいないのが救いと言えば救いでした。


「まぁ、「旦那様」と結婚式を挙げられるのですからねぇ~。はしゃいでしまうのもわかるのですよぉ~」


 そう言ってサラさんは笑ってくださいました。どことなく嬉しそうな気がします。まるで自分のことのようにサラさんは喜んでくださっていました。


「……サラさんは」


「はいぃ?」


「私なんかが旦那様と」


「……それ以上言うと、私もちょっと怒っちゃいますよぉ~?」


 サラさんは笑いながら言われました。でも普段穏やかな目が少しだけ怒りの色に染まっているようでした。


「サラ、さん?」


「それ以上は我への侮辱と知れ、プーレ」


 サラさんはいつものおっとりとした喋り方をやめて、とても真剣に私を見つめられていました。


「……サラ殿、お気持ちはわかりますが、少しご冷静に」


「……そうですねぇ~。少し大人気なかったですねぇ」


 ティアリカさんの言葉にサラさんは大きくため息を吐かれました。それから「ごめんなさいねぇ」と謝ってもらえました。


 でも怒られることを私が言ってしまったのです。私みたいな女が旦那様と結婚なんてするから、こんな──。


「こぉら。そういう顔をしてはいけませんよ、プーレ殿」


「あぅ」


 ティアリカさんがちょっと怖い顔をして、私の鼻先を指ではじかれました。ちょっと痛いのです。でもティアリカさんは私が鼻先を押さえると、とても穏やかに笑ってくださいました。


「自信を持ってください。あなたは「旦那様」に選ばれたのですから」


「そうですよぉ~? 選ばれた人だからこそ自信を持ってくださいねぇ~。あなたは私たちの代表みたいなものなんですからねぇ~?」


 サラさんとティアリカさんはそれぞれに笑われました。その笑顔に私はなんて言っていいのかわからなくなってしまいました。

 自信を持てないプーレにサラさんとティアリアさんは、というところです。

 次回もプーレ視点になります。

 続きは二十時になります。

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