Act9-45 パパとしてするべきこと
本日六話目です。
「たしかにカティは悪い子かもしれないなぁ~」
落ち込むカティに向かって俺はそんなことを言っていた。
当然元から落ち込んでいたカティは、より一層肩を落としてしまった。
目には大粒の涙が溜まり、いまにもこぼれ落ちてしまいそうなほどだ。
む、胸が痛いね、思っていた以上にだ。でもここは心を鬼にして言うべきなんだ。
「いくらティアリカままが大好きだからといって、なにもしていなかったぱぱの頭をあんなにがぶがぶするんだもの。そんなカティはたしかに悪い子だなとパパも思うなぁ」
「……ごめんなさい」
俯きながら謝ってくるカティ。
ティアリカがどんな叱り方をしたのかは知らないけれど、この様子からしてこっぴどく叱ったのか、それとも相当に辛辣なことを言ったのかのどっちかだろうね。
ティアリカらしくないことだけれど、カティがしたことはいけないことだということを伝えるにはこれ以上とないことだったと思う。
その分カティの精神ダメージが大きくなってしまっているけれど、そこはまぁぱぱとして頑張りましょうかね。
「でも、ちゃんと反省できているところはすごく偉いとパパは思うよ?」
「カティ、えらいの?」
こてんと不思議そうに首を傾げるカティ。そんなカティの頭をそっと撫でた。手触りのいい髪を手櫛で梳いてあげた。
「うん。自分がしたことが悪いことだってわかってくれた。それはとても偉いことだとパパは思うよ。自分のしていることが悪いことだとわかっていても、なかなか認められないのはカティくらいの子だけじゃなく、大人のなかにもいるものだよ」
「そうなの?」
「うん。そうなんだよ」
見ためは大人であっても、やっていることは子供以下っていう人はわりといるものだ。
いや、子供以下というのはかえって子供に悪いとも言えるね。
それくらい言動がおかしい人というのはいつの時代でも、どの世界でも一定数は存在してしまうものだ。
そんな人たちに比べたら、ちゃんと反省ができているカティはとても偉い。それこそご褒美をあげてもいいくらいにはね。
「だからカティは偉いよ。ちゃんと自分のしたことが悪いことだったってわかっているんでしょう?」
「わふぅ。ぱぱの頭をがぶがぶするのはいけないことだったの」
「うん。ならパパからはこれ以上言うことはありません。ちゃんと反省もできているし、もう同じことをしないでしょう?」
「わふぅん。ティアリカままにおこられるのいやだもん」
「ならやっぱりパパからは言うことはないよ。ちゃんとごめんなさいもできたし、偉い偉い」
「わふぅ」
カティの頭を撫でながら、頭上のティアリカを見やる。
ティアリカはなにか言いたげな顔をしていた。
余計なことをと顔に書いてあるように思えるけれど、そんなもんは知らん。
愛娘を泣き止ませるためであれば、俺はどんなことだってしてみせよう。
ゆえにティアリカがなにを思おうと知ったことじゃない。それにティアリカだって素直になるべきだからね。
『……カティが偉いことをしたのであれば、カティが大好きな「まま」はどうするべきだと思う?』
『……誘導尋問ですか?』
『違う、違う。単純にどう思うかってだけのこと』
『……わかっています』
『じゃあ、頼むよ? パパからしてあげることは終わり。次はママがすることだからね』
ウインクをするとティアリカは小さくため息を吐いた。けれど意を決したように口を開いていった。
四日目はこれにて終了です。
五日目は今夜十二時より開始です。




