Act9-43 わるいこなの
本日四話目です。
「カティ? どうしたの?」
俺の腹の上にはずいぶんと元気をなくしたカティがいた。
カティの立ち耳はすっかりと垂れ下がっていた。誰がどう見ても落ち込んでいた。でもなんでカティが落ち込んでいるのやら。
「……ぱぱ、カティはわるいこなの」
「……は?」
開口一番で思わぬ言葉が飛んできた。
いや、いきなり悪い子なのと言われてもなんて返していいのか、パパ真面目にわからないんだけど?
そもそもなんでカティが悪い子なのかがパパにはさっぱりとわかりません。いったいどういうことなんだろう?
「えっと、どういうことかな?」
「……わふぅ、カティはわるいことをしたから、わるいこなの」
「いや、だから、ね?」
いかん、言っている意味がわからん。
噛み砕きすぎて状況を理解できない。
いったいカティはなにが言いたいんだろう?
悪いことをしたって、なにをしたっけ?
少なくとも俺には悪いことをカティがした憶えはないんだけども。
「だって、カティ、ぱぱのあたま、がぶがぶとしていたの」
「あー」
「ぱぱのあたまをがぶがぶするのはわるいことだって、ティアリカままにいわれたの」
立ち耳を、いや、立ち耳だけではなく、その毛並みのいい尻尾さえも垂れ下げてカティは申し訳なさそうにしていた。
どうやら俺が気絶している間に、ティアリカに怒られてしまったみたいだね。
まぁ、見たところ頬を叩くなどの体罰はされていないみたいだけど、それなりにきつい言葉を掛けられたことは間違いなさそうだった。
ティアリカってば容赦がないね。まぁ、母親としては娘の躾はきちんとするべきだと思ったのかもしれないね。
とはいえ、被害者である俺自身は別に気にしていなかった。
いや気にするどころか、あれも一種のコミュニケーションだと思っていたんだけどな。
でもティアリカはコミュニケーションだとは思わなかったようだ。悪いことだとカティに教え込んだみたいだね。
それでいままでカティがいなかったのか。
カティを慰めるためにいままでサラさんがカティの面倒を看てくれていたってことか。
少し前まではそれされもカティは嫌がっただろうけれど、いまはサラさんもカティにとっては「まま」のひとりだからね。
もっとも一番大好きな「まま」はティアリカであることは変わらない。
たとえこの先「まま」が増えたとしても、一番の「まま」がティアリカだということには変わることはないんだ。
そのティアリカに叱られてしまった。カティにとってはとても衝撃的なことだったに違いない。
とはいえティアリカが叱ったことは決して間違いではない。
カティはかわいい子だけれど、狼の魔物であることには変わらない。
人とは身体能力がまるで違うんだ。
たとえカティがじゃれつく程度の力しか込めていなかったとしても、相手によっては本気で襲い掛かられているように思ったとしても不思議ではない。
それくらい魔物と人ととでは身体能力に差があった。
ティアリカはそのことをカティに教え込もうとしているのか。
それとも別の理由があるのかはわからない。わからないけれどパパとしてやることはやっておくべきだろう。それじゃいっちょやるとしますかね。
続きは十六時になります。




