Act9-40 新しい秘書ができました
更新祭り四日目&元旦更新となります。
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
まずは一話目となります。
「ん~」
プーレのためにできることはなにか。
プーレが喜んでくれることはなにがあるのか。
仕事中にも関わらず、俺はそのことばかりを考えていた。
「……主様、お仕事中はちゃんとお仕事のことを考えてくださいませ」
腕を組んで執務室で頭を捻っていたら、モーレに呆れられてしまったよ。
まぁ、仕事中に仕事以外のことを全力で考えていたらそうなるわな。
「いや、だってその」
「まぁプーレ殿の誕生日が近いということもありますが、いくらなんでも努力する方向が間違っておられますよ? プーレ殿は仕事を真面目に取り組んでおられる主様がお好きなのですから」
やれやれとため息を吐きながら、モーレは紅茶を淹れてくれた。
元々はモルンさんの経理部門に所属していたのだけど、「おね、もといエレーンさんは経理には向きません。マスターの秘書業務をミーリン姉さんと交代してください」と左遷されてきたんだ。
……経理部門からギルドマスターの秘書になることを左遷とは言わないと思うけど、状況的に見れば昇進というよりも左遷だった。
もっと言えば厄介払いに近いと思う。あくまでも端から見れば、の話だけど。
実際はモルンさんなりにモーレに気を使ったんだと思う。
俺と一緒に仕事ができるようにしてくれたんだろうね。
「エレーンさん。ちゃんと既成事実を作ってくださいね」
モーレを執務室につれてきた際に、モルンさんってばそんなことを言ってくれたもの。
既成事実を作るどころか、既成事実をモーレとの間に作れるものを俺は持ってねえんだよと言いたかったね。
でも俺の意見はまるっと無視された。そしてそれはモーレと交代して秘書業務から解放されたミーリンさんも同じだった。
「マスターはちょっとこう、隙が多いところを見せた方が食いついてくるはずですので!」
隙を見せたら食いつくなんて、俺は野性動物かなにかなのかだろうかと思ってしまったよ。
そこまで俺はガツガツしているように思われているのだろうか?
かなり心外なんだが。
でも言ったところで聞いてはくれないだろうね。
とても悲しかったよ。
「……お気持ちだけもらっておきますね」
モーレもふたりの妹の暴走っぷりに乾いた笑い声をあげていた。
笑いながらも念話で「うちの愚妹どもがごめんなさい」と謝ってきていた。
まぁ、うん。姉妹仲がいいのはいいことだとだけ答えておいた。
「マスター。避妊はするべきですが、今回ばかりはお好きなように食い散らかして──」
「あんたはなにを言っているんだよ!?」
いつの間にか執務室にいたアルーサさんまでもが暴走していた。
普段冷静な分、暴走したら妹たちよりも酷かった。というか生々しいわ! もうちょいオブラートに包めと言いたくなったよ。
「……重ねて愚弟もごめんなさい」
最終的には三人ごと執務室から追い出したあとに、モーレが土下座をしていた。
……お姉さんって大変なんだなとしみじみと思ったのは言うまでもない。
「誕生日プレゼントはもう買ったのでしょう?」
「うん。でもほかにもなにかしてあげたくて」
「では、主様だけではなく、ほかの皆様の話も聞くべきですね。特に私とプーレ殿と同じ立場の方々に。主様だけでお考えになるよりかは建設的になるかと」
「……なるほど。じゃあ早速──」
机から立ち上がろうとしたけど、それよりも早くモーレに無理やり押さえ込まれた。
「……休憩時間にお願い致しますね?」
「ういっす」
モーレが笑っていた。笑っていたけど、とても怖かった。
そうして俺は休憩時間になるまでは仕事に集中することになったんだ。
新年一発目から嫁に尻を敷かれてしまう香恋でした。
続きは四時になります。
新作始めました。
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