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Act1-9 ああ、テンプレですね

PVが18000突破しました。

ついにベジータ超えです。

いつもありがとうございます。


 しかし悲痛な叫びが響いたところで、世論を変えることはできず、ギルドマスターが秘書ちゃんと大人になった(意味深)とか、白昼でギルドマスターが秘書ちゃんを部屋までお持ち帰りしたとか、不名誉な噂が流れてしまった。


 そのうえアルトリアもまた噂話を加速させるようなことを言ってくれた。


「あの日ですか? あの日は、優しくして(部屋のベッドに寝かせて)もらえました」


 はにかみながら、幸せそうに笑うアルトリア。ただ言葉をもっと選んでほしかった。その言い方は確実に誤解を招くものだった。


 案の定、うちのギルドに常駐してくれている冒険者さんたちからは、子供はいつだとか、名前をつける際には力を貸すとか、式はいつ挙げるんだとか、そういうからかいを受けることになってしまった。


「だから、俺は女だっつーの!」


 からかわれるたびに、俺はそう叫んだ。


 まったく意味はなかったけれど、叫ばずにはいられなかった。


 その間にアルトリアは徐々に変わっていた。


 従順な女の子から、だめな亭主を叱り、導く良妻賢母にとクラスチェンジしていった。


 どうも冒険者のお姉さま方が、余計なことをアルトリアに吹き込んでくれたおかげらしい。


「ギルマスのようなタイプは、押しが強いほうがいいのよ」


「押して押して押しまくれよ。じゃないとああいうタイプはいつまでも、なぁなぁで済ませてしまうからね」


「あと、ああいうタイプは詰めが甘いところがあるから、アルトリアちゃんが目の届かない場所をフォローしておく必要があるわ」


「亭主に従順? いつの時代よ、それ。いまはだめな亭主を引っ張っていく強い妻が必要なのよ。あなたであれば、きっとできるわ、アルトリアちゃん。頑張ってね」


 などなど、冒険者のお姉さま方は日ごろの鬱憤があるのか、アルトリアにいらぬアドバイスを与えていた。アルトリアは素直だから、そんなアドバイスをもきっちりと実践してしまった。


 その結果、きれいでかわいかったアルトリアが、いまや俺の尻を蹴飛ばすバイオレンスな美少女になってしまったんだ。


「どこで育て方を間違えて」


「あなたに育てられた憶えはありません」


 きっぱりと切り捨てられる俺。そんな俺を見て、アルトリアの腕の中にいるシリウスは「こいつ、本当にだめだなぁ」という風に見つめてくれていた。


 嫁と子供に虐げられる旦那さんって、きっとこういう感じなんだろうな。首都につながる橋の下から吹き上がる風が、いつもよりも冷たく感じられるぜ。


「こんばんは、門番さん」


 アルトリアの後を追いかけていくうちに、首都の正門にたどり着いた。


 正門前にいる門番さんにアルトリアが、いつものようにお辞儀をする。門番さんは、略式の敬礼をしてくれた。


「ご苦労様です。「すけひと」のマスターと秘書殿」


 門番さんはにこやかに笑っていた。それがどういう意味での笑みなのかは、考えたくない。ちなみに「すけひと」というのは、うちのギルドの屋号だった。


 単に冒険者ギルドでもよかったのだけど、それだけだと齟齬が出てしまいそうだとククルさんにも言われたので、「エンヴィー」で出稼ぎしている間に、ラースさんにお願いして、屋号をつけさせてもらったんだ。その屋号こそが「すけひと」だ。


「すけひと」は俺の実家が経営するなんでも屋の屋号だった。


 もっともなんでも屋とは言っているけれど、いまは地域の清掃をメインにしている。


 ひいじいちゃんが社長だったころまでは、なんでも屋として仕事をしていたのだそうだけど、じいちゃんに代替わりしてから、仕事内容を変えたそうだ。


 ひいじいちゃんのころまでは、なんでも屋の仕事は多かったようだけど、時代が移り変わるにつれて、オールマイティーに仕事を請けるよりかは、専業化したほうが生き残りやすいという判断だったみたい。


 たしかに幅広くいろんな仕事に手を出し、中途半端な結果になるよりかは、一点集中でちゃんとした結果を残すほうがいいとも言える。


 だけど、専業化っていうのは、博打なところもあるので、それまで同様になんでも屋としての仕事も請け負うことにした。


 ただ清掃メインにする前よりかは、そういう仕事を請け負わなくはなった。


 あくまでもなんでも屋の仕事は、お得意様だけ。つまり地域の皆さんのものだけに限る。


 それ以外は基本は清掃業になっている。実際清掃部門と地域部門に分けて、いまも経営している、はずだ。


 というのも俺は清掃部門に所属していない。


 俺の所属は、地域部門。つまりはなんでも屋部門として、俺は活動していたというわけ。


 俺が着ている黒のつなぎも、地域部門の証だった。もっとも俺は地域部門でも下っ端なんだけど。


 基本的にうちは、家族経営の会社だから、親族以外の社員はそんなにはいなかった。


 まぁ、兄貴たちの友人さん方で、就職できていない人の駆け込み寺になってはいるが、それでもそこまで多くはない。誰でも彼でも受け入れていたら、逆にうちが潰れてしまう。


 一番の高コストは人件費なんだ。


 正社員をひとり雇うだけで、数十万もの給料という名のコストがかかる。


 それが十人となれば、最低で数百万。


 そこに各種税金や交通費などの諸経費も加わると、一ヶ月だけで何百万にもなってしまう。年間だと何千万という単位になる。つまり最低でもそれだけの金を稼がないといけなくなってしまう。


 でも、どんなに頑張っても、毎年そんなに稼ぐことはそうたやすいことじゃない。


 だからこそのコストカットをし、少しでも利潤を上げる。


 利潤を上げやすい方法としては、人件費を削るというのが、一番手っ取り早いやり方ではある。


 でも、それをするのは、人情的にしのばれる。


 だからこそ経営者は、みんな頭を抱えながら、少しでもコストを少なくしようと努力している。


 あくまでも中小企業の場合はだけど。あ、でも大企業も似たようなものなのかな。


 とにかくうちの親父も、経営者としての例に漏れず、いつも机にかじりつきながら、あーでもない、こーでもないと唸っていた。


 唸りながらも、俺たち子供の面倒も見てくれていたんだから、本当に親父には頭があがらない。


 そしていま俺もその親父と同じ立場になっていた。


 いまはまだ親父ほど苦労していないし、いろいろと自由にやっているけれど、そのうち、親父のように苦労することになるだろう。このまますんなりと星金貨一千枚を稼げるとは思えなかった。ある意味では、すでに苦労させられているとも言えるけれど。


 冒険者たちだって、いつまでうちのギルドを利用してくれるかもわからない。


 いまは珍しがって、利用してくれているけれど、彼らにとって不利益になるようなことがあれば、すぐに消えてしまうだろうね。ククルさんは、そうならないように、常に注意しろと言ってくれていた。


 実際、いまのところ、俺の独断で依頼を終わらせてしまっているのが、一番まずいことだった。


 その分、きっちりと補填はしている(主に俺のポケットマネーから)が、いまの調子のままだと、補填金だけで、支度金を使い切ってしまいかねない。


 もちろん、魔物の素材を買い取り、その素材を流通させてはいるけれど、それだって「ラース」内の商人にはあまりいい顔はされていない。


 無理もない。商人たちにとっては、ぽっと出の小娘が魔物の素材を取り仕切るようになったっていう印象を持たれているだろうからね。


 そのうえ、その小娘は竜王陛下に目をかけてもらっているというのも、商人たちにとっては面白くないことだろう。


 基本的に商人たちは、その国や街のトップの御用商人を目指すもの。


 特にこの「竜の王国」は「魔大陸」の中央に位置するだけあり、「魔大陸」中の特産品が集まりやすいため、どの国よりも御用商人を目指す商人は多くなる。


 もしくは、少しでも竜王陛下に気に入られたいと思っているはずだ。


 御用商人になれずとも、名前を覚えていてもらうだけでも、なにかあれば、大きなビジネスチャンスになるかもしれないのだから。だというの、その竜王陛下がぽっと出の小娘を気に入ってしまった。


 どう考えても、商人たちは俺を疎ましく見ているだろう。


 ただ俺は屋号をつけてはいるが、一応は冒険者ギルドのマスターだからこそ、商人たちは表立った行動はしてこない。


 けれど、見えないところで嫌がらせを受けてはいた。たとえば──。


「なんだ、なんだ? この国の門番は「混ざり者」なんぞに丁寧に挨拶しやがるのか?」


 ああ、テンプレだ。振り返ると、そこにはどう見ても堅気には見えない、そっち系のお兄さん方が立っていた。

続きは二十時です。

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