Act9-34 蛇の模様
三日目&大晦日更新です。
まずは一話目となります。
シャワーの音が聞こえてくる。
背後から聞こえてくる音をぼんやりと聞きながら、ベッドの上で体育座りをする俺。
なにをしているのか? 俺自身よくわからないよ。
というか、なぜにこんなことになっているのかがさっぱりなんですが?
えっとどうして俺とプーレはこんなところに来ているんですかね?
ちょっと意味がわからないのですよ。
いや、たしかにデートっぽいよ?
最後にこういうところに来るというデートもありと言えばありかもしれない。……風情さは欠片もないけれども。
そう、こんなところに連れ込まれたことにはなんの風情もない。
途中までは買い出しという名のデートをしていたはずだったのに。
あれもデートらしき風情さはかけらもなかったことではあったけれど、あくまでもデートと言えなくもないことだった。
でもいまよりかはデートっぽさはあったと思うんだよね、少なくともいまよりかは、だ。
いや、でもこういうデートもありと言えばありですよ?
でなければこういう施設が存在する理由がないもの。
しかしだ。なぜ俺はここにプーレと一緒に来ているんだろうね?
やっぱりいまいち意味がわからないよ。
だからと言って、プーレと一緒なのが嫌というわけじゃない。
実際「プライド」にあった同じ施設も利用した。
というかそこで初めてプーレと重なったもの。……いま思えば、あのときの俺はなにを考えていたのやら。
偽物だとはわかっていなかったとはいえ、希望に「アルトリアを抱け」と言われたのに、なぜにプーレに手を出したのやら。
……もしかしたら当時から俺はあの希望に違和感を覚えていたのかもしれない。
そしてその違和感から目を反らし続けていただけだったのかもしれない。
アルトリアではなく、プーレに手を出したのは俺なりの意趣返しだったのかな? そうだとしたら、俺って最低だな。
意趣返しのためだけにプーレを穢してしまった。
どう考えても褒められることじゃない。
でもその褒められないことを俺はやらかしてしまった。どう考えても最低だな。
そんなプーレとあのときのことを思い出せる場所にいる。
状況はあのときとは真逆だ。あのときは俺が誘った。
でも今回はプーレに連れ込まれた。
状況は真逆。けれど行うことはあのときと同じ。
いや、状況が同じだからと言って、また同じことをしなきゃいけないわけじゃない。
そもそも買い出しで買ったものの中には生ものもあるから、早めに冷蔵しないといけないんだ。こんなところで油を売っている暇はない。さっさと帰って──。
「……お待たせしましたのです」
ドアが開く音が聞こえた。思わず体が跳ね上がった。
でもここは冷静になってプーレを説得するべきだ。
いろいろと手荷物があるのに、こんなところにいたら買ったものが無駄になる。
そうだ。ここは年上でかつ旦那様である俺がプーレを説得するべきであって──。
「ぷ、プーレ! こ、こんなことをしている場合ではないと思うんだよね」
「……こんなこと、ですか?」
プーレが不思議そうにしている。
いつものように首を傾げているのだろうけれど、顔を俯かせている俺にはプーレの顏など見えない。
ただ俯いた状態でもプーレがバスローブを着ていることだけはわかっていた。プーレがその気なのも。なぜかその気になっていることもわかっていた。
「そ、そうだよ! こんなことをしている場合じゃないと思うんだよ。買ったものの中には冷蔵しておかないとまずいものだってあるし」
「「旦那様」のアイテムボックスに凍らせて保存させてもらいました」
「……いや、それはそうだけどね? ほ、ほら、それ以外にも手荷物もあるし」
「それも「旦那様」のアイテムボックスにしまわせていただきました」
「え、えっと、ほら買うものだってまだあるし」
「もう全部買いましたよ?」
……い、いかん。すべて返されたぞ。これ以上なんて言えばいいんだろう? というかこれ以上言い募るとプーレを傷付けかねない。ど、どうする俺!?
「……「旦那様」がなにを危惧されているのかはわかりません。けれど私は「旦那様」に知ってほしくなったのですよ」
「え?」
知ってほしいこと? なんのことだろう? 俺が顏をあげると同時にプーレがバスローブの結び目を解いた。
「……なに、それ?」
バスローブの下には、プーレの左胸に黒い蛇が、左胸をほぼ覆うようにして巻き付いた蛇のような模様が刻み込まれていたんだ。
三日目は一話目からクライマックスとなりました。
続きは四時になります。




