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Act9-32 タラシとデートと恋香の精神崩壊←

 本日五話目です。

 いわゆる壁ドン、いや、壁トン回ですね←

「プーレ? どうしたの?」


 執務室に入ってきたのはプーレだった。


 プーレは普段あまり執務室には来ない。


 というか執務室に来る余裕がないんだよね。


 スイーツ担当のプーレは朝から晩まで厨房に入りっぱなしだもの。


 プーレの作るスイーツは美味しいからうちの食堂は近隣住民や近くにあるお店の店員さんが食べにくるほどだ。


 そのプーレを数か月間、連れ回していたんだから、相当に恨まれていた可能性は高い。


 もっともプーレのお母さんであり、凄腕のパティシエであるプラムさんがいたから問題はないんだろうけれど。


 というかプラムさんからプーレを連れて行っていいと言われていたから、こうして連れ回していたんだけど、「狼の王国」だけにするはずが、気づいたら三国を連れ回すことになったのだから、反省するべきだね。


「あ、はい。その、ですね。お母さんに買い出しを頼まれたのです。でも、ちょっと量が多くて、ですね。だから、その」


 プーレは申し訳なさそうに、でも期待のこもった目を向けてくれる。なにが言いたいのかは聞くまでもない。


「バカだなぁ」


「あ、はい。やっぱりダメですよね。ごめんなさい」


「違うよ、プーレ」


「え? ふ、ふわわわ!?」


 つい口にしてしまった言葉で、プーレが俯いてしまった。どうやら勘違いしてしまったようだ。


 いや、勘違いするようなことを言った俺が悪いか。


 俯いているプーレにと近づき、頬を撫でてあげた。


 頬を撫でたことでプーレは俺がすぐそばにいたことにようやく気づいたみたいで顏を真っ赤にして慌ててしまう。


「バカだなぁと言ったのは、そんなことで頼るなってことじゃないよ。もっと気楽に言っていいって意味で言ったんだよ」


「え、で、でも「旦那様」はギルドマスターであって」


「そうだね。だけど、同時に俺は君の旦那だもの。だから変に気遣う必要はないよ。というか、帰ってくるまでそんな気遣いなんてしなかっただろう?」


 そういまさらそんな気遣いなんてする必要はなかった。


 というか、「禁足地」で「気遣え」と言ってきたのに、帰って来たら掌返しをするのはどうかと思うけどね。


 小心者なところがあるプーレらしいと言えばらしいんだけどね。


「で、でもあれは旅の途中でしたから。ここは私の職場であって、「旦那様」は「旦那様」ですけど、上司でもあるから」


「そうだね。でも俺は上司であるよりも、プーレの「旦那様」でありたいよ。だから気兼ねなく言っていいんだよ。それにせっかくプーレが勇気を出して誘ってくれたデートを無碍にするつもりはないもの」


「は、はぅ~」


 プーレが顏を俯かせてしまう。やっぱりプーレはかわいいなと思う。


 ひとり占めにしたくて、そっと抱きしめながらポンポンと頭を撫でてあげた。プーレの耳が真っ赤になった。


「耳真っ赤だね? かわいい」


「からかわないでほしいのです」


「うん? からかってなんていないよ? だってプーレは実際にかわいいよ? こうして抱きしめていると胸がどきどきってするし」


「う、うぅぅ~、わ、私の胸の方がドキドキとしてわかりません」


「あははは、そっか。かわいいね」


「う、うぅ~。今日はタラシモードなのですよぉ~」


 プーレが涙目になって見上げてくる。……理性的にちょっぴり辛いな。って、いかん、いかん。昼間からムラムラすんなよ、俺!


「……レンゲ殿。これじゃ。この余裕がそなたにはないのじゃよ」


『う、うぅ~。た、たしかにこの余裕は私にはない、ですね。くぅ~!』


 なにやらジョン爺さんと恋香がなにか言っている。でもいま大事なのはプーレだった。


「ってなわけで、ちょっくらデートしてくるよ」


「で、デートじゃなくて、買い出しなのですよ」


「うん? デートのついでにすればいいよ」


「か、買い出しがメインなのです!」


「そうだねぇ~」


「き、聞いておられるのですか、「旦那様」」


 プーレが真っ赤になりながら言い募っているけれど、優しく壁においやってから顔をより近づけて耳元で囁いた。


「デート、行こうか?」


「は、はい、なのです」


 見ればプーレは目をぐるぐると回していた。


 そういうところもかわいいなと思ったけれど、あえて言わなかった。


 言ったら倒れてしまいそうで怖かったし。それに──。


「見事なタラシじゃの」


『なんで、なんで私はぁぁぁぁーっ!』


 ジョン爺さんと恋香に聞かれるのが嫌だったというのもあった。


 特に恋香。これ以上聞かれると恋香の精神が崩壊しそうな気がしたんだよね。


 まぁ、いまも軽く崩壊しかけている気がするけれど。


『う、うわぁぁぁぁーん! おねえちゃんのばがぁぁぁぁぁ!』


 恋香が泣きながらまたドアを閉めてしまった。


 ……相変わらず手が込んでいるね、あいつは。


 まぁ、これで邪魔者もいなくなったことだし、デートしに行くとしようか。


 そうして俺は気兼ねなくプーレとのデートへと向かったんだ。

 ……まぁ、うん。香恋はもう完全に後戻りできないほどにタラシになりましたね←しみじみ

 続きは二十時になります。

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