Act9-31 恋香の魂の絶叫
本日四話目です。
恋香との舌戦は長丁場になった。
なにせ今日の恋香はいつもになく饒舌に俺に抗ってきたからね。
いつもであれば、「おねえちゃんのばかぁぁぁ」とか言ってドアを閉めるというのに、今日にかぎってはなかなか諦めなかったもの。
『今日という今日こそはあなたを打ち倒して、NTRなのですよ!』
「ふざけんな、ボケェェェェーっ!」
恒例のNTRと言ってくれた脳内ピンクに今日も俺は叫ばされてしまった。
なんでこいつはことあるごとにNTRと言いたがるんだ?
そもそも人の嫁を寝取ろうとするその思考がまずありえないんですけど?
というかなぜに寝取りたがるんだか。意味がわからないよ。
『ひとりくらいくれたっていいでしょう!? あなたいっぱい嫁がいるんだから!』
「だからと言って嫁をやる旦那がどこにいるんだよ、ドアホ!」
たしかに嫁は何人もいるけれど、物ではないんだからあげられるわけがない。
そもそも俺は嫁ズを物扱いする気なんてないもの。
ひとりひとりタイプが違うけれど、そういうところもまた愛おしいのだから。
そんな嫁を手放すことなんてしたくないもの。……完全に状況がハーレムだけれど、俺自身ハーレムを作る気なんてなかったんだ。
ただ気づいたらこうなっていたからね。状況って怖いよね。
『ならせめて嫁の作り方を教えてくださいよ! どうしてあなたはあんな簡単に嫁を作れるんですか!? というかなんでみんなあなたに惚れてしまうんですか!? どうして私のことを好きになってくれないんですかぁぁぁぁ』
「ちょ、ちょっとガチ泣きすんなし!」
まさかのガチ泣きをされてしまった。
恋香は泣きながらダンダンと地面を叩いているようだった。
まぁ、地面と書いて俺の脳内と読むんだけども。
……こいつ俺の体だからと言って、一切手加減してねえよな?
恋香らしいと言えば恋香らしいことではあるんだけども。
『余計なことは言わずに、教えてよぉぉぉ!』
「……なんでそんな魂込めて叫べるんっすか、恋香さん」
恋香の嘆きは魂がこもっていた。どうやらよっぽどモテたいようだ。
……なんとなくだけどアルーサさんと気が合いそうだなと思う。
とはいえ、だ。好きになられる方法なんて言われてもなぁ。
答えようがないんだよね。だって俺そういうつもりなんてまるでないんだもの。
「えっと、ティアリカの経緯を見て知っているだろうけれど、俺ティアリカを落とそうとはしていなかっただろう? なんというか成り行きというか、気づいたら、まぁ、うん」
『ひっく。なんですか? じゃあモテ方がわからないと言うんですか?』
「……ぶっちゃけるとそういうしかないかな?」
『ふざけるなぁぁぁぁーっ!』
恋香が再び叫んだ。まぁ、そうなるなとは思っていたけどね。でもいくら叫ばれてもこればっかりはどうしようもないと言いますか。
『じゃあなんですか!? あなたはなにもしなくても女性にモテてしまうということですか!? このリア充野郎!』
「……リア充と言っていいかどうかは知らないけれど、そういうことになるのかな?」
『ふざけるなぁぁぁぁ!』
恋香がまた叫んだ。魂こもった絶叫だった。でもいくら魂を込められてもわからないものはわからないのだからどうしようもない。
「……レンゲ殿はがつがつとしすぎだと思うがのぅ。もう少しこう適切な距離を測りながらじゃな」
『たとえばどういうことですか? ジョン殿』
「そうさのぅ」
ジョン爺さんが腕を組みつつ、恋香への返答を考えていた、そのときだった。
「し、失礼しますです」
ドアがノックされた。入っていいよと声を掛けるとプーレが緊張した様子で執務室にと入って来たんだ。
恋香と書いて「モテない人」とも読む内容でした←
あ、ちなみに私もモテないのであしからず←トオイメ
続きは十六時になります。




