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Act9-28 水入らず

 更新祭り二日目です。

 まずは一話目となります。

 モーレがようやくアルーサさんたちと再会した。


 普段冷静なアルーサさんやしっかり者のミーリンさんまでもが泣きながらモーレに抱きついていた。


 ……モルンさんが泣いてしまうのはだいたい予想できてはいたけどね。


 モルンさんには失礼かもしれないけど、モーレの遺族たちの中で一番泣き虫なのはモルンさんというイメージがあった。末っ子だし。


 末っ子だからというのは、世にいる末っ子さんには失礼かもしれないけども、俺を含めて末っ子というのは少し泣き虫なイメージがある。実際俺も泣き虫だからね。


 とはいえ、モルンさんが普段から泣いているわけじゃない。


 ただ弱みを上ふたりよりも見せやすいというだけ。


 だからこそ、モルンさんは泣くだろうなと思っていたんだ。


 そしてそれは予想通りだった。


 モーレは仰向けになりながら、モルンさんたちを力いっぱいに抱き締めていた。


 モーレの目尻には涙が溜まっている。笑いながら泣いていた。


「あんたたち、泣き虫になったね」


「おねえちゃんだってないているもの」


「そうだよ、姉さんが一番泣いている」


「お姉ちゃんが一番の泣き虫だよ」


「……うん。たしかにそうだね。私が一番の泣き虫かな、ははは」


 モーレはそう言ってまた笑った。


 生前は一番体が小さかった。


 でもいまはミーリンさんよりも体は大きかった。男性であるアルーサさんと同じくらいはある。


 生前ではああして弟妹たちを抱き締めることはできなかったはず。


 でもいまは力いっぱいに抱き締めることができる。


 それが嬉しいのかな。


 モーレはモルンさんたちが泣き止んでも三人を抱き締めていた。目尻に涙を溜めながらただ笑っていた。


「やっぱりお姉ちゃんが一番の泣き虫さんだね」


 ついには末っ子のモルンさんにからかわれてしまった。


 いや、モルンさんだけじゃない。ミーリンさんもアルーサさんもここぞとばかりにモーレをからかっていた。


『騒がしいですねぇ~』


『そう言うなよ』


『……ふふふ、少し離れましょうか。静かなところに行きたいですし』


『そうだな』


 恋香が皮肉めいたことを言っている。けどこいつは素直じゃないからね。要は水入らずにさせてあげましょうということだ。


『ふふふ』


『なんですか、急に笑って?』


『素直じゃないよな、って思っただけだよ』


 そう、恋香はまったく素直じゃない。素直に言えばいいだけなのに、憎まれ口をたたくんだから。


 まぁ、モーレは恋香が素直じゃないことを知っているから、たとえ口にしていたところで特になんとも思われなかっただろうね。


 もっともモルンさんたちは恋香のことを知らないから、下手したら俺が怒られかねない。


 だけど普段の恋香であれば、俺を追い込むためにあえて口に出していただろう。それが口には出さずに念話で言ったということはそういうことだろう。


『私は素直ですよーだ!』


『はいはい』


『はいは一回でいいんです!』


 図星を突かれて恋香がむきになっていた。むきになった恋香を適当に相手しながら俺は中庭を後にした。


『ありがとうね、「旦那様」』


 モーレが念話でお礼を言ってくれた。顔だけで振り返るとモーレが小さく手を振っていた。


 気にしないでという意味合いで手を振り返して中庭を後にしたんだ。

 続きは四時になります。

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