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Act9-24 伝えるべき言葉

 本日三話目です。

 アルーサさんがぶつぶつと呪詛を口にしていた。


 どうやらアルーサさんのモテなさはなにも変わらないようだ。


 アルーサさんはわりと美形さんだし、性格も悪いわけじゃないし、ちゃんとした職にも就いているし、それなりに高収入だから、わりとモテそうな気がするんだけどなぁ。


『アルーサは、モテないわけじゃないんだよ? ただ、あの子はなんというか、仲はよくなれるの。けど、性別を越えた親友になるのが精一杯というか』


 モーレはなんとも言えない感じで、アルーサさんの恋愛についてを教えてくれた。


『つまり友達で終わってしまうタイプの人ってこと?』


『……ありていに言えば、ね』


 そっと顔を背けるモーレだけど、ありていに言えばじゃなく、事実をそのまま口にしているような気がするよ。


 ……しかしアルーサさんって、友達で終わっちゃうタイプなんだ。


「いい人なんだけど、恋愛には発展しない」とか言われたことがありそうな気がするよ。


『……お願いだから言わないであげてね? 地味にトラウマになっているからそれ』


『……マジで言われたことがあるんだ?』


『……子供の頃に、ね』


 モーレがまた顔を背けた。


 どうしよう。そんなカミングアウトなんてされたらアルーサさんと顔を合わせられないんだけど、ポロっと言ってしまいそうで怖いよ。


「どうしました、マスター?」


「え、い、いや別になにも?」


「……そうですか? ならいいです。どうしたら私もマスターみたいに嫁ができるんしょうかね?」


 アルーサさんは遠くを見つめていた。


 その姿からは哀愁が漂っていた。目頭が熱くなってしまう。


 でもひとつ言いたいことがあるんだよね。


「別に俺は嫁を作ろうとはしていないんですけど」


 そう俺は別に嫁を作ろうなんて思っちゃいない。


 ただ単に嫁が増えてしまうだけなんだ。


 気付いたときにはなぜか嫁を迎えてしまっているだけで、みずから嫁を作ろうとはしていないんだ。


 だからアルーサさんに対してなんのアドバイスをしてあげることはできない。


「ならなんでまたきれいどころがふたりと娘さんがいらっしゃるんですか!? いったいいつ仕込まれたんですか!?」


 しかしアルーサさんは納得してくれず、鬼気迫るお顔で叫ばれるアルーサさん。ぶっちゃけ怖い。


 でもいまのアルーサさんにはなにを言っても通じそうにはなさそうだった。


「……わふぅ。ぱぱをいじめちゃダメなの。羨ましいからっていじめはダメなの、モテないおじさん」


 カティが無垢だけど、無慈悲な一撃を放ってしまった。


 その一撃がぐさりと突き刺さる音がはっきりと聞こえた。恐る恐るとアルーサさんを見やると白目を剥いていた。


 ……子供特有の残酷さの餌食になってしまったようだ。


 静かにアルーサさんに合掌しつつ、ほかの執行部の面々と挨拶をした。


 特別顧問であるジョン爺さんにはからかわれてしまったけども、どうにか帰還の挨拶はできた。


 これでまたいつも通りに仕事をと思っていたのだけど──。


「アルーサ殿、ミーリン殿、モルン殿、お話がありますので中庭にまでご足労願えますか?」


 ──モーレが不意に弟妹である三人を呼んだ。なにを言おうとしているのかは考えるまでもなかった。


「エレーン。俺も着いて行くよ」


「……無用なご心配ではありますが、お願い致します」


 モーレは小さなため息を吐いていた。


 けど頷いてくれた。


『ありがとう、カレンちゃん』


 念話でお礼を言われた。気にしないでいいと返事をしてから俺とモーレはアルーサさんたちと一緒に中庭へと向かったんだ。

 続きは十二時になります。

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