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Act9-22 研鑽は誰がために~命を賭して~

 本日から更新祭りその二を始めます。

 今日から六日間連続での複数更新となります。

 まずは一話目です。

 シルバーウルフに進化してから、私の鍛練はより過酷なものになった。


 一のの鍛練は魔法のみの模擬戦へと変わった。


 いままで捌ききるだけだったのが、私も魔法を使って一のを攻撃するようになった。


 攻撃するようになったといっても私程度の攻撃なんて一のにとっては攻撃にすらならなかった。


 模擬戦は一のに魔法を当てることが勝利条件だったけど、次に進化するまで私は結局魔法を当てることはできなかった。でも実力が勝る相手との戦い方はわかった。


 ニのと三のとの模擬戦も当然のように変わった。


 それまでふたりは竜の姿だったけど、人の姿になるようになった。竜の姿でいた方が強い気がしたけど、それが間違いであることにはすぐに気づかされた。


 竜の姿はたしかに強い。大きいということはそれだけ力強く、頑丈だということだから。


 でもその分巨体が災いして攻撃はどうしても大振りになるし、予備動作だって長くなる。攻撃自体が読みやすくなる。


 けれど人の姿は力強さと頑丈さは劣るけども、その分素早かった。攻撃の予備動作もほとんどないし、一撃一撃が連なっていた。


 そのうえで片方が竜の姿のままのときもあれば、両方とも人の姿のときもあり、もしくは人の姿と竜の姿を意図的に切り替えてくることもあったし、攻撃する瞬間に一部だけ竜のものにしてくることもあった。


 でもあのおかげで対人戦における戦い方を理解できた気がする。


 そして先代との鍛練はすでに言われていたとおりのものだった。


 無防備なパパを二のと三のが攻撃しようとするのを私はただ見ているだけだった。


 時にはノゾミママをいやらしく触ることもあった。


 でも二のと三のがなにをしようと動くことを禁じられていた私にはどうすることもできなかった。


 ただ見ていることしか私にはできなかった。


『耐えよ、継嗣。そなたの歩む道は耐える道だ。耐えて忍んでこそ、そなたはそなたが思う未来を手にできる。ゆえに耐えよ、継嗣』


 私は泣きながらその光景を見つめた。見つめることしかできなかった。


 でもあの日々があったからこそ、私は感情的に見えて、冷静であれている。


 ……あの人に対してはいくらか感情的になってしまうのは未熟だとは思うけども。


 そしてなによりも──。


『頑張ったね、シリウスちゃん』


 シルバーウルフになってからもばぁばは折りをみては会いに来てくれた。


 十日に一度くらいの割合だったけど、ばぁばに会える日が私を救ってくれた。


 休みのない鍛練における唯一の救いがばぁばだった。


 ばぁばに会うために、私はあの辛い日々を生き残れた。


 だから私はいまも私のままでいられているんだ。


 代償はあったけど、私は後悔なんてしていない。


 いまの私は、「「刻」の狼王」となったことを悔いてはいない。むしろ誇らしく思う。


 残り少ない日々だけどパパのために、そしてノゾミママたちのために私は残り少ない日々を生きよう。そう決めているんだ。


「シリウス?」


「シリウスおねえちゃん?」


 パパとカティの声。顔をあげるとふたりは私を見ていた。


 まぁカティはティアリカさんに抱っこしてもらっている形だけど。


 ……私はママたちにはああして抱っこしてもらえないから、抱っこしてもらえるカティは羨ましい。


 でも私はお姉ちゃんなんだ。妹を前にして羨ましいなんて言っていられない。


「なんでもないの。それよりも早く入ろう」


 私はふたりとティアリカさんを置いていく形でギルドの中へと入った。


 私の家であり、私の居場所。


 絶対に守ってみせる。そして必ずノゾミママを取り戻してみせる。


 この命を燃やし尽くしてでも絶対に取り戻す。決意を新たに私は一歩踏み出した。

 シリウスは終了です。

 続きは四時になります。

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