始まりの始まり
序章
「ごめんね」
雪が降り積もる夜その一言を最後に姉はいなくなった。
5年後、、、
東京都港署強行犯捜査第二係杉宮 璃伽
私は警察官になった。
あの日消えたお姉ちゃんを見つけるために。
「おーい杉宮早くしろ!」
「はい!すみません」
(バシッ)
「イッタァ」
「ったく毎度毎度遅いやつだな」
「遅いのはすいません。だからって頭叩くことないでしょ?」
「頭が重いから歩くのが遅いんだよ。だから優しーい先輩が軽くしてやってんじゃないか!」
「それはありがとうございます。…ん?何か遠回しにバカにしてません?」
「はっはっはっはー細かいことは気にするな。」
二人は事件現場に向かった。
「ハイ、現場到着。」
「廃工場ですね。」
「んー。」
「おはようございます。港署強行犯捜査第二係の桐嶋宏太です。」
「同じく強行犯捜査第二係の杉宮璃伽です。」
「はっ私はっ」
「あっと自己紹介良いんで被害者は?」
「あっっ、はっはい。被害者は20代後半の女性。所持品が無く身元はまだ分かって居ません。第一発見者はあちらの男性です。ここにゴミを捨てようとしていたら遺体が目についたらしいです。」
「20代後半?」
「はい、事件現場はあそこに見える廃工場と思われます。
鑑識が調べたところ出血の痕跡がありました。」
「あそこからここまで歩いてきたってことか?」
「恐らく」
「死因は?」
「腹部を刺された事による出血死です。」
「直ぐに死ねず苦しんだんでしょうね。」
「んっんっ、凶器は?」
「まだ見つかって居ません。鑑識の話では細いペン状の様な物で刺されていたとの事です。」
「争った形跡は?」
「現場周辺に争った形跡がありました。」
「遺体は?」
「今きます、、、おいっ!ちょっと待ってくれ!どうぞ」
(遺体の上のビニールシートを外した。)
(ガサッ)
宏太と璃伽は彼女の体をじっと見つめた。
「違った…」
そう璃伽が呟いた。
「あっ桐嶋先輩見てください。コートのボタンが外れてる。」
「んっ?取れてそのままだったんだろう。」
「でも引きちぎったような」
「お前は何でも気にしすぎ。 もういっていいですよ」
「えっちょっとまだ」
「いいから現場見に行くぞ!」
「っ!はい。」
璃伽は渋々宏太の後をついて行った
「こちらが現場です。」
「うぉー寒ぃー」
宏太は手に息を吐きながら言った。
「ここが殺害現場か。何だか不気味だな?」
そう言った後璃伽の応答がなかったため後ろを振り返ってみた
「んー無いかなぁ。」
(バシッ)
「イッタァ」
「何しとんのじゃ!」
「もう一々叩かなくても…」
「無視したお前が悪い!んで何してんの?」
「さっきのボタンがどうしても気になって」
「んなの有るわけねぇだろ!」
宏太はしゃがみこみながら歩き出した
「先輩?どうしたんですか?」
「なんだこれ?」
宏太の手平にはを一本の万年筆が乗っていた
その万年筆にY.Sのイニシャルが彫られていた
「万年筆?何でこんなとこに?…ん?Y.S?これお姉ちゃんの?」
(バシッ)
「イッタァー」
「勘違いするな!今回の被害者の名前思い出せ。」
「えっ?…あっ佐藤 葉子!イニシャルはY.Sですね。」
「そう。」
「鑑識にまわそう。何か出てくるかも知れない」
「はいっ」
難事件の始まり
初動捜査が終わり捜査室に戻ってきた
「何であんなとこに万年筆が落ちてたんでしょう?」
「被害者の佐藤葉子の私物だろ?」
「そうだとしても他の私物は一切無いのに万年筆だけが落ちてるって不自然ですよ」
「んーもみ合った時に落ちたとか?あのさ一つ聞いていいか?」
「はい?何ですか?」
「何であの万年筆のイニシャル見た時直ぐ姉ちゃんのって判断したんだ?」
「あれは…昔大学の入学祝いに私がプレゼントしたのにそっくりだったんです。」
「そうだったのか」
「良く考えればありえないのに私ってば焦っちゃって、すいませんでした。」
璃伽は宏太に頭を下げて謝った
(ゴンッ)
「イッター」
「バーカ!お前と何年組んでると思ってんだよ?」
「桐嶋先輩!ですよね?二年も一緒だと嫌なとこばっか見えてきて、最初はかっこいいと思ってたのに今じゃ親父に見えますもん!」
「なっなんだとぉ!!!言ったな!」
宏太が璃伽に飛びかかろうとした時
(コンコン)
誰かがドアをノックした
「どうぞー」
璃伽は招き入れた
「お待たせしました。現場に落ちていた万年筆の鑑定結果お持ちしました。」
「待ってたよー恭子ちゃーん!!」
宏太が書類を取ろうとしたその時
(バシッ)
横から璃伽が奪い取った
「うぉい!」
璃伽は宏太を無視し鑑定書類に目を通した
「血痕が付着していたんですか?」
「はい。拭き取った後が有りましたがルミノールで鑑定した結果、被害者の血液が検出されました。間違えなくあの万年筆が今回の凶器です、今遺体の形状と一致するか確認中です。」
(バァァンッ)
「桐嶋先輩!!!被害者の身元が割れました。」
勢い良く入って来たのは璃伽の同期の安達 優弥だった。
「うん、もう少し静かに入ってこようか?優弥君」
「はっすいません」
「で?」
「??何がですか?」
「フゥ〜、、、お前は何て入ってきたんだぁー」
宏太は怒鳴って言った
「あっそうだった!えー被害者は練馬区在住の佐藤 葉子さん26歳です。」
「身内は?居たのか?」
「父親が10年前に他界、それから母一人子一人で生きてきたみたいですが先月母親が病気で亡くなってます。他に身内は居ないみたいです」
「一人ぼっちか…長年一緒に支え合った母が急死、これは相当堪えたでしょうね」
「んー…杉宮。」
「??はい?」
「自宅行くぞ〜」
(バシッ)
宏太は璃伽の背中を叩いた
「っー!はい。」
捜査室に優弥一人残った
「桐嶋先輩慰めるの下手だなぁ」