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No.24 雲を突くような星の話

作者: 夜行 千尋

出されたお題を元に、一週間で書き上げてみよう企画第二十四弾!

今回のお題は「ギブアップ」「南」「作戦成功」


2/2 お題出される

2/6 なにも浮かんでない緊急事態

2/7 そのくせ友人に誘われオールのカラオケへ(ぉぃ

2/8 ぐったりしながらも友人'sとの会話からインスピレーションを得る。が、体力の限界で爆睡

2/9 疲れを引きづりながらやっとこ投稿


教訓:咄嗟の遠征でもその間に下書きぐらいは作る事。まる。


あとアイディアをくれた友人'sに感謝


 それは遥か昔、太陽がまだ赤ん坊の頃の話。星が瞬くことを月に教えていた頃ほど昔の話。

 大地を作る神と天空を作る神は、星の海に大地と天空を浮かべ、そこに自分たちの子供たちを住まわせることにした。自分たちは体が大きいため、直接住むことはできないが、自分体の子らがきっと良い世界を作ると信じて、彼らは子供たちを自分たちの血と皮と髪の毛と爪で作った。

 最初に生まれたのがウガイという女だった。ウガイはまず、両親に生み出してくれたことを感謝したが、すぐに生まれた事を悩み始めた。なぜなら彼女は一人だったから。

 このことに心を痛めた空の神が、自分の骨を使って新しい子供たちを作った。ウガイと対になるように男たちを作った。だが、ウガイほど完璧ではなかったため、すぐに死んでいってしまった。

 だがウガイは、その空の神の骨から生まれた者たちとの間に子をもうけた。子供たちは父親ほどすぐには死ななかった。かといってウガイほど丈夫で強靭でもなかった。だからこそ、今度はウガイが自分の骨と皮と血と髪の毛と爪とで、そこに食物と薬を生み出し、その命を子供たちに与えた。

 だから世界の最果てには、ウガイの亡骸が姿を変えた木がある。その木の実があれば、きっと幸せになれる。


 この話を聞いたのは、ウガイから数えて15番の目の世代、9番目の息子、パンタクトリだった。

 パンタクトリの兄たちはみな優秀で、狩りや芸事、武芸に優れて子宝にも恵まれた、良い父にして良い戦士たちだった。姉たちもまた裁縫に家事に農作業に優れ、良い母にして良い農家だった。だがパンタクトリだけは、みなより少々劣る末っ子として生を受けた。

 そのことを真っ先に理解したのはパンタクトリ自身だった。そのことが、パンタクトリが兄姉たちより優れた部分であることを彼自身は気づいていなかった。それどころか、彼の父が気づくより先にそれに気づき、彼はウガイの木の実を、家族の幸せのために探す旅に出ることを決心した。


 彼は父に、ウガイの木の実を探してくると言い、生まれた村を離れることを相談した。父は、それはそれはひどく心配したが、息子の事を想い、その旅路へのアドバイスを与えた。

 南へ向かう事。ただただひたすら、南へ向かい続けること。星が導くままに歩きつづけ、ひたすらに南をめざし、世界の最果てを目指せば、そこにウガイが木に成っているはずだ、と彼の曽祖父から聞いた話をパンタクトリにした。


 パンタクトリは、その日のうちに立つことにした。

 一番上の兄は無言で見送り、二番目の兄は自慢の靴を与えてくれた。三番目の兄は旅の心得を助言し、四番目の兄は彼の行く手にあるであろう困難を予言した。五番目の兄は道すがら食べられる食物に関する知識を授け、六番目の兄は道中取れるだろう薬の知識を授けた。

 姉たちもまた、神々への祈りをささげてくれた。一番目の姉は両親への感謝の心をとき、二番目の姉は温かな綿の入った服をくれた。三番目の姉は故郷の絵を描いてよこし、四番目の姉はウガイの木の絵を描いて渡した。五番目の姉は獣の骨で作った縫い針を与え、六番目の姉は石で作った小太刀を与えた。パンタクトリはそのことに心より感謝した。

 最後に母より、花飾りの造り方を教わり、彼は旅に出た。



 故郷より南の地を、またたく星々に尋ねながらパンタクトリは進んだ。


 彼の行く手に砂の怪物が立ちはだかり、彼の目を塞ごうとした。砂の怪物はパンタクトリを暗闇に落としたが、六番目の兄から授けられた知識により、道中の草から目を洗うための薬を造り、暗がりに囚われた己の目を洗い、砂の怪物の邪魔を凌いだ。

 だが、砂の魔物は渇きを持って、パンタクトリが歩く地面に食物を一切生やさなかった。これに困るであろうと魔物は考えたようだったが、五番目の兄から授けられた知識により、パンタクトリは草の根や渇きに強い蛇などを食べて飢えと渇きを凌いだ。

 砂の魔物はパンタクトリの機転や行動を褒め称え、彼を襲う事を止めた。そして同時に、彼にある魔法の知識を与えた。太陽の光を魚や蛇の鱗を半球形状にしたもので集め、枯れた葉に太陽の子供、火を生み出す魔法だ。これは大変危険なのものだと理解したパンタクトリは、この知識が使われることの無いように願いながら、砂の怪物にも感謝を述べてその場を後にした。


 更にパンタクトリが進むと、そこは大きな大きな湖だった。はるか世界の果てまで続くほどの大きな湖だったが、三番目の兄から授かった知識で、パンタクトリはイカダを作った。その際、六番目の姉がくれた小太刀もまた役にたち、また、イカダに帆を張るにも、五番目の姉から渡された縫い針が役に立った。


 パンタクトリは大きな大きな湖の上でも、星のまたたきに道を尋ねながら進んだ。


 パンタクトリは生まれて初めて、銀の大地を目にした。銀の土は冷たく、そこに居るだけで涼しく感じる、不思議な砂だった。だが次第に刺すような痛みを手足に覚えた。これが銀の砂の怪物だと気付くのに、パンタクトリは時間を多く必要とはしなかった。

 そして、たとえ銀の砂の怪物であろうと、二番目の兄から授けられた靴が有れば、足の痛みは軽くなり、また歩きはじめることができた。体に吹き付ける痛みを伴う風もまた、二番目の姉がくれた服が有れば、その痛みは無いも同然となった。

 だが、銀の砂の魔物は砂の魔物より厄介だった。その砂吹雪は、パンタクトリの体を痛めつけるだけではなく、昼を夜のように暗くし、夜もまた、星々の煌めきを隠してしまった。パンタクトリは方向が分からず、道に迷ってしまった。


 さしものパンタクトリも駄目かと思ったが、四番目の兄がこの事を予言していたため、パンタクトリは予言に従い、南ではなく近くにある山に駆けこんだ。

 山にはパンタクトリとは別の家族が居ることを、パンタクトリはこの時初めて知った。

 その家族はパンタクトリを警戒していたが、三番目の姉がくれた故郷の絵を見せると、パンタクトリの身元を知り、安心して出迎えてくれた。

 気立ての良い娘が、パンタクトリの世話をしてくれた。美しい娘で、パンタクトリはその娘が気になったが、パンタクトリはまだ旅の途中、その娘の事を脇に置いて、銀の砂の怪物について山の家族に聞いた。

 その家族曰く、銀の砂の魔物はこの地に昔から居て、太陽と月があと三十の交代を繰り返すまで、この地に居るという。だれも銀の砂の魔物には敵わない、奴が起こす風の痛みで、人間は体が動かなくなって死んでしまうのだと聞き、パンタクトリは考えた。

 銀の砂の魔物を何とかしなくてはいけない。だが、パンタクトリは戦いが苦手だ。それに、砂の魔物もそうだったが、剣の通じる相手ではない。

 どうにかならないかと考えていた時、銀の砂がパンタクトリの持つ手の、命の熱で水に変わることをパンタクトリは見つけた。

 そしてこの時、パンタクトリは、砂の魔物のくれた魔法の知恵を思い出した。さっそく、枯れた葉をかき集め、魚の鱗で集めた微かな太陽の光で火をつけた。それが消えきらぬうちに、二番目の姉がくれた服に火を移し、その火を大きくした。更にパンタクトリは、五番目と六番目の兄のくれた知識を使い、どうすれば火がより強くなるかを考え、動物の皮、そのしたにある白い筋肉を溶かした物に火をつけた。

 パンタクトリが増やした火は、瞬く間に銀の砂の怪物に対抗できるほどになり、ついには、銀の砂の怪物が居ても、その痛みを持つ風で人が死ぬことが無いようにまでなった。

 山に住む家族は感謝を述べ、彼に新しい服こしらえて渡した。


 パンタクトリはまた南をめざし進んでいく。銀の砂の魔物が居なければ、星のきらめきが彼を導いてくれる。そのことをパンタクトリは知っていた。


 だが、南の南の南まで行ったときのことだ。

 ついに四番目の姉が書いたウガイの木とそっくりな木を見つけたのだが、それは無数にあり、また星はパンタクトリを中心に周りだし、彼の行く道を教えなくなってしまった。こんなことは、四番目の兄の預言にもなかった。







 頭の良いパンタクトリは咄嗟に理解した。理解してしまった。そう、気づいてしまった。







 そして、ウガイの亡骸を探すことをあきらめた。




 パンタクトリはそのまま星が示す南を超えて、彼の頭が理解した世界を追って、彼は地の果てを通り越すことにした。

 そして、彼は、おのれの理解は正しかったとすぐに分かった。

 彼は“南”を通り越し、銀の砂に埋もれた地域を抜け、大きな大きな湖を渡り、砂が一面に広がる場所を抜け、彼は自分の故郷に帰って来た。

 そう、彼は理解したのだ。この世界に果ては無く、この世界が球形であるということを。ウガイは存在しないという事、いや、ウガイとは、自分の部族の脈々と継がれてきた血であるという事。その誇りであるという事。実とは家族であり、得るまでもなく自分たちは幸せであったこと。

 一番目の姉の言葉を想いだし、帰ってすぐに両親に感謝の心を述べた。また、パンタクトリの後ろから一番目の兄が現れた。どうやら、心配で最初から最後までついて来ていたらしい。

 父はパンタクトリを、大手を振って迎え入れ、母もまた暖かく迎え入れてくれた。

 そして何より、あの銀の砂の魔物に苦しめられていた山に住む家族が、パンタクトリが置いてきた三番目の姉の絵を持ってやってきていた。


 パンタクトリは、こうなるであろうことを予想していた両親に改めて感謝をし、母から教わった花飾りを持って、山の家族の娘に結婚を求めた。



 両親の作戦通り、パンタクトリは自分ための“ウガイの実”を手に入れた。




今回もまたわりとシンプルに出来ました


直前、友人とアステカの神々の話をしていたため、そこにネイティブの神話を掛け合わせたようなテイストで作りました

ぶっちゃけ、兄、姉の贈り物をかいてる最中に作品の全体像は決まった感じですね

それまでは「人間まっすぐ進もうとすると、利き足の方へ自然と曲がる! ということでパンタクトリは自然と線を描いて戻ってきていたのさ! ババーン!」って話にしようと思ってましたが

パンタクトリが思ったより聡明なキャラになったため、今回のような結果になりました

(考古学では、そういう天文学に優れた遊牧民族は、地動説や地球が球形であることを知っていたのではないか、と言われたりしています)


ちなみに

幾人かのお兄さんお姉さん、両親は『ウガイの木の実』が何なのか知っている。知っていて、可愛い末っ子に旅をさせた。という設定になっています

でも一番過保護なお兄ちゃんは終始隠れながら見守っていたご様子

このお兄ちゃんが一番すごい設定になってしまったのだが……大丈夫だろうか?(笑)



ここまでお読みいただき、ありがとうございました

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