ヤンデレジル
微妙に性描写があります、ご注意下さい。
何で、こんな事になってるんだろう、なんてぼんやりと考えてみても、答えは出ません。ただ分かる事は、私を抱き締める私の従者は、私を手放す気など更々ないという事です。
首に施された魔封じの輪は、相変わらず頑として外れる気配がありません。魔術を封じる手段はこれが一番確実なのは分かりますが、自分にされるとなると凄く不快でした。
魔力を無理矢理押し留めているせいで、熱が少しずつ溜まっているらしいですね。常人なら影響はないのでしょうが、私のような規格外には、辛い。
「……リズ様」
私の熱を別の原因によるものだと捉えているのか、包むようにホールドするジルは愛しそうに髪に頬擦りするだけ。調子が良くない上に男の力で押さえられているので、抵抗なんて出来ません。
嫌悪感とか、そういうのは湧かない辺りマシなのですが……じわじわと、恐怖が忍び寄って来て、どんどん胸の奥の希望を侵していくのです。
セシル君や父様が、助けに来てくれる。そんな希望、きっと叶いっこない。気絶させられて気付いたら何処かの森の奥、魔物避けがなされているらしい洋館に閉じ込められていたのです。夜中だったから、多分誰にも目撃されてないし。
食糧の問題で恐らく都から離れた、何処かの領地の近くに居るとは思うのですが……私に分かる訳がありません。
ジルの計画性が高い性格からして、足がなるべく着かないようにしている筈です。そう易々と見付けられる訳がないし、気取られたと察知したらまた場所を変えるのでしょう。
「……リズ様、私以外の事を考えていらっしゃいますか?」
ふと、私を抱き締める力が強まったと思ったら、耳元で少し強張ったような声を囁かれます。
「……どうか、私だけを見て下さい。私にはあなたしか居ません。……私だけを、見て下さい」
「ジル、」
「どうすれば私だけを見て頂けますか? 私の存在を体に刻み込めば、あなたは私だけを見て頂けますか?」
ぐるっと視界が回ったかと思えば、背中には家のものより固いマットの感触。手首は、私より一回り二回り程大きな掌がシーツに縫い付けています。
出会って、十年。……私が知る男の子は、私が知らない男になって、しまって。
降り注ぐ眼差しに紛れもない欲を孕んでいる事なんて、もう、分かりきっていました。
降り注いだのは眼差しだけではありません。激しくて狂おしいまでの愛情と、執拗な口付け。
食まれ、啄まれ、貪られ。
私の体験した事のない口付けを施されて、頭が酸欠でぼーっとしてしまうのを好機と捉えたらしいジルは簡単に私を剥きます。
武骨な指を露になった素肌に沿わせるジルはもう、優しいジルはではなくて、男としてのジル。唇の狙いを徐々に下に移していかれて、僅かに掠める度に体が焦れったさに震えてしまいます。
肌に赤い華を残しては、征服していくジル。全てが終わる頃には、ジルが触れていない場所などなくなるのでしょう。
「愛していますよ、リズ様。……どうか、私の手に収まって下さい」
熱と初めて体験するむず痒さに息を荒げる私に、ジルはうっとりとした眼差しで柔らかく囁きます。
拒否権は、ないのでしょう。それに、抵抗出来る程力もありません。
「……あなたは、私だけを見ていれば良い。リズ様は、私だけの、リズ様で居て下さい」
甘く、そして低く、愛とも枷とも執着とも狂気とも取れる囁きを落として、唇に噛み付かれました。
逃げられない、私は。
ならば、受け入れるしかないのでしょう。
指が下肢の付け根にある潤みをまさぐるのを感じながら、私は諦めたように身を投げ出してジルの好きなようにさせる事にしました。