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殿下といちゃいちゃ

 広々として明るい雰囲気の部屋を飾るのは、品がありながらも派手すぎない調度品。装飾過多は嫌らしく、質素とは違うけど適度に飾りのされた部屋は、本人の性格をよく表しています。

 弾力性に富んだ柔らかなベッドに腰掛け、背中にかかる重みと僅かな甘い匂いに少しだけ呼気を前に吐き出しました。


「……殿下」


 私を覆うように背後から抱き付く、私の大切な人。私は殿下の脚の間に腰掛けているのですが、まるでぬいぐるみか何かのように抱き締めては首筋に顔を埋めています。

 正直、ちょこっと擽ったいのですが、同時に暖かくてほんのり気持ちよさがあるし、それに殿下の気持ちも分からなくないから拒めません。

 成人してから陛下の執務をより手伝うようになってますし、とてもお忙しいのです。


「殿下」

「ユーリスだろう」

「……ユーリス様、お務めはどうなさったのですか」

「終わってリズを呼んでいるのだ」


 心配は杞憂だったらしいので良かったのですが、色々問題も発生しております。


「いやまあ良いですけど……未婚女性を部屋に連れ込むのはアウトかと」


 そう、私とでん……ユーリス様は、結婚はしていません。結婚しているなら確実に出入りはありますし、寧ろ世継ぎを私に授ける為に夜では出入り推奨されるのでしょう。

 でも、約束をしているとはいえ、私はただの一貴族の令嬢に過ぎません。


「責任は取るぞ。そもそも私の婚約者なら問題ない……事もないが、執務の合間を縫っての逢瀬くらい好きにさせて欲しいものだ」


 溜め息をついて私をぎゅうっと抱き締めるユーリス様。……あ、改めて言われると、何だか照れますね。婚約者って響きは。

 ユーリス様は些か疲れているご様子で、私で疲労回復しようとしているのか少し顔を向けただけで頬に口付けて来ます。ちゅ、と軽いキスなのにそれだけでふわっと体が浮くような感覚がしてしまって、でもそれをユーリス様に知られるのは気恥ずかしいです。だってユーリス様、そういう事言うと止まらなくなっちゃいますし。


 というか止まる気は殆どないらしく、肌に口付けを落としてはすりすりと頬擦りを繰り返していました。

 これが、疲れている証拠というのは私がよく知っております。ユーリス様は「疲れた」と私の前で口にする事は殆どありませんし、疲れていても頑張ろうとするお人です。

 周囲の期待を一身に背負って、弱い部分を気取らせないようにするユーリス様は凄いって思うけれど……私には、それが痩せ我慢にしか見えません。だからこそ、口には出さないものの私に甘えているのでしょう。


「……ユーリス様」

「何だ」

「もっと甘えても良いですよ? お疲れでしょう」


 ……私は、ユーリス様の伴侶となる事を決めているのです。

 なら、私が羽休めの場所にならなくてどうするというのですか。


 ユーリス様は私が割と淡白なのを知ってるから、べたべたしても無理強いはしませんしでれでれするとも思ってないでしょう。

 だからこそ、この申し出はユーリス様にとって意外なものらしく、澄んだ碧眼を覆う瞼を子供っぽく瞬きさせるのです。


「良いのか?」

「ユーリス様は結構強がりですからね、こういう時でないと気が休まらないでしょう」


 皆には内緒ですよ?

 そっと囁いて、私は一度立ち上がって殿下の隣に。それから靴を脱いで、そっとベッドに上がってはユーリス様をそっと抱き寄せます。


 微かに戸惑ったような気配には、柔らかな口付けを。

 更に困惑するユーリスさまを胸に誘って、ぽんぽんと背中を叩きます。


 状況からすれば、あまり宜しくないのかもしれません。未婚の男女が一つの寝台でくっつくなど、常識的に考えればアウトでしかありません。

 でも、殿下はしきたりを重んじる人でもあるから、決して手出しはされません。その証拠に、胸に顔を埋めて堪能しているらしいですけど、何もされませんから。


「未来の旦那様を労るのも、妻の役目でしょう?」

「……リズには敵わないな」


 少し恥じらうような声、顔は見られたくないらしく埋めたまま声をくぐもらせています。

 でも拒むつもりはないらしく腰に手を回して、ぎゅっと抱き付いては暫く胸部の実りを味わっていました。……ユーリス様は結構図太くいらっしゃるので、与えられた甘い誘惑を拒む事はないでしょうし。


 結構べたべたするのがお好きなユーリス様、漸く顔を上げたと思ったらいきなり口付けて来たので瞳をぱちくり。

 ん、と小さく喉を鳴らすと、小鳥が啄むように唇を食まれて、擽ったさにまた喉が震えます。音はなく、ただ角度を変えて幾度も唇を啄まれ、私もどんどん熱が頭に集まって来た自覚はあります。


 少しぽーっとした浮遊感のままに唇を食まれていると、ユーリス様はやっと唇を離してはちろりとご自分の唇を舐めます。

 ユーリス様は物語の王子様のような、如何にもといった金髪碧眼の美青年です。そんなユーリス様が頬を染めながらも舌なめずりで色香を撒き散らすものだから、私も更に顔が赤くなっていました。


「……充電出来ましたか?」

「まだ足りないな」

「……じゃあ、好きなだけ補充して下さいませ」


 甘えると決めたらとことん甘える人なのだと気付いたのも、つい最近の事。

 策士で狡猾でとても賢いユーリス様は、存外甘えん坊でいらっしゃいます。私限定、という所がミソですね。


 もっと、とちょっぴり欲張りなユーリス様に好き放題させながら、こういう所が可愛いんだよなあ、なんてひっそり口の端を吊り上げました。

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