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退魔士資格

~退魔局第2支部3階会議室~

 

 現在会議室は退魔士就職試験の面接場として、使用されている。


 退魔士は通常、専門の高校や大学を卒業することで、退魔士資格が与えられる。

 退魔士資格を取得した者は個人取扱禁止退魔生物の取扱を許可される。

 個人で退魔士の仕事をこなすものも少数ながら存在するが、普通は退魔局に就職して、組織で退魔を行う。

 退魔士資格を持っているとはいえ、必ず退魔局の就職試験に受かるとは限らない。

 筆記テストや面接はもちろんのこと、実技テストが存在する。その実技テストで全てが決まるといっても過言ではない。


 面接官5人に対して、受験者も5人という形式で面接を行っている。

 いつもは会議用机が並べられているが、それらは全て壁際へ寄せられており、人数分の椅子のみが並べられている。


 5人の面接官は全員、白地に黄色のラインが入ったコートを着ている。それがここでの制服であろう。それに対して受験者は、白と対照的な黒地に黄色いラインの入った制服を身に着けている。ズボンは面接官も受験生も同じ黒地に黄色のラインの仕様である。 



「なぜ僕だけ個室なんですか?」


 面接が行われている会議室の隣の準備室。そこに小さな机を間に向かい合う2人がいた。

 互いに、ソファに座っており、隣の会議室に聞こえない程度の声で会話していた。

 一人はハヤテで、マジックミラーになっている窓から面接の様子を観察している。囚人服を着替えて、今は受験生と同じく黒い制服を着ている。そのため、先まで囚人であったことなど微塵もない、優等生風な雰囲気をその短めの黒髪から感じられる。決して優等生ではないのだが……。


「ただ単に、筆記テストと面接が終わるのを待っているだけだ」

 ハヤテの質問に対して、ソファーに深く腰かけ、足を組み、手に持った雑誌に目を向けたままハヤテの質問に答える弓。弓は面接官と同じ、白いコートをずっと着ている。


 ハヤテはずっと右に顔を向けているが、面接の様子を見ている振りをしている。前に顔を向けてしまうと、スカートをはいているにもかかわらず、無防備に足を組んでいる弓の下着が見えそうになってしまうのだ。当然のことながら、目線はそちらへ行ってしまう。

 陶器のような白く細い美脚は、黒いスカートによって、より一層際立っている。男として気にするなというほうが無理である。

 

「僕は筆記テストや面接は受けなくて良いのですか?」

 相変わらず、ずっと右を向いたままのハヤト。

「君の退魔局への就職は決定されている。そんなものする必要がない。ただ、実技テストだけは受けてもらうがな」

「君を含む、受験者の戦闘データは記録しておきたいからな」

 やはり、弓も雑誌に目を向けたまま返答する。


 刑務所を後にして、そのまま第2支部に連れて来られたハヤトだが、いきなり就職試験を受けてもらうと弓に言われたのだ。そして、この準備室に入らされた。そして暫し待てと、一言。

 特に何かするでもなく、待ち続ける2人。  

「それにしても長いな」

 雑誌を読み終わったのか、弓は机の上に雑誌を置き、足を組みかえる。

「そういえば、実技テストではどんなことをするんですか?」

「う~んと、そうだな。危険度Eの悪魔ばかりが存在する醜木山で退魔をしてもらう予定だったと思うが」

「少し、レベルが高くありませんか?」

 ハヤテがそう尋ねると、弓は少しにやけて言った。

「それは、君にとってか? それとも、受験者にとってはの話か?」

「もちろん受験者にとってのことだろう?」

 ハヤテに返答させずに、弓は後者を選ぶ。

 ハヤテも当然、受験者にとってはレベルが高いという意味で言ったのだ。

 なぜなら、大学や高校卒業程度では危険度Fまでの悪魔の討伐しか教えられない。

 授業とは別に独自で鍛錬を積んでいなければ、危険度Eは厳しい。


 退魔科の専門高校に通っていなかったハヤテは普通、危険度Gの悪魔ですら討伐は難しいのだが、ハヤテは普通ではなかったのだ。

 食魔種の栽培により、悪魔の知識や戦闘には嫌でもかかわる必要があったからだ。

 食魔種は通常の退魔植物と違い水や、肥料は必要ない。必要なのは悪魔本体だ。

 悪魔を食魔種に食べさせることで、成長する。そのためには、当然悪魔との戦闘が必須になってくる。

 食魔種の力もあるが、ハヤテは何度も悪魔を討伐してきており、危険度Eは相手にならない。


「なんたって、危険度Sの悪魔を倒したんだからな」

 弓はまるで自分の自慢話のように言う。

 そのとおり、ハヤテは数日前、突如、街中に出現した危険度Sの悪魔を倒したばかりであった。

 しかし、それが目立ちすぎてしまい、食魔種を栽培していることがばれて、逮捕されてしまっていたのだった。

「情報によるとサイズはビル並みの大きさだったらしいな。それを良く倒したもんだ」

「というか、ビルそのものだったんですけどね・・・」

 ハヤテの言う、ビルそのものとは比喩ではなく本当にビルであった。


 そもそも、悪魔とは人の念がこめられた物に意志が生まれることによって出現する。廃棄された家電製品、廃墟ビル、廃車など、使われなくなった物が悪魔と化す。

 悪魔とは人間が生み出したと言っても過言ではない。

 使わなくなって、物置にしまっていた物がある日突然悪魔化する事だってあるのだ。

 人工物である悪魔に対抗するための手段として、人類は自然の力を借りることにしたのであった。

 しかし、悪魔は一度発生してしまうと、倒したとしても、同種の悪魔が、人気の無い空間(例えば山、海、空)から突如現れたりもするため、人工物からの変異型悪魔の発生を防ぐことが優先される。だから、ビルの出現型悪魔が、山などで突然出現することもあるのである。

 今回はもともと町外れにあった、廃ビルが変異した悪魔であった。


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