Morning
朝方のファミレスは、どうしてこんなに眩しいのか。
いつも座ってる場所なのに
隅々まで照らしだす朝日のせいで、眠っているはずのものまで目を覚ます。
一斉に目を開くもんだから、みんな思い切りすぎる。
メニューの裏とか。
コップについた埃とか。
ウェイトレスの手入れの行き届いた眉とか。
強く、光りはじめる。
朝だ。
ソウタはさっきから机につっぷして眠っている。
あたしは、ドリンクバーに行く気も失せて
そんなソウタの向かいに座って、あくびを連発していた。
あたしたちは、恋人じゃない。
セックスはするけど、手はつながない。
それは、恋人じゃない。
あたしは、またひとつあくびをして、伸びをした。
手と足と、指先の方まで。
ソウタは起きる気もなさそうだ。
「よろしいでしょうか?」
「はい。」
ウェイトレスさんが、メニューを入れ替える。
夜のメニューを朝のメニューに。
野菜の緑と赤。
パンにマフィン、目玉焼き。
朝は、どれも眩しい。
「あのっ」
向かいのテーブルに取り掛かろうとしたウェイトレスさんを呼び止めて
あたしは、その中の一つを指差して頼んだ。
「ホットケーキお願いします。」
「かしこまりました。」
お店で食べるホットケーキは好きだ。
均等な円形と、メイプルシロップ。
家ではそうはいかない。
だから、好きだ。
「今、何時?」
伏せたままソウタが口を開いた。
起きたのか。
「七時。」
「腹減った。」
「ホットケーキ頼んだ。」
「お、いいね。」
ソウタは起き上がって、伸びをした。
寝跡がくっきりついた左頬と、よだれのついた口元。
みっともない。
「何かついでくる。」
「あ、俺も。」
「何がいい?」
「オレンジジュース。」
「めずらし。」
「だって、朝だし。」
あたしはコップを両手に持って立ち上がる。
ウェイトレスさんが、ホットケーキを運んでくる。
戻ったら、オレンジジュースとホットケーキ。
朝と朝の二人になる。