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エピローグ

「すまなかったな……俺がちゃんと話しておけば、そんな事にはならなかったのに…」

「……ううん。私が早とちりしただけから、あなたには、お姉さんがいるって聞いた事あったのに」

「……」

「ごめんなさい、少しだけ一人にさせて」

「あぁ……分かった」









私は一人、街を歩いていた。

どうやら、生き返ったようだ。

死ぬ前の記憶があり、あの時の記憶も残っている。

だから私は、一度死んだ。

そして、生き返った。

……こんな話、誰も信じないよな……

でも、私は確かに死んだ。

確かに生き返った。

それは確かな事だ。

誰が何と言おうと、私はそうだったのだ。



……ふぅ、頭がすっきりした。

落ち着いて街を歩こう。

見慣れた景色、幾日かぶりのはずだけど、どこかそれとは違う懐かしさがある。

どこかで見た景色……いや、私が死ぬ前にいつも見ていた景色のはずなのに、

何か、違和感と懐かしさが入り混じったような感覚があった。




―――――――ツバサ


え?

この声は……

「……ミカ?」


聞こえますか? ツバサ


「うん。聞こえるけど……」


それは良かったです


「いったいどうしたの?」


私、どうやら少し特別な力を手に入れてしまったみたいです


「特別な力?」


はい、あちらと話が出来るようになりましたです


「話が?」


はいです、まるで電話のようですね?


「そうだけど……どうして…」


……分かりません。ですが、手に入れたのは事実です


「……」

私は街道を歩いている。

辺りには色んな人が、歩いている。


そして、聞きたいのですが


「……何?」


仲の良さそうな、兄妹とすれ違った






仲間だった皆さんの事、覚えていますか?


「……」





人形を2つ持った女の子と、その両親らしき2人の男女とすれ違った。



……覚えて、ないんですね?


「……何でだろうね。その時の記憶はあるのに、皆の事はぼんやりとしか思い出せないんだ」

顔もあいまいで、名前は全く思い出せない。





ハンチングを被った少女とすれ違った。




仕方のない事です。それが決まりでしたから


「え?」





帽子を被った少年とすれ違った。



このままだったら、皆さんの事は完全に忘れてしまう……と、あの少年が言っていましたです


「そんな……」





眼鏡をかけた男性と、その彼女らしき人とすれ違った。



でも安心してください、ハカセにこう言われました


「ハカセから?」



もしも皆の事を忘れたくなかったら。

ツバサが完全に忘れる前に、皆に会って、十字架を見せるんだ。

思いが残ったそれは、皆が皆を思い出す力を備えているから。

それに、ツバサが皆を忘れない限り、

皆を思っている限り、

思いは決して、消える事は無い。

本当の死とは、忘れられる事だからね。

それだけは決して、忘れないでくれ。



「……」


以上が、ハカセからの伝言です


「……ハカセに、伝えて」


なんですか?


「……分かりました。私が皆に会って、思いを残して回ります……って」


分かりましたです。もちろん、私も手伝いますですよ


「ありがとう、ミカ」


いえ、私も思いを繋げる力を手に入れたのですから






思いを残す者と、

思いを繋げる者、


私達は、思いを思っていく者なんだ。








それが私達の、生きる理由だから






Fin


開始が去年の11月29日。そこから一日おき、少し休んだ時や番外を書いた時もありましたが、これにて、『オモイノカタミビト』完結です。

この作品は、過去に自分が書いた物語の中で、途中で投げ出してしまっていたものでした。それをここに、あえて元のままを多く活用して加筆を少なめに投稿していました。今と比べると、最初のころはこんなんだったんだなと懐かしい気持ちになり、新たに創作意欲が湧きました。


誰かに思われていることで存在できる主人公達、その思ってくれた人の為、彼らは戦って願いを叶えるのでした。その数は年々増え続け、それだけ自ら命を落とす者がいるということ、しかしそれは同時に、命を落とした者を思っていた者がいたという事でもある。

思い、思われ、想って、想われている

人は一人では生きていけない。誰かに思われることで、存在出来ている

本当の死とは、誰にも思われずに忘れられてしまう事

そんな気持ちを込めた物語でした。


ツバサ達が生き返って大会も終わり、この物語はこれで完結ですが、あえて生き返らなかった者も居て、まだまだオモイビトは多く現れるのです。

勘のいい方なら、この言葉でぴんと来るでしょう。


感想、評価、および一言、お待ちしています。

ここまで読んでくださったそこの貴方、何か残していきませんか?



それでは、風紙文でした。

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