第90話
……回りが暗い
目を開けてないからだと思ったら、目は開いている。
どこかに浮いてる気がする。
こんな感じ……どこかで……
確か私は……生き返る筈だ。
でも、何か忘れている。
まだ、話して無い相手が――――――
「そうですよ」
……あぁ、忘れてたよ
「ひどいです」
ゴメンね、つい
「……でも、思いだしてくれたのなら、それでいいです」
ありがとう
「優勝、おめでとうです」
うん、これで生き返るね
「私もですよ」
そうだね
「まだ、名前は思い出せませんか?」
……うん
「他の事は?」
大丈夫、全部思い出してる
「後は名前ですね」
うん、このままならいずれ思い出すよ
「じゃあ、今はとりあえず」
何?
「ツバサ、私は消えてから、あの少年について調べていました」
……それで?
「あの少年……いえ、あの子も自殺者でした」
……
「死因まではわかりませんでしたが、あの子はとても凄い力を、願う力がありましたのです」
願う力?
「それで少年は願いました。どうか、僕みたいな人に、生き返るチャンスを与えてください……と」
だから、大会が?
「はいです。全ては難しいそうなので、戦って勝ち残る程の人を生き返らせる力を、少年は手に入れました」
……
「そこに現れたのが、ハカセのように……例外を望む者です」
ハカセか……
「少年にとってそれぐらいは可能なのですが。自らが思った通り、自殺した人は皆生き返りたい、とは思っていない者がいる事を知り、少年は悩みました」
そしたら……アイツが
「はい、闇サイドの少年が現れたのです」
でも、もう大丈夫だよね
「おそらくはですがね。今回のような例外が無い限り、闇サイドの少年はもう現れませんです」
そうか……良かった
「何故ツバサが気にしてるですか? もう関係が無くなるのですよ?」
……ミカは、闇があるね
「へ?」
一度は関わったんだからさ、気にしない理由なんてもうないじゃない
「……そうでしたね、すみませんです」
やっぱり、私が闇サイドだよね
「違いますよ、きっと私が闇サイドで…」
いや、私だよ、だってミカのその性格で闇な訳はないもの
「む……どういう意味ですかそれ?」
ふふ、気にしないで
「むう……あ……そろそろですね」
そろそろって?
「お別れです」
お別れ……
「ですが、さよならではありません。私はあなたの中の光、もう一人のあなた。いつまでも私は、あなたの中にいますですよ」
……うん
「では……さよならです。………」
さよなら……ミカ
ガシッ!
「!?」
「何やってんだよお前!」
目の前は高所から見る景色、体制はまさに飛び降りようとしている姿。
しかし、落ちていない。
何故なら、十字架を握った右手を、彼に捕まれているからだった。
つまりここは、現実。
私が死ぬ直前の、場所。
私は、生き返ったようだ。
長く続いた『オモイノカタミビト』ついにツバサが生き返り、物語が終わりに向かおうとしています。
後ほんの少しですが、お付き合い願います。