第81話
瞬間、闇の塊が現れ、中から一人の人が現れた。
「久しぶりだねツバサ、まずは優勝おめでとう」
「ハカセ……何故ここに?」
「私を誰だと思っているのかな?」
そうか、ハカセは書けば実現するペンと本を持っているんだ。
ならここに来れてもおかしくはない。
「まずは話をしよう。ここはまだ、安全だろうからね」
闘技場の真ん中に、私とハカセと少年。
そしてレイン達8人が集まっていた。
アロマを含めた他の参加者達は、扉が現れた時に皆出ていってしまった。
ハカセが語りだす。
「さて、まずは何から話すべきかね」
「まずはその少年について教えてください」
モクがハカセに言った。
「うむ、そう言うならばまずはこの少年についてを語ろう」
ハカセは隣にいる少年の肩を叩きながら説明した。
「この少年は、あの声の主。過去の自殺者だ」
過去の自殺者? それはハカセと同じ?
「それで、この大会を開いた張本人だ」
「!!」
大会を開いた……張本人……
「そして、今さっき皆が聞いたあの声は、もう1人の少年だ」
少年の肩を叩きながらハカセはいつもの調子で話し続ける。
「言ってしまえば、ツバサとミカみたいなものだ」
「……私と、ミカの?」
「その通り、彼もまた二重人格の片割れでね。彼に何かあった時に現れて、体を代わりに操る存在だ」
「……」
「そして今についてだが、敗者復活戦が始まった」
先ほど声が言っていた言葉だ。
「それは、いったい……」
「うむ、前にもあったのだがね。今までの……全ての参加者が互いに戦う。いわばバトルロイヤルが始まったのだよ」
バトルロイヤル。
それは複数人が一斉に戦い、残った者が勝者となるルール。
そんな無差別の戦い、それが何故今始まったのか。
「参加者が減少したからだよ」
「参加者の減少…」
ミカが消えたから、私の中に帰ったから敗者復活戦は始まった。
……だとしてもだ。
「私が優勝して、既に大会は終わったのではないのですか?」
「……君が敗者復活戦で殺られたら。優勝者は居なくなる」
そうか、私が殺られたら。
新たな参加者が決まる前に、私がやられてしまったら。
優勝者が居なくなったら、また新たな優勝者を選ぶことになるからだ。
「この敗者復活戦は少しばかり変わり種でね、復活がしないようになっているんだよ。そして100人になるまで戦って、生きていた者のが新たな参加者となる。それが敗者復活戦だ」
「……一つ、いいですか?」
「何かな?」
「今までの参加者とは…」
「うむ……前回、前々回、少なくとも私のいた世代までの参加者、あるいはさらに前まで、過去生き返れなかった全員が権利を持っているのだよ」
「……」
それって、いったい何人なんだ……
「……で、この少年はそれを望んではいなかったのさ」
「え?」
ハカセの隣で俯いたままの少年が呟いた。
「…ボクハ、タッタヒトツノレイガイヲシタダケデ…カレガアラワレタ…」
一つの、例外……
「私が研究したいと言ったばかりに、例外をしただけでアイツは現れた。それからというもの、例外の度に指揮を取り出したんだよ」
例外……ハカセを研究者にした。それの例外が、少年のもう1つの人格を呼び出したのか。