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第78話

Hotel Aile

そんな名前の建物の階段を、ただ上へと登っていた。

扉を開けて、屋上へと出た。

風が強い、この辺りで一番高い建物、その屋上に私は居た。


理由は、飛び降りる為だ。


白い柵を乗り越え。下を見た。

下はコンクリートではなく、砂が拡がっている。

普通なら怯える筈だが、私は気にしない。

そして気にならない。

どうせ直ぐにいくから。

どうせ……直ぐに下へ行くから……


直ぐに……




逝くから……



靴を脱いだ。

ふとポケットに手を入れ、中にある物を取り出した。

十字架のネックレス。あの人からの贈り物。

とても大事な物……

……せっかくだから、持って降りようかな。

そうしたらあの人に、憑けるかもしれない。

……例え死んでも、あの人と一緒に居られたら嬉しい筈だから。



よし、飛び降りよう。

でも少し怖いから、後ろ向きに降りようと思う。その方が怖いかもだけど。

気にはしない、

気にはならない、

気にしてはいけないのだ。

もう死ぬのだから、

気にするだけムダだ。



じゃあ…


…さよなら



バッ




後ろ向きに、私は落ちた。

重力に従い下へと落ちる。

手に十字架を持ったまま、私は下へと落ちていき…

…そのまま……







その後、

地面に着く前に、私はショックにより空中で死んだ。











そう……

これには、まだ続きがあった。

私が空中で死んでから、私が地面に落ちるまでが、そこにはあった。









……あれ?

私は、いったい何を?

ここは……何?

私は……確か……


そうだ。

私はこの体に入った、もう一つの感覚。

この体にいて、彼女と同じ体を供給する。二重人格の片割れ。

それが、私。

普通なら彼女に何かしら異変が起こった時。私は飛び出してくる。

代わりに彼女を動かす筈だ 。

筈…

…だった

しかし、彼女は変わっていた。

私が出る幕は全くなかった。

常に誰かに思われ、

常に誰かを思い、

共に楽しみ、

共に泣いて、

そして共に……

笑った。

そんな彼女に、私が出る幕など無いと思っていた。


しかし、その時が来た。

それがまさか……彼女が自殺した時とは、思いもしませんでしたです。


チャラッ


手から十字架が離れた。

人の体の方が重い分、十字架は私から離れていった。






そして、




                                ドシャ




私は地面に叩きつけられた。







そして、私は彼女になったのでした。

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