第75話
まさかとは思いましたが、そのまさかでした。
ツバサさん……本当にそっくりです。
背格好、身長、服装まで。唯一髪の色が違うくらい、後はそっくりです。
彼女はいったい、何者なんでしょうか……
話題はミカと私について、
「やっぱ双子じゃね?」
「だって似すぎでしょ?」
「……そっくり」
「生き別れた、とかなら可能性があるんだろ?」
「だったら、その可能性は高いわよね」
「世の中、何が起こるか分からないからね~」
「やっぱりそうなんじゃないの?」
「……では、改めて聞くが」
8人が私の方を向いて、
「「「「本当は」」」」
「「「「双子?」」」」
「……違いますよ」
まさか8人同時に言われるとは。
しかし、本当に違うとも言えなくなった。
モクが持ち出した、生き別れた双子説。その可能性が否定できない、生き別れなら互いに知らなくて当然。知らぬままなら、会ったところでそっくりな人が居るなぐらいの感覚だ。
もしかして本当に……か?
だとしたら、初めて会うのがまさか互いに自殺者とはね……
……あまり考えたくないな。
話を変えよう。
「そういえば、モクさんもハカセに会った事があるんですよね?」
「あぁ、確か過去の参加者だったんだろ?」
「そういや、そんな事言ってたな」
「あの人も何者だろうな」
「過去の参加者でしょ?」
「……じゃあ、自殺したって事?」
「うん、確か過労死だって言っていたよ」
「確か、決勝まで行ったんだよね」
「うん、そう言ってた」
「……それって、いつの話なの?」
マイがぼそりと呟いた。
「う~ん、前回がいつかって事だよね?」
「流石にそれは聞いてないな」
「……それともう一つ」
「何?」
「……優勝出来なかった、参加者ってどうなるの?」
マイの言葉に、私を除く七人が目を丸くした。
「確かにな…」
「ハカセのような例外ではない者はいったいどうなったんだ…」
「ハカセが出ていた大会の事を考えると、少なからずいたのは確かだよね」
優勝した者は生き返る。
なら優勝しなかった者は、負けてしまった者達はどうなるのか…
…つまりそれは、
「つまり、トーナメントで負けてしまった俺達はどうなるのか、って事だろ?」
モクの言うとおりだ。
レインやミナト達は、どうなってしまうんだろうか……
「あ~、これこそハカセに聞いておけば良かったな」
「そうだね~」
「でもさ、聞かなくて良かったのかもよ?」
「ん? それはどういう事、テルちゃん」
「知ったら知ったで、例えば消えてしまうとかなら、知らなかった方が良かったとか思うじゃない? どうしたって最後は1人だから、知らずにどうにかなってしまう方がワタシはいいと思う」
「確かに、一理あるな」
「今になって謎が増えたな、これならハカセが喜びそうだぜ」
「……でも、一つだけ分かる事がある」
「奇遇だな、俺もだ」
「分かる事って?」
「双子の話も、俺達のこれからも、全ては決勝戦が終われば分かるって事だ」
「……そういう事」
その時だった。
オマタセシマシタ
タダイマヨリ ケッショウセンヲ ハジメマス
シュッジョウシャハ オアツマリクダサイ
こうして、
ミカと、皆のその後、
2つの大きな謎を残して、
決勝戦は始まる。
「……」
大会に勝ってしまった私は、三回戦が始まるまでの間ツバサの事を考えていた。
もし彼女が顔に火を浴びて倒れなければ、今頃私はここにいなかった。
きっとツバサが勝っていました。
だって、ツバサは強いですから。
……結局何者だったのか分からずじまいですけど……
……しかし、ここはとても暇です。
他の3人、
1人は元気過ぎて、1人は暗過ぎて、話かけれませんでした。
モクさんが唯一の話相手でした。なんとあのツバサに勝った人と聞いた時はびっくりしました。
それでもいつまでも話していられるわけではなく、暇にはなりますです。
そんな時、あの人に会いました。
久々の会話の後、あの人は教えてくれました。
ツバサに触れてみたらいいかも、と。
そして、時は来ました。
フレイさんが降りていってから暫くして、私達が降りました。
そこで見たのが、倒れているフレイさんと、ツバサでした。
まずは、会えて嬉しかった。そしてあの言葉を思い出し……思い出しはしたのですが、
なんでしょうか、何だかいけない気が、まるで誰かに止められいるような、そんな感覚に……
……そんなこんなで、今に至りましたです。
決勝の相手はツバサ。チャンスはこれが最後。
もはや後戻りは出来ない、故にしない。
だから私は戦うだけです
……ツバサが何者なのか。
……ミカは何者なのか。
本当に双子かもしれない。
それと、皆はどうなるんだろう……
レイン、ミナト、マイ、スノウ、マチ、キキ、テル、モク、アロマ……他にも沢山。
皆はどうなるんだろうか。
ふと、ハカセの言葉を思い出す。
ゴールに出れる道はたった一つしかない迷路だ、だが出口は決して一つではない。出口へ進めるのは、決して1人だけではない。
あの時は分からないと言ったが、何となく、分かる気がする。
でも今は、
考えるのをやめるです、
何故なら今は、
ただ戦う事だけを考えて、
ミカと、
ツバサと、
戦うだけだ。
そして恐らく、
この謎も、
この謎達も、
ツバサと、
ミカと、
戦えば分かる事だから。
私はミカを前に見た、
私はツバサを前に見た、
「約束を果たしに来たよ、ミカ」
「ありがとうございますです。ツバサ」
「……これで、終わるんだね」
皆がどうなるか、
「はい……決勝戦ですから」
私が何者なのかが、
「負けないよ」
ミカが何者なのか、
「こちらもですよ」
ツバサとの関係が、
分かる時が来たのだ。