第72話
後を追っている時、彼女は幾人もの参加者と戦っていました。
そして、とても強かった。
私が苦戦した相手に簡単に勝ってしまっていました。
そしてふと、私は思った。
彼女が武器として使っているあの十字架、何処かで見た覚えが…
…しかし、あの人はいったい何処まで行くのでしょうか?
何処か目的地があるのですかね?
やはり声をかけるべきですよね。
何となくかけづらかったのですが、でも話はしたいのです。
うん。そうですよ、声をかけますです。
というわけで私が彼女に声をかけようとしたら、扉の中に入って行ってしまいました。
確かあの扉は引いて入ると……えっと、
……闘技場?
鎖を肩に巻いて素早くモクに近づいた。
その間合いで十字架を振る。モクはそれを避けて間合いを開けようとするが、そうはさせない。
モクが下がった分私は前に落ちた。やはりモクの木の根は近距離では打てないのだ。
自らも危ないからだろう、先程からモクは避ける事しかしていない。
何度目かの攻撃の結果、
チッ
初めて十字架がかすった。
「くっ、だったら」
モクは何度目かの下がり、私が何度目かの前にでようとしたその時、ロープを飛ばしてきた。
十字架でそれを払う。しかしモクにはそれだけで充分な時間がとれた。
ドスン!
私とモクの間に木の根が現れた。
ぶつかる前に素早く移動を止めて、足を地面に付いた。
モクは再び木の根を打ち出す、私は後退して避けると、再び木の根、後退でちょうど避けられる位置にモクは配置している。
それは、十分な距離をとるためだった。
「これはどうする事もできないだろう!」
ドン!
モクが両手を地面に付けた。
しまった、アレが来る。
対策は無い訳ではない、しかし……失敗は許されない。
失敗はつまり、敗北だ。
だが方法はこれだけだ。やるしかない。負ける訳にはいかないんだ。
左肩に巻いた鎖をほどき、地面に足をつける。そして鎖を十字架ごと右手に何重にも巻き付けた。持ち手の部分が見えなくなる程に巻き付けた鎖により、右手は十字架を離せなくなる。
その時、
ドスンッ! ドスンッ! ドスンッ! ドスンッ!
木の幹が四方に現れた。
しかし怯まない、一度は見た技だ。アレには発動前にまだ少し時間がかかる。
その間にこちらの準備を済ませなければ。
私は鎖の巻かれた右手を前に出し、重力をかけた。
まずは鎖に下向きの重力を、続いて十字架に右向きの重力をかける。
そして最後に……
瞬間、幹からロープが伸びた。