第70話
扉を抜けて、
空間を歩いて、
また扉を抜ける。
再び空間を歩いて、
見つけた扉を抜ける。
その先の空間を歩いて、
見つからないので扉を……
……それが何回続いたか、途中参加者に何人会ったか、
そんな動き回る探し物をしていた私は一度ハカセの所へ帰ってきました。
「お帰り、見つかった?」
「いえ、色々と歩き回りましたが見つからずじまいです…」
「ふむ、タイミングが悪いね、実はさっき来てたんだよ。ついさっきね」
「えぇ!? なんで止めてくれないんですか!?」
「ちょっとキツく言ってね、呼び止められる雰囲気じゃ無かったね」
「そ、それで……その人はどちらに向かいまし…」
「分からないよ、私はこの空間から出れないからね」
「あぅ、そうでしたです」
「無理はしちゃいけないよ。落ち着いていれば全員には会えるのは決まっている事だからね、大丈夫さ」
「…も、もう一回行って来ますです!」
私は扉を抜けた。
上手くいけばいいのだが……
私は鎖を伸ばして十字架に巻き付けた。
これで何が出来るのか、直ぐに分かる。
十字架の四辺、その左右に鎖を巻き付けて持ち手の部分から手を離した。勿論十字架はそのまま重力に従いカランと音を立てて落ちる。十字架の四辺に巻き付けた鎖だけが私と十字架を繋いでいる。私は十字架の普段の持ち手ではなくその逆を持って持ち上げた。
そしてそのまま、
ブォン
投げつけた。
十字架は持ち手をレインに向けて飛んでいく。
これはいわば鎖鎌。鎖に繋がれた十字架を投げ鎖から重力を流して十字架の方向を変えて操作する技。今までの近距離高威力タイプから、遠距離操作高威力タイプへ攻撃方法を変える技だ。
しかしこれには欠点がある。
第一に防御が疎かになる事、十字架が手元に無い以上左腕の鎖か避けるしか自らを守る術が無い。
第二に避けられやすい事、鎖を伸ばせば伸ばす程に鎖から流した重力が十字架へと到達するのが遅くなる。今の長さだと約10秒かかる
けれど対策はある。
攻撃の手を止めないだけだ、防御がおろそかになろうと伝わり難くなろうと攻撃の手を止めていけない。相手の視線を十字架から離さなければいいんだ。
その間に間合いを詰め、それにより重力が伝わる時間は短くする事も出来る。
そして、この技の本当の意味は、
「これで決める!」
「なっ…!」
相手の回りに鎖を張り巡らす事だ。
後は鎖に重力を流す事を、鎖を動かす事に切り替えるだけ。
伸ばした鎖をレインを巻き付け、かなり長い量の鎖がレインに巻き付いた。手を封じて攻撃出来ないようにした後、最後に先端部に巻かれた十字架が―――
ドスッ
レインを突き刺した。