第68話
ダメだ……どうしても思い出せない。
私が死んだ理由、死ぬ前の記憶すら思い出せないのだから当たり前なのは当たり前だけど、
しかしそれではまるで、
死んだ直前しか生きていないみたい。
まるで生きた時間がとっても短いみたい。
とっても短い
生きた時間が
トテモ…ミジカイ…
イキタジカンガ…
「……………ミカ」
「ん?」
「……私の名前は、ミカです」
トーナメントも三回戦、既に人数は8人。人数が少なくなった為か、対戦表が書かれていた。
3対7 2対5 1対6 4対8
番号は引いたくじの番号、やはりそこからランダムに数字が書かれている。
そこから皆に番号を聞いて回ったキキとテルが名前入りの完成番を作った。それがこれだ、
3 ミカ 対7 スノウ
2 ミナト対5 マチ
1 マイ 対6 モク
4 ツバサ対8 レイン
次の相手は、レイン。
強敵に変わりはないが、無論容赦などはしない。
私にも負ける訳にはいかない理由というものがあるのだから。
試合はあの順番通りで、私達は四番目、最後だった。
それはつまり既に手前三組が終了しており、これが準決勝最後の参加者を決める戦いとなる。
ちなみに手前3人とは、ミカ・ミナト・モクだ。
私もそこに行かなくてはならない。
だからその為に、レインに……勝つ、
私たちはすでに向き合って準備も整っていた。
「負けないよ、レイン」
「俺もだよ、あの時とは全然違うからな」
シアイ カイシ!
カーン!
「行くぜ!」
先手はレインだった。
レインは一番ハカセの元で修行していた、故に私たちよりも戦闘経験がある筈だ。
レインは複数の小石を一度に放った。
今までもそうだったが、それの比ではない、更に複数。しかも方向が異なるのだ。
あるものは私に向かい直進、
あるものは左からカーブ、
またあるものは右から、
あるものは上から、
あるものは下から、
あるものはフェイントをかけて止まり、
あるものは素早く、
またあるものは鈍く、
車庫へ一斉に戻る列車のように全てが私に向かって飛んできた。
普通なら複数操るのさえ難しい筈だがそれを様々な方向から放つ、修行の賜物なんだろう。
しかし、いくら方向を変えようと狙いは全て私だ。様々な道を通って様々に寄り道はしても最後の終着駅は私なんだ。
まずは鎖を螺旋状に伸ばす、
カツン! カン! カン! カン! カン!
速度の早かった小石がぶつかる音がする。
「それはもう利かないぜ」
レインは小石に指示をした。
「連結! 十二両編成!」
すると飛んでいた小石が集まり、縦に繋がった。その数、計12。
それが連結できる限12の塊を作っていく、結果5つの塊が鎖へと迫り、
ガシン! ガシン! ガシン! ガシン! ガシン!
鎖の中心へとぶつかった。
螺旋状の鎖には真ん中に先端があり、そこが一番弱い。それを知っていて狙ったレインの放った小石の塊は螺旋状の鎖の先端をこちらに押してきた。
私は素早く鎖をほどき、右へ移動した。
ガツン! ガツン! ガツン! ガツン! ガツン!
先まで私がいた場所に小石の塊が落ちた。
鎖を戻しながら、私は思った。
やはり、レインは前の2人よりも強敵だ。




