第6話
お気づきでしょうか?
実は彼女達、普通ならある筈のアレが無いんです。
もしも分かりましたら、回答をお送りください。
答えは、次の話で分かります。
他人同士の戦いを見ていて、ふと思った。
彼らは何故戦っているのだろう?
例えば、正義の為に戦う勇者。自らの野望の為に戦う悪役。何かしらの為に戦う主人公。理由は多種多様だ。
人によりけり、様々。それが私達の場合は、景品の為になっただけだ。
…でも、ここに来た理由もまた、人によりけりだ。
…それぐらいなら、聞いてもいいかな?
うん…良いよな、私は1つの決心をした。対戦相手に、こう尋ねることにする。
あなたは
どうやってここに
来たのですか? と
しかし……暇だな。
私は今少し離れた所に腰を降ろして、遠くで戦う2人を見ていた。
1人は帽子を被った男。もう1人は私より年上に見える女性。
互いに遠距離連弾タイプで2人共に間合いを取って武器を投げつけている。
片方は小石、片方はナイフ、見た目だけなら圧倒的にナイフが有利だが、そうはならないようだ。
「……なかなかやるわね」
「アンタがやらないだけだよ、オバサン」
小石を投げる男の方が圧倒的に優勢だった。
先程私が勝ったとは思えない程に強い、手加減…をするようには見えないし、しないだろう。
ならば、あの女性が弱いのか?
だとしたら、彼女に負けた相手は、相性が悪かったとしよう。
そんな時だ、
「チェックメイトだ」
男が言った言葉は、本当になった。
男は四方八方に小石を、止めていた。
いや、停まっていたと表現した方がいいだろう。
「快特通過待ち合わせ……って勝手に名付けたけど」
男は小石を1つ投げた、回りに停まっている小石目掛けて。
「結構、便利だぜ」
その小石が横を通りすぎた時、停まっていた小石が動き出した。
「甘いわよ!」
ヒュッ ヒュッ ヒュッ ヒュッ
カキンッ カキンッ カキンッ カキンッ
飛んできた小石をナイフが相殺する。
でも、それだけでは足りない、
ガガガガガガガガ
「かっ……」
停まっていた小石が通りすぎた小石を合図に幾つも女性に向かい、対処できていない。
結果、
ガガガガガガガガガガガガ
ゴスッ
最後の一発を頭に受け、女性は倒れた。
「やりぃ! 俺の勝ちだ!」
男はブイサインをこちらに向けてきた。
私は軽く手を振ってあしらった。
…しかし、ああ見るとアイツは私より年下の少年に見える。
そして、アイツにも倒すことの抵抗は無いのだろうか?
私も最初から躊躇いは無かったが、アイツにも…か。
「やったぜ! これで俺も、一勝したんだな」
「そうですね」
「……なぁ、それ辛くねぇ?」
「それ…とは?」
「その、妙な敬語だよ、俺達同年代だろ? なら敬語はナシにしようぜ」
「…わかった。これからは敬語無しで」
「切り替え早いな…おっと、もう起きたか」
向こうをみると、女性が起き上がっていた。
「負け……負けた……嘘……嘘よ! 私は二勝目を手に入れるの……て、そうか……なら……アンタを倒すまでよ!」
女性はナイフを投げつけた。
「次はアンタの番だぜ」
「…わかってる」
私は鎖を螺旋状に束ねた。前と違って、間を開けずに盾のように。鎖は更に伸ばしておく。
キンッ キンッ キンッ キンッ キンッ
「くっ…舐めるな!!」
女性は再びナイフを投げた。
「…遅い」
鎖を伸ばしておいた。つまりは盾を作りながら、盾を維持しながら、遠回りで女性の裏に辿り着いていた。負けたのが響いて、回りが見えてないな。その分やりやすかったが。
私は鎖を引き寄せながら、女性を縛り上げた。
「くっ……」
さて、聞くか、さっき決めてばかりの事を。
あなたは
どうやってここに
来たのですか?
「…はぁ? 何聞いてるのよアンタは、そんなの死んだからに決まってるじゃないの」
…そうだ、盲点だった。答える訳ないじゃないか。
それは相手に、自らの武器のヒントを与える事になる。
へたに聞くのはやめとておこう。
でも、相手が語ってくれそうな時、その時だけは聞いてみよう。
……じゃあ。
ドスッ
私は二勝目を手にし、女性が目覚める前にその場を後にした。早足で、
仕方ないさ、彼女は今まさに二敗を手にしたのだから。目が覚めたら、目の前の私達に襲いかかってくるだろう。
だから、私達は走った。