第63話
私は何者何だろう。
生…て…た…し…は、記………なす…る。
だって……び……る前の…憶……、…切……出……いの……ら
私って一体、何者なのですか……?
ドシャ
強烈な一撃を受けたフレイが地面に叩きつけられた。
動かない所を見ると、勝ったようだ。これはアタリくじだったな。
その時、フレイが現れた一筋の光が新たに三本現れた。それは私が勝ったために、本当の三回戦が開始されることの証明でもあった。
光の中から、シードとなっていた3人現れた。
1人は眼鏡をかけた大学生、モク。
1人は全身黒ずくめの服装、髪が目にかかる長さの、同い年くらいの少年、彼がゼロだな。
そしてもう1人は、
「……ミカ」
「ツバサ……」
「私来たよ、約束を果たしに」
「ありがとうございますです……でも…」
「でも?」
「……いえ、何でもないです」
「? そう?」
明らかに何か言いたそうな顔をしているけど……
ダイイチシアイショウシャノミナサン オツカレサマデシタ
ツヅケテダイニカイセンノ タイセンジュンヲキメマス
ミナサン クジヲヒイテクダサイ
次の第二回戦からは、シード選手3人が加わり計16人。これで偶数、しかも普通のトーナメントが開始できる……考えたものだな。
私の番号は二番だった。
皆の話を聞いて回った結果、レインとキキ、マイとテルが戦うらしい。
そして、私の相手は…
「……ゼロか」
謎多き黒ずくめの男、第二回シード大会優勝者のゼロだ。
再びのシード選手との戦い、彼は恐らくフレイのように弱い訳はないだろう。第二回大会となるといつ開かれたかは知らないが、恐らく私がモクと戦った後ぐらい、私が修行していた頃だろう。その頃には新たな技を使う者も現れ始めていただろう、その中を勝ったのだ、強敵な筈だ。
そして、第二試合が始まった。最初の試合にアロマさんが出ていた。
相手は分かったが試合の順番が分からない以上、それまでに間にゼロ対策を考える為、皆と別れて一人考えていた。その時だった。
「ツバサ」
振り返って見ると、そこにはモクがいた。
「何か?」
「いや、特に用という訳ではないが……お前、フレイと戦ってみてどうだった?」
「正直言って、強くなかったですよ。何故大会に優勝できたかを疑います」
「無理もないさ、そうだな……アイツについて、まぁアイツが勝手に語った自分の事を話してやろう」
モクは語りだした。
それは、ある男がここに来るまでの話。
我が道は自分で決める。これが俺のポリシーだった。
しかし、そんな事ができる存在ではなかった。
言わば実験体だ。実験体でしかなかった。
俺はある実験の実験体に選ばれた。
人は首を断っても、断ってから直ぐならば呼び掛けると反応がある。
聞いた瞬間に分かったのは、反応した直後に反応出来なくなる事だ。
拒否権など無かった。それが実験台として育てられた俺の運命だったから。
あぁ、次に生まれるなら。俺は支配者になりたい。
司会でもいい、俺の作ったルールで、誰かが戦うのが見てみたいな……
ドスン
「……」
「アイツはギロチンで首を断って、手には血が染み付いたらしい」
あの刃はギロチンの物だったのか。
「血の刃とは、とんだ執念から生まれた武器だよな……出現条件が簡単だから、運良く勝てたんだろうよ」
フレイの武器は、血で作られたギロチンの刃。それを指パッチンを合図に呼び出して相手を断つ、レインと似ているが、レインよりも威力がある。遠距離連続高威力タイプ。
実験の為、自ら自らの首を断った、支配欲のあった男。
それがフレイだった。