第61話
「おや? こんな所に何の用事だい、お嬢ちゃん?」
黒い扉の先には書斎があった。
見渡す限りの棚、それに隙間無く本が詰まっている。
正面には机、上には羽ペンと紙数枚に本数冊、そしてその机の奥にある椅子には人が座っていた。
「ふむ……もしかして君…」
な……何だろう……? もしかして、入ったら駄目だった場所なのかも。
それを知らずに入った私を、もしかしたら……
「ご、ごめんなさいです! 私は扉を探していただけで、ここは入ったら駄目、とか聞いていなかったものですから! す、すみませんです直ぐに出ていきますですから、どうかお許しを!?」
「落ち着きたまえ、ここは別に入ってはいけない場所ではないから」
「そ……そうなんですか?」
「そうなんですよ。まぁ立ち話も何だな、座って話でもしようではないか」
そう言ってその人、多分……男の人は手に持っていた本にペンで何かを書き、本を閉じた。
瞬間、椅子が現れた。
「かけたまえよ、迷い子のお嬢ちゃん」
「……はい、です」
私は大人しく椅子に座った。
私とフレイの試合の順番は最後だった。
それまでは皆の試合を見ていた。
勝利条件は前と同じで、相手の体力をゼロにすれば勝ち。致命傷は致命傷になる。全く同じルールだ。変わりなくて助かるな。
レイン達は勝った。アロマさんも勝っていた。そして次は、私の番だ。
「頑張ってねツバサ!」
「アイツは本当に強ぇから気をつけろよ!」
「……負けないでね」
レイン、ミナト、マイの3人が応援してくれた。
「うん、負けないよ」
それだけ言って、私はコロシアムの中央に向かった。
私が付くと、まだフレイは居なかった。そういえばどこから現れるのだろう?
その時だった。一筋の光がコロシアムの中心に落ち、そこから男が現れた。
これがミナトの言っていた一筋の光か。
「はっはっは! 待たせたな参加者よ!」
男の口調からいって、彼がフレイだな。
「俺様がフレイだ!」
いや、今名乗ったから確実にこいつがフレイだ。見た目は同年代か上、黒いズボンに赤いシャツ、青黒いマントを羽織った。見た目からウザい奴だ。
しかし実力はあるのだろう、いつ開かれたからは知らかないが、シード権大会の優勝者だ。
油断出来ない勝負になるだろう。
アツマリマシタネ
あの声が聞こえた。
「おう! さっさと始めようではないか! 俺様は最初に勝ってしまってから、暇で仕方なかったのだ!」
……確かに私も、戦いは久しぶりだ。
修行としてレイン達と稽古はしたが、本気の勝負は久方ぶりだ。
「さぁ! 早く始めようではないか!」
デハ イッカイセンサイシュウシアイ
カイシ!
カーン
ゴングが鳴り響いた。