第59話
そして私はそのまま、二回戦に突入したようだ。
始めは暗い空間を歩いてた。前は見えるけど全体的に暗く、ふらふらと歩いていたら、
ガン! 扉に正面からぶつかった。痛みはなかったけどね。
扉は押すと開いたので、中に入ってみた。
そこは町並みだった。先ほどまでの暗い空間よりマシだ、とか思いながら歩いていると、私と同じものに、参加者に出会った。
既に彼は戦う気満々だったので、私も武器を構えて戦った。
何とか勝つ事が出来た。
倒れた男の人はそのままに、私はその空間を出た。
ここにはこういうところが他にもあるらしい、ぜひとも他の所も見てみたい。そう思って、扉を探して歩き回った。
何故なら私は、……………直…の……しか………た…ら…
もっといろんな景色を、見たかったからだ。
いずれ来ると思っていた。
その時は、必ず来ると思っていた。
その時は、必ず来るに決まっていた。
そしてその時は、
やって来た。
ミナサン ナガラクオマタセシマシタ
あの声が聞こえた。今この場所に居る、ハカセ以外の全員にそれは聞こえているらしい。
イマ コノコエガキコエテイルミナサンガ ニカイセントッパシタミナサンデス
つまり、私達は残れた全員残れたようだ。
イマカラシテイスルバショニ アツマッテクダサイ
ジカンハカカッテモカマイマセン ゼンインガソロッタトキニ サンカイセンヲセツメイシマス
デハ アツマルバショハ ココデス
頭の中にある場所が浮かび上がる。
ここは……あそこか。皆も分かったらしい。
そして、あの声が聞こえなくなった。
今からその場所に行くのは簡単だ。しかしそうはしない。
何故なら、
「ハカセ、今までありがとうございました」
私がお礼を言うと、皆も一言ずつお礼を言った。
「いやいや、どういたしましてだよ」
ハカセはいつもの調子だ。これでサヨナラなのに……
「一先輩としてアドバイスするけど、恐らく三回戦からは全部トーナメント。つまり一回の負けは夢の終わりだ。なるべく負けないように、皆頑張ってくれたまえ」
「はい、ありがとうございます」
トーナメントか……確か人数は100人の4分の1で、25人。それに加えてシード者4人の計29人。
一対一の対戦の場合、奇数はとても数が悪い筈だ。何かしら対策があるのか?
「では、私達はこれで…」
ハカセに挨拶して私達は扉を抜けようとして扉に手をかけた。
その時だった、
「ちょっと待った」
ハカセに止められた。振り返り尋ねようとしたら、
「あ~いいからそのままで、むしろそのまま聞いて」
「はい」
「よろしい」
そしてハカセは言った。
「トーナメントとは言わば、複数人が違う入口から入りその内ゴールに出れる道はたった一つしか無い迷路だ、それは分かっているね?」
「……はい」
皆も分かると言った。
「だがこの迷路の出口は、決して一つだけではない……決して1人だけではない……これは分かるかな?」
「……いえ」
皆も分からないと言った。ハカセは何が言いたいんだ?
「よろしい、それでいいよ。皆頑張れ……そして、さようなら」
その声は、いつものハカセとは違った。
「……はい、ハカセもお元気でいてくださいね」
「勿論さ、もしもまた来るようなら、ここに来たまえよ。助手として歓迎するよ」
……いつものハカセだ。
「……お元気で」
私が扉を開け、私達は部屋を出た。
……皆が行った数分後、
「ふむ、皆は分からないと言ったが……分かった者は何人居たのかな? ……さて」
ハカセは立ち上がり、本棚に納められた一冊の本を取り、開いた。
ペンで字を書き、閉じる。そして再び開いたそれを読みながら、暗闇の中へと消えていった。