第58話
再開いたしました。『オモイノカタミビト』
彼女たちの物語は、終わりへと着実に近づいている。
目が覚めた時、私はまず困惑した。
何故なら死んだ筈なのに、感覚があって 手足が動いて 目が見えたからだ。
目の前は暗かったけど、あの景色以外は初めて見た。
これは何なのか。考える前にあの声が聞こえてそのまま一回戦が始まった。
相手の男の人は、絶対に私を、もう一度殺すつもりだった。
しかし私にも、男の人のような武器はあった。だから勝てた。死に物狂いというやつだ。あ、もう死んでたっけ。あはは……
……私は何で死んだんだっけ?
あの声が教えてくれた、あなたの死に方が力になる。
何とか思い出して使ったけど、何で…………………だっけ?
確か………………………………………た時……………………………てた気が……けど。
どうして、だっけ……?
あれから、幾日過ぎただろう。しかしこの空間には日の傾きが無いので実際の時間は時計を見ないと分からない。どうやって時計は動いてるのか、もう謎にも思わない。実際数えてないからな。
まぁ幾日なんてこの際、どうでもいいのだが……とにかくだ。
私は今、ハカセの部屋にいた。
ここには私だけでは無く、ミナト、マイ、レイン。修行していたスノウとマチ、そして何故かキキとテルがいた。
2人に何故居るか尋ねると『細かい事は気にしな~い』と軽くあしらわれたので、気にしないことにした。
ちなみにレインは今、暗闇の先でハカセと修行中。かれこれ28日ぐらい前だ。多分。
参加者の人数は全100人、つまりは私を除いて99人、そして大会で抜けた4人を除いた95人と戦う。用は最低95戦すればいいのだ。
私は特に試合数が少なかった訳で、会った人全てと戦う勢いで戦い続けた。
結果、今に至る。
最後の、戦いを終えた時にあの声を聞いた。
オメデトウ アナタハゼンイントタタカイマシタ
センセキハ キュウジュウヨンショウ イッパイ イチヒキワケデス
アトハミンナガオワルマデ マッテイテネ
皆が終わるまで待っていて、それは94人が皆、全員と戦うまでだな。
そういうなら待つとするよ、のんびりとね。
そうして早幾日か、日付を数えればよかったなレインが修行に入る前には戦い終わっていたから、28日以上、それだけだ。
「平和だね~」
「……平和はいい事」
「でも暇だな…」
「仕方ないわよ、私達は全員と戦ったんだから」
そう、今ここにいるメンバーの共通点は全試合終了だ。
ミナト82勝13敗
マイ 92勝 3敗
スノウ72勝23敗 1引き分け
マチ 70勝25敗 1引き分け
キキ 65勝32敗
テル 75勝20敗
レイン94勝 5敗
そして私、ツバサ94勝 1敗 1引き分け
皆の試合数が異なるのは大会で抜けた相手と事前に戦ったからで、レインの99戦、つまり全員とが一番多い。
ちなみに負けた相手5人を聞いてみたら、
あの時の司会 フレイ
奇妙な男 ゼロ
私も負けた モク
大会の決勝で ミカ
そして最初の最初に 私
フレイは知っているが、ゼロという男は知らなかったので皆に聞いてみたら、ミナトとキキが戦った事があるらしい。
だが、よく覚えていなかったようだ。
あまり喋らないで、ただ試合を申し込まれ、知らぬ間に負けてしまったそうだ。
……ふぅ、暇だな。
最初の方は話が弾んだ。しかしそれも長くは続かず、後はハカセの書斎で本を読むか、お腹が減ってあらゆる所に行って食べ物を調達して食べるか、ぐらいしかなかったから……
……よし。
「どうしたの? ツバサ」
「私も修行するよ、それにあの空間なら時間の流れも早いから時間が潰せる」
そう言い残して暗闇の中に入ろうとした。
その時、
「私も行っていい?」
「……私も行きたい」
「俺も修行したいぜ!」
「じゃあ私も行くわ」
「私も手伝うよ~」
「私も!」
皆が言ってきた。
……暇だったんだね、皆。
そうして、私達は暗闇へと飛び込んだ。