第43話
2人が目覚めた。
「大丈夫ですか?」
私が訪ねると、
「おぉ、大丈夫だよ」
「えぇ、心配ないわよ」
2人は大丈夫なようだ。
「しかし、ツバサって強いんだな」
「そうよ、2人がかりで勝てないのよ」
「いえ、自分は修行しましたから」
そう言った瞬間、
「なに!? 修行したのか!?」
「どこで!? どうやって!?」
2人が興味津々に訊いてきた。
「えっと、それは……」
あ、そうだ。
「ある扉の先でです。そこにいる人に修行をつけてもらいました」
「そこ、是非とも案内してくれよ!」
「わたしも!」
「はい、一緒に行きましょう」
私達3人は、扉を抜けた。
その瞬間、マフラーが無くなった。
私達は黒い扉の前に、辿り着いた。
扉を開き中に入ると、ハカセは椅子に座っていた。
「おや? ツバサじゃないか、久しぶりだね」
私に気付いて本を閉じた。瞬間、椅子が現れる。
その時ハカセは、部屋の中を見回していた2人に気付いた。
「おや? 新顔だね、名前はあるのかい?」
「スノウっていいます」
「マチです。どうぞよろしくお願いします」
2人は礼儀正しく頭を下げた。
「ふむ……名前を名乗る者も増えたね。私の事はハカセとでも呼でくれたまえ」
「それでハカセ、彼等はハカセに修行してほしいというのですが」
「ほぉ……面白い」
ハカセの眼鏡がキラリ、と光ったような気がした。
「私の修行は厳しいぞ?」
……そこまででもなかったような気が……
「それでも構いません!」
「どうか、よろしくお願いします!」
2人はやる気まんまんのようだ。
「はっはっはっ、いいだろう、しっかりと着いて来たまえよ」
あ、ハカセが楽しんでる……この部屋から出れないと言っていたから、暇してたんだろうな……
「「はい!」」
「よし! 良い返事だ。早速始めよう、こちらに来たまえ」
ハカセは暗闇の中へ2人を招き入れた。
2人が意気揚々と入って行った後、
「……さて、本題を聞こうかな?」
ハカセは闇を背にして私に向き直った。
「2人は良いんですか?」
「心配無い、あちらの1分はこちらの1日だからね。こちらで数分話したところであちらでは数秒の出来事にすぎない」
「……では」
私は2人の事を語った。
「ふむ……これは面白いね」
「もしかするとですが、あの2人は分かっていないものだと思います」
「はっはっ、やはりツバサは面白い考え方をするね。研究者に向いてるよ」
ハカセはけらけらと笑った。
「真面目に考えてます?」
「もちろんだとも。彼等は分かっていない、それは正しい考え方だ」
「そうですか……しかし…」
「何故思いを込めたであろう人も死んでいるのに思い形見を持っているのか? かな?」
「……その通りです」
そこが謎だった。
互いを思えるのは、互いしかいないだろう。だが2人はここに同時に存在する。
「簡単さ、ここでこうして存在しているからだよ」
「……」
「マチとやらが望んだ物を呼び出したろう? あれで分かると思うが、我等にも思う事ぐらいは出来るのだよ」
あれから暫くハカセと話した。
その後、ハカセは暗闇へと入って行ったので、私は部屋を出ていった。