第42話
既に吹雪は止んでいた。
先ほど私が登っていた丘にマチが登り、私とスノウが対峙する……
という事にはならなかった。
もとい、私がしなかった。
「本当に良いのか?」
「はい、時間短縮になりますからね」
「だからって……」
私は、マチとスノウの2人を同時に相手する事にしたからだ。
「構いません。さぁ……いきますよ」
私は十字架を構えた。
「まぁ……そこまで言うのなら」
スノウは銃を手に持った。
「……容赦はしないわよ?」
マチはマッチを取り出した。
「「行くぞ!」」
マチとスノウ。2人を同時に相手にしたら、分かった事がある。
まずは2人の能力。
スノウは雪道で銃を撃って自殺した。
道具は銃、能力は雪玉で、触れた相手の体力を奪う毒系統の思い形見。
あの足下に撃った雪玉の意味も分かった。スノウは死ぬ時に銃で頭を撃ち抜き、血が染み込んだ雪が能力となった。
雪玉を雪に地面に撃って、染み込ませる。その染み込んだ雪玉を操り下から攻撃するというもの。しかしその際には足が地面に貼り付いてしまうという条件付きだ。
マチは雪道で倒れて凍死してしまった。
道具はマッチ、能力は氷で、擦られたマッチから氷が現れて盾を作る変化系統の思い形見。
あの時マチが何か呟いていたのは、まるで物語のような新たな力だったのだ。
マッチ売りの少女、マッチを擦って暖かい物を思い浮かべる話なのだが。まさにそれだった。
マチが呟いていたのは、
『私は望む、火の矢を放て』というもの。
つまり擦ったマッチに欲する物を望むと、それが氷の盾から現れるという能力だ。しかし、暖かい、もしくは熱い物限定らしい。
そしてこれは、私の勝手な考えなのだが……
マチとスノウ、2人は互いの話に出ていた兄妹だ。
親と別れた事、旅に出た事、雪国で離ればなれになる事、互いの兄と妹の特徴が似すぎている事、一致する事が多すぎる。もし違うというなら理由が欲しい程にだ。
そして、それを決定付けるのが、今のこの戦いだ。
息が合い過ぎている。
マチを相手にするとスノウが、スノウを相手にするとマチが私の後ろをついてくる。油断すると直ぐにやられてしまうだろう。
しかし分からない事もある。
何故マチは気づかないか、何故スノウは気づかないかだ。
マチはスノウの見た目が似ていると言った。普通なら見た瞬間に分かる筈だから……
もしかしたら……本当に分からないのか?
互いにそうだと気付かないのか?
だとしたら、先程の2人の戦いは兄妹ゲンカだ。
互いに分からず行う、最悪なパターンの、命をかけたケンカだった(いや、もう死んでいるけど)。
知らなくて良かったのかもしれないな……
さて……やはり相手の事を知ると、戦いやすかった。
ズザザザザザザ
ザシュ
「くっ……」
ドスッ
「うっ……」
マチとスノウに、私は勝った。
実際、2人になら負けてもいいと思ったけど……やはり勝負だからな。
2人のためにと同時に戦ったが、やはり辛いな……次からはやめよう。
私は2人が起きるのを待ちながら、ある事を考えていた。
2人が起きたら、あれを伝えようか……どうしようか。
互いに離れ離れになり、互いを求めて歩き、互いに別々の場所で、死んだ。
そして、ここで再開した。夢のような再開だ。
それが2人の為になるのならば……
……そうだな。
やめておくことにした。
よく考えたら、確証も無いわけだし。
それに……それが2人の、為になるのだから……