第40話
ペシャ
しかし、倒れなかった。
「な……何よコレ?」
マチが受けた銃弾は――――雪玉。
ただへんてつの無い雪玉が当たっただけだった。
「何って……雪玉だけど?」
「分かってるわよ! 何で雪玉が拳銃から射ち出されたか聞いてるのよ!」
「そりゃ、これが俺の武器だからだけど…」
「雪玉で勝てると思ってるの!?」
「それで俺は勝ってきたんだけどな……ざっと20勝」
「な……!」
マチは驚いているようだが、私は別に驚かなかった。
確かに雪玉に威力なんて皆無だろうが、マイを思い出した。
毒を相手に投与して傷を付けずにダメージだけを与える方法。スノウもその類なのだろう。雪玉に触れるとダメージが貯まる。遠距離連続長期戦タイプか。
スノウが雪玉を放つと、マチが擦ったマッチで盾を精製し雪玉を防ぐ。マチがマッチを擦って投げると。スノウは後ろに後退してマッチを避ける。
それがしばらく続いた。
……吹雪いてきた。
天候が悪くなる中、2人の戦いは続いている。
暇だな……普通ならここでこんな格好、防寒具はマフラーのみ。寒くて震えるだろうな。
この格好は、死ぬ間際に着ていたそれだ。
皆がそうなのなら、マチは裸足のままで死んだ事になるな。
……暇過ぎて思わず考えていたが、転機が訪れた。
「このままじゃ終らないわね……」
「このままじゃ終わらねぇな……」
「……だったら」
「……こうなったら」
「これで決めるわ!」
「これで決めてやるぜ!」
2人がほぼ同時に言った。それを合図に、2人は行動に移った。
先に動いたのはスノウ。
「これが俺の本気だ!」
スノウが左手に新たに銃を持った。二丁拳銃か。
「くらえ!」
ズダダダダダダ
二丁拳銃を放った。片方はマチに向けて、片方は、足下の雪に。
足下に放った雪玉が雪に埋まる。
カシュ
マチはマッチを擦り前へと投げる。それが氷の盾となり、
カシンッカシンッカシンッカシンッ
向かってきた雪玉を防ぐ、
カシュ
再びマッチを擦り、前へと掲げた。
「私は……………」
マチが何かを呟いた。吹雪いているせいかここからでは聞こえない。
そしてマッチを投げた。氷が膨張して盾を作るが、それだけではなかった。
氷の盾から、火の矢が飛び出した。
計……数えきれない数が、スノウへと向かう。
スノウは動かない……いや、動けないんだ。
足が雪に埋もれている。それだけなら普通は動ける筈だが、普通ではないようだ。
まるで足が地面と繋がったような、そう見えた。
そのスノウはというと、目を閉じていた。元より動けないのを知っているかのように、まるで何かを操る為に集中しているかのように。
そして戦いが終わる。
ズバシュ!
ドスドスドスドスドス
「っ………」
「ぅ………」
まず先に、足下の雪が巻き上がってマチが雪に飲まれる。
続いて、無数の火の矢がスノウの体を貫き。
そして、2人は倒れた。
「……」
勝負を遠くで見ていた私は2人に近づいた。
これは……引き分けか?
速さでいえば、先に攻撃を受けたのはマチ。しかし倒れたのは同時だ。
引き分けがあるのなら、これは引き分けだろう。
しばらくして、2人は起きた。
仰向けだったスノウが、うつぶせだったマチが、互いが起き上がり、互いを見て、
「……何で」
「……どうして」
2人は声を合わせて。
「「どうして引き分けなんだよ!」」
「さ、さぁ……」
私に言ったのでは無いが、つい答えてしまった。
「……しっかし、強ぇなアンタ」
「ううん……あなたこそ、強かったわよ」
「ははは……」
「うふふ……」
2人は近づき、握手して、
「あははは!」
「あははは!」
大爆笑した。
「……?」
私はただそれを見て、首を傾げた。
どうやら、友情が芽生えたようだ。