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第3話

ここは駅のホーム。電車が好きだった俺は、一番のお気に入りを見る為にここにいた。

アレはとても珍しく、日に四本走れば多いような、そんな電車。それ故にファンが多かった。

勿論、俺もその一人だった。

いつ来るか、まだ来ないか、待ち遠しく待っていた。

俺の電車好きはじいさん譲りで、小さい頃からよく一緒に見に行っていた。その頃からアレは走っていたな……。

そしてその時は、アレは、来た。

トンネルの向こうから見えた光、電車の姿が段々と見えてくる。

あの形…あの色使い…全てがいいな…。

快特とか特急とかあるけど、あれは普通でしか走らない。理由は知らないが、そんな所も合わせて俺は、あの電車が好きだった。


……さて、時間だな。

そろそろ行くか。

やはり待った甲斐があった。

やっぱあの電車がいいよな。


じゃあ……まずは謝って……


……ゴメン。




バッ




キキー-------------------------------ッッ






                    ドンッ………





                                         ドシャ




「……」

電車による自殺か…普通は思いつかないな、そんな事は。

「でも、そっちの方が凄いよな? 俺には飛び降りなんて考えられねぇよ」

「そうですか? そちらの方が痛みも凄いのでは?」

「いやいや、絶対そっちの方が痛いって、こっちは一瞬だよ、一瞬痛みはあるけど短いもんだよ」

「それでもです。知らないのですか? 飛び降りは地面に付く前の落下中にショックで死ぬのですよ? 少なくとも私はそうでした」

「な…! そうか……俺もそうすればよかったかな」

「ですが、決めていたならそれはそれで良いではないですか」

「まぁな…でもあの後は大変なんだぞ? 電車止まるし、ダイヤ乱れるし、死体片付けるし、車掌トラウマ持つだろうし」

「私の方も死体は片付けますよ、血は大部分を流したら後は雨任せですが」

「ふ~ん」

しかし、今になって考えると私達は凄い話しをしているな。いくら共通の話題だからといって回りが聞いたらどう思うか。

そう思いながら回りを見回すと、こちらを見る人誰もはいなかった。ひょっとしたら同類が、とも思ったが、それも無いようだ。

「さてと」

男は帽子を被り直してベンチから立ち上がり、

「腹も膨れたし、そろそろ始めるかね」

あ……忘れてた。

そうだ、私は死者。景品の為に戦う、そんな者だった。

なのにさっきまでは、先程までの行動は、まるで人そのものだった。

誰かと話し。何かを食べ。何かを語る。まさに人の行動だ。

でも違う……私はもう人じゃない。人だったものだ。

……でもさっきまでは……まるで……


「お~い、大丈夫か?」

「!!」

私は首を左右に振った。

危なかった。もう少しで考えの世界に入る所だった。

「おぉ!?  おい、本当に大丈夫なのか?」

「…はい、大丈夫です。早速始めましょうか?」

私は立ち上がり訊ねた。

「いや、人目は避けた方がいいだろう。どこか人のいない所を探そうぜ」

「はい、そうですね」

私達はその場を後にした。


路地裏に入り少し歩いた所に広場があった。元はビルでも立っていたであろう名残の鉄骨がはじに寄せてある。地面には雑草と小石と土が見えるだけの広場だ。

広場の奥側に立った男は帽子を深く被りってこちらに振り向き、

「ん~ここでいいか、人も人目も少ないしな」

「そうですね……では」

「あぁ、どっちが勝っても恨みっこ無しだぜ?」

「元よりそのつもりで」

「……行くぜ!」

言葉と同時に、男はズボンのポケットから何かを取り出した。

予測はついた。あれがアイツの武器だ、とそれを確認する為手元を見た。

持っていたのは、小石だった。

何のへんてつも無い、そこらに落ちているのと何ら変わりの無い小石。男はそれを手に数個握っていた。

だが、どんな能力か分からない以上油断はしない。


その瞬間、フイを突かれた。


男の持っていた小石がこちらに向かっているのに気付いた時には少し遅かった。


チッ ヒュン ヒュン ヒュン


何とか一発目が頬を掠めるだけにとどめたが、これでもダメージはダメージだろう。

油断はしない、先程言ったばかりなのにこんなにも早く……。


カキンッ カキンッ カキンッ カキンッ


「おぉ! やるな!」

今度は油断はしなかった。

再び飛んで来た小石を、全て十字架で弾き落とした。

「ふ~ん、やるねアンタ、十字架プラス飛び降りだろ? どんな能力か想像できねぇな」

「それはどうも」

私は分かった、アイツの能力が。

小石プラス交通事故…いや、交通自殺か?

そして小石をあのスピードで投げる。いや、飛ばす。

まるで、電車のように……

つまりは小石に電車のようなスピードを加えて飛ばすといったものだろう。

数で攻めるタイプか、私とは逆だな。

威力は小さいが(元より痛みは無い)当たり過ぎは知らぬ内にダメージが貯まる連続遠距離タイプ。

威力は大きいが間合いを詰めないと当たらない分、その補助機能を持っている単発近距離タイプ。

まさに真逆の戦いだ。

だからといって、ただ勝つだけだけだが、とりあえずは手段だ。

どうにか勝つ方法を……

そう考えた時には、次が来た。

再び小石が飛んで来る。

計7つ、手前に3つ、その後に4つだ。

考えるのはこれを避けた後だな。

私は十字架を構え、まずは手前の3つを弾き落とした。更に後から来る4つに左腕に巻かれた鎖を放つ。


バチンッ バチンッ


2つを弾き落とした。

残り2つ、それは十字架で弾き落とす為に再び構える。

しかし、そう簡単にはいかなかった。

「甘いぜ!」

男は再び小石を投げ、そして手を上げて、命じた。

「速度変化! 快特!」

新たに投げられた5つの小石は、速かった。

先の7つよりも速く、」今向かっていた2つの隣に並んだのだ。

「くっ…」


カキンッ カキンッ ビシッ ビシッ ビシッ ビシッ ビシッ


弾き落とせたのは手前の2つだけ、後は命中した。

痛みは無い…だがこれはダメージとして体に残るのだ。

マズイな…早く…早く考えるんだ。



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